12年半振りのシングル「WHO'S GONNA SAVE US」を6月27日にリリースし、ソロ活動を本格的に再スタートしたHYDE。全国ツアーの3本目となるこの日のライヴでは、VAMPSの楽曲や、8月1日リリース予定のシングル「AFTER LIGHT」などの新曲を中心に、彼の音楽的ルーツを感じさせるカバー曲も披露。SF/ホラー映画のワンシーンを彷彿させるステージセットとも相まって、HYDEワールド全開の濃密な世界観を作り上げていた。
ステージ前の幕にはデジタルの数字が映し出され、6:66(19:06)の開演時間までを秒刻みで表示。残り1分を切った辺りから会場には自然とカウントダウンの声が沸き起こり、6:66になった瞬間、大歓声に迎えられてメンバーが登場した。オープニングナンバーはいきなりの新曲だが、アッパーなビートとアグレッシブな演奏を叩き付けられ、オーディエンスの熱気は急上昇。3曲目には早くもクラウドサーフィンが起こり、観客の波の上を次々とファンが転がっていく。そんな光景を見たHYDEは“久しぶりです。僕たちまだ演奏に慣れてないんで...。加減がわかりません! ぶっ壊しちゃうかもしれないから、壊れてもいい人だけ前に来てね”とさらに焚き付ける。
セットリストはリアレンジされたVAMPSの楽曲と、新曲が半々といった構成。デジタルならではの冷徹無比な凶暴さやEDM系のアッパー感、ヘヴィなバンドサウンドのうねり、パンキッシュな攻撃性などが曲によって縦横無尽に繰り出され、会場の空気を自在に操る。圧倒的な世界観。だが、それが決して一方向的に終わっていないところがすごい。HYDEは観客を挑発し、観客がそれに応えてアクションを返すと、HYDEはそのエネルギーを糧にさらに強力なパフォーマンスをぶつけてくるのだ。まさにライヴ。演者とオーディエンスとの氣の交歓がまるで目に見えるようにはっきり感じられる。
アンコールでHYDEはイヤモニを外して観客の声を全身で受け止めていたが、オーディエンスのパワーを生で感じたかったに違いない。曲調的にはラウドな曲だけではなく、HYDEの得意とする色気のある歌声を味わえるミディアムも何曲か配され、デス声から繊細なニュアンスまで、さまざまな表情のヴォーカリゼーションを堪能することができた。また、デュランデュランのカバーも披露し、ルーツの片鱗をのぞかせた。“今は第二形態。これからどんどん喰い散らかしていくから”とMCで語っていたが、さまざまな音楽性やイマジネーションを飲み込んで、まだまだこれからHYDEはメタモルフォーゼし続けていきそうだ。
撮影:岡田貴之/取材:舟見佳子
HYDE
ご存知、L'Arc〜en〜Cielのヴォーカリスト。01年10月にソロ・シングル「evergreen」を自身のレーベル<HAUNTED RECORDS>より発表。02年3月には1stアルバム『ROENTGEN』をドロップ。同時に制作された、全編英語詞のインターナショナル盤も韓国・台湾などアジア各国でリリースされる。03年12月には2ndアルバム『666』をドロップ。3ピース編成によるソリッドなバンド・サウンドを軸に、どこまでも真っ直ぐに自らの“ロック”を聴き手に突きつけている。