1月19日に渋谷eggmanで『Loop Night』と題した自主企画イベントを立ち上げたAnlyが、それから約2カ月半、渋谷WWWで『Loop Night Vol.1』を開催した(1月のライヴは『Vol.0』という位置付けだった)。シンガーソングライターとしてのみならず、ギタリスト、そしてトラックメイカーとしても自身の可能性を追求するという意味で、彼女のライフワークになるに違ない『Loop Night』の本格的なスタートは、見どころ満載のライヴとなった。その模様をレポートする。
“伝説を作るつもりで、ここに来ました!”とエド・シーランの「Don’t」と自作の「COFFEE」のマッシュアップでいきなり盛り上げながら、“もっともっと!”とRed Hot Chili Peppersの「Can’t Stop」、今年3月に『香港アジア・ポップミュージックフェスティバル2018』で優勝した時に歌った「カラノココロ」を畳み掛けると、コール&レスポンスに加え、シンガロング、ハンドクラップを求め観客をぐいぐいと巻き込んでいった序盤。「MOONLIGHT」他のバラードで伸びやかなハイトーンヴォイスの魅力を存分に印象付けた中盤。そして、自身の経験から生まれた「MANUAL」でブラック校則に対するプロテストを訴え、持ち前の反骨精神を観せつけた終盤。...観どころは随所にあったと思うが、この日一番の観どころは何と言ってもスケールアップしたループペダル使いだった。『Loop Night Vol.0』から2カ月半。ループペダルを使ってその場で音を重ねながら作るサウンドは格段の進歩を遂げ、美しいハーモニーも含めバンドサウンドを思わせるものに。演奏するギターフレーズもより研ぎ澄まされたものになっていた。圧巻は本編ラストの「Venus」。たったひとりで演奏しているとは思えない迫力と曲が持つ気高さに誰もが息を飲んで、その美しい歌声に耳を傾けていた。
いわゆる大人の事情に縛られず、音源化前の新曲も飛び出すこの『Loop Night』。即興性が高い分ハプニングはつきものだが、臨機応変な対処に生粋のライヴアクトとしての実力がうかがえる。それもまた見どころであることを付け加えておきたい。
撮影:名城文夫/取材:山口智男
Anly
アンリィ:1997年1月、沖縄・伊江島生まれ。中学卒業までPCもインターネット環境も家にはなく、情報が閉ざされた南の島で、音楽好きの父が持ち帰るブルースやロックのCDを聴き、ギターをオモチャ代わりに爪弾く日々を過ごす。島には中学までしかないため、高校進学のために転居した那覇市内で弾き語りライヴをスタート。高校を卒業した15年の11月、シングル「太陽に笑え」でメジャーデビュー。17年3月にリリースした“Anly+スキマスイッチ=”名義によるスキマスイッチとのコラボシングル「この闇を照らす光のむこうに」で注目を集めた。