“いい曲があるのでもう少しお付き合いいただけないでしょうか”――澤部渡の心の声を聞いた気がする、ライヴタイトル通り、これまで発表されてきた“8枚のアルバムと71曲”を今のスカートの実力と表現力をもって再検証するようなライヴだった。メジャーデビュー作『20 / 20』が玄人筋にも新しいリスナーにも好評を得る中、本作リリースからは半年以上を経たタイミングでのワンマンならではの意義を澤部は、選曲とライヴアレンジに注ぎ込んできた印象だ。
二部構成の1st SETは、1曲目の「さよなら!さよなら!」から徳澤青弦カルテットも参加して、飛翔するような感覚を具現化していく。ギターソロより特徴的な“澤部カッティング”で喝采が起こるという、スカートのライヴならではの盛り上がりも楽しい。そして、『20 / 20』では「視界良好」「魔女」のコーラスワークで参加している弓木英梨乃(KIRINJI)が「ストーリーテラーになりたい」に参加し、時空を超えた少年少女の思いが浮き上がるような声の融合を聴かせた。
2nd SETは澤部と徳澤のチェロのみで届けた「ハル」、カルテットのアレンジでの「想い(はどうだろうか)」も、言葉とメロディーの骨子が明確に受け取れる。そこからメンバーが3リズム、プラス・キーボードというふうに増えていく過程をライヴで実演し、ことにパーカッションのシマダボーイが加わったことで曲が完成したという「暗礁」では、パーカッションがないことを想像しながら聴いてしまったり(個人的な遊びだが)、作・編曲の面白さを体感できた。中盤以降も新旧のレパートリーから澤部のオルタナティブなマインドに裏打ちされた至宝のポップナンバーが続々と演奏される。同時代の仲間であり、今もバンド活動を継続しているミツメとトリプルファイヤーへのエールとも取れる「月光密造の夜」を大ラス前に配置。再び今度はギターを携えて弓木が登場し、「CALL」「魔女」で、ツインギターとコーラスのアンサンブルの旨味も披露してくれた。
ダブル・アンコールまで起こったのも無理はない。いい曲を聴かせたいステージといい曲を聴きたいフロアーは、まさに蜜月であった。
撮影:廣田達也/取材:石角友香
スカート
スカート:2006年、澤部渡のソロプロジェクトとして多重録音によるレコーディングを中心に活動を開始。どこか影を持ちながらも清涼感のあるソングライティングとバンドアンサンブルで職業、性別、年齢を問わず評判を集める不健康ポップバンド。強度のあるポップスを提示しながらも観客を強く惹き付けるエモーショナルなライヴパフォーマンスが話題を呼んでいる。17年10月にリリースする新作アルバム『20/20』にてメジャーデビューを果たす。