もし、あの時に解散していなかったら辿り着いたであろう未来と、解散したからこそ今、此処に在る未来。2004年の解散前に存在したデモをもとに生み出された15年振りのアルバム『唯、此処にある事が愛しくて』を引っ提げ、そのふたつの未来をつないだ本ツアーのファイナルは、全ての歴史を飲み込んだ現時点でのDASEINを余すところなく観せつける3時間となった。
彼ららしいサイバーな映像をバックに、アルバム表題曲「唯、此処に在る事が愛しくて」でライヴは静かにスタート。感情の波を感じさせないRicky(Vo)のハイトーンヴォーカルは抜け良く、隙なく正確に放たれるJOE(Dr)のへヴィな高速ビートや、客席で規則的に振られる青いサイリウムと相まって、どこか無機質なムードを振りまいていく。「キ・ミ・ダ・ケ」でメロディックな旋律を歌い上げながらも、立ち位置から1ミリも動かず手を翳すRickyはまるでアンドロイドのよう。激走ビートの上に抒情的な歌謡メロが乗る「眠らせてください」といい、普通ならば同居しえないものが共存するDASEINの不思議な音楽世界は、しかし、そこからの変貌ぶりこそが最大の観どころであった。
中盤、緊張感みなぎる音が連鎖するドラムソロでオーディエンスを魅了すると、JOEが“生きてるといろんなことがあって、10あれば8個は苦しい。でも、楽しいことが2個あれば頑張れる。俺の場合は君たちがいてくれるからだよ!”と宣言。そして、インストゥルメンタルの「無限」がパッショネイトに鳴らされれば、再登場したRickyはミステリアスな映像をバックに「絶望の花」を神秘的に届けていく。さらにオフショット写真と共に人間味あふれる熱いロッカバラード「走馬灯」へ。その一連の流れに、AIが新たな命を吹き込まれてゆくかのようなドラマチックな物語を感じたのは筆者だけではないだろう。
そこからは“人類皆ひとりきり”のコール&レスポンスで始まる「人類 is 皆 ヒューマン」、“俺たちのハイパービートロックについてこれるか!?”という煽りから拳とヘッドバンギングが沸く「ケリをつけろ」と、序盤とは打って変わって熱い空間に。レーザービームが飛び交う中、「Do NoT TENdER!?」ではオーディエンスが一斉に左右にモッシュし、そんなフロアに“お前ら最高だ! 生きてる証、見せてくれよ!”と「我ここにあり」が放たれ、その言葉に応えて満場のチョップが繰り出される。さらにアンコールの「BREAK←SHAKE→BRAIN」では、アルバムでもギターを弾いていたRENOがゲスト登場。そのロック感あふれるリフや速弾きがJOEの疾走ドラムと絶妙のマッチングを見せ、続く新曲「今に勝る時はナシ 今に敗けるよりはマシ」でもサポートのSCOTTIEと豪快なギターバトルを繰り広げてみるというファイナルならではのスペシャルな時間を贈ってくれた。
そして、Rickyの口から自身の喉の手術のため今日のライヴを最後に暫し活動が休止されることが改めて伝えられると、次があるか分からないからこそ大切な今を歌うメッセージソング「大切な人へ」が、とりわけ大きなリアリティーを持って感動的に響きわたる。“必ず戻ってきます。いつになるかわからないけど......DASEIN、やらなきゃダメだよね”と言い切った彼に、「COGITO ERGO SUM」でライヴが終わってもフロアの声は鳴りやまず、結果、予定外のダブルアンコールが! 「共鳴り」でタオルを振るオーディエンスには熱い一体感が漲り、最後は2018年に向けて18回ドラムを打ち鳴らしてフィニッシュ。ステージの真ん中でフィストバンプして、“また元気で会えますように”と告げたふたりの言葉が現実になることを心から祈りたい。