ニューアルバム『月下美人』の1曲目「晩秋」を最初に聴いた時、そのサウンドの幽玄さであり、《つぎの季節を生きぬくために》という歌詞を歌い上げる声のやさしさと力強さに心を持っていかれた。そして、この日のライヴも「晩秋」で幕を開けると...当然、胸に染みた。“カラオケの女王”と呼ばれるほど、彼女の高い歌唱力は周知の通りだ。しかし、上手いだけでは胸を打たない。そこに人となりが出てこそ、生きてきた人生分の喜怒哀楽が滲み出てこそ、歌は響くもの。それを改めて実感した。故郷の奄美を愛し、シマ唄を歌い続けている彼女のために、笹川美和がこの曲を書き下ろしたのも至極納得だ。その後も、三味線を弾きながらシマ唄で観客と歌い踊り、クリスマスソングのメドレーでは圧巻のヴォーカリゼーションで感動を誘うなど、アットホームでハートウォームな“ウタアシビ”が展開されていく。特筆すべきは、ゲストに25絃箏奏者の中井智弥を迎えた「月下美人」とシマ唄の標準語Ver.「祈りうた~トウトガナシ~」、そしてオーラスの「七草の詩」。MCで何度も“日本の美しい季節を感じてほしい”と言っていたが、グリッサンドで奏でられる琴の音色が季節の風を吹かせるように、たおやかな楽曲に和の彩りを加えていた。また、バースディケーキのサプライズも。3日後の12月26日に27歳の誕生日を迎えた城は、年齢をカラットに例えていたが、それを如実に感じたのは本編を締め括ったデビュー曲「アイツムギ」だ。前述したようにデビューの時から積み重ねてきた年齢分の輝きを、その歌声に感じた。それは温もりだったり、包容力だったり、厳しさだったり。そうやって日々、「アイツムギ」や「晩秋」は説得力と深みを増していくのだろう。