浸り切ってそのまま沈んでしまいたいような酩酊感と、そこに時折射るような鋭さで飛び込んでくる覚醒。非常に肉体的でありながら、忘れ得ぬ記憶が心に刻み続けられていく、音と言葉が織りなす時空間。衝撃作「姉弟」で幕を開けたバンドとしては初ワンマンとなるライヴは、カオスの渦に身を投げ入れることでしか得られないヒリヒリとするような快感にひたすら溺れさせてくれた。
危うさとどこかクールさも秘めた、白波多カミン (Vo&Gu)の乳白色の歌声と、濱野夏椰(Gu)、上野恒星(Ba)、照沼光星(Dr)とともに鳴り響かせていくドープなサウンド。ライヴアレンジで妖しさに磨きがかかったサイケデリック・ディスコチューン「嫉妬」。静と激、ポップとヘヴィの融合が絶妙のバランスで成立していた「バタフライ」。そして、スライドが1編の映像を構築していくような詞世界の「なくしもの」が描き出したミュージックスケープは荘厳さすら湛えていて、そのえも言われぬ美しさには思わず目眩がしそうになった。
強靭なバンドサウンドがメインだが、そもそもはシンガーソングライターであるカミンなので、アコギでの弾き語りも数曲。アンコールでは曲名もまだないという書き上げたばかりの新曲が引き語りで披露され、“白波多カミン・ワールド”の揺るぎなさと進化を提示。ラストはパンキッシュなパワーポップナンバー「いますぐ消えたい」で弾けながらアグレッシブに締め括られたが、全編通しての余韻が終演後もしばらく抜けないほど。そして、その余韻の中で確かに感じたカタルシスは、白波多カミン with Placebo Foxesのライヴでしか体感できないものだった。