メジャー1stフルアルバム『はなしはそれからだ』を引っ提げたツアーがついにスタートした。ライヴを見越してアレンジをバンドメンバーと“いっせーのーせ”でやるなど、バンド本来が放つ音...嘘のない音で勝負したいと語っていた同アルバム。そのサウンドが本番となるライヴでパワフルに弾け、その上で彼女が水を得た魚のように歌っていたことは言うまでもない。
ツアー初日の会場は恵比寿LIQUIDROOM。フロアーを埋める観客の中にはデビューを機に植田真梨恵に興味を持ち、足を運んだ人も少なくないだろう。インディーズ時代の楽曲が披露されると、ツアー初日にありがちな演者側の手探り感もあってか、新旧ファンの間にノリの違いがあるように見受けられた。しかし、それはあくまで序盤での話。サポートを務めるメンバーも百戦錬磨の面々ということもあり、抜群の安定感と躍動感を持ったバンドグルーブは、その威力を徐々に高めていき、場内の熱気を高めていく。
そんなグルーブに乗って、“自分は本当は独りぼっちかもしれないと思っている女の子の歌”や“とても大切な人がいるんだけどなかなか信じられない人の歌”と楽曲にある背景を語りつつ、伸びやかな歌声を聴かせる植田。どこかナイーブな湿度を秘めながらも絶対的な強さを持った歌声は、ライヴだからこその生々しさと一緒に、何倍もの説得力で言葉のひとつひとつを聴き手の胸に響かせる。それでいてアコースティックギターの弾き語りでノスタルジックな音世界だったり、バイオリンとピアノとの3人編成でディープでドラマチックな音像を作り上げていたのも特筆すべきところだ。
そして、後半線ーー爽快感と疾走感にあふれるバンドサウンドが観客を焚き付け、植田は“悔いを残さないようにしてほしいんです”と煽る。ニューアルバムの楽曲を中心に、インディーズ時代からのキラーチュンなども盛り込み、本編ラストではタオルを旋回させるなど、場内は熱気と笑顔でひとつになり、序盤にあった違和感など感じさせない。アンコールに入っても観客ひとりひとりの目を見ながら歌いかけるような説得力のある歌声であり、インプロビゼーション的な自由度の高いアンサンブルを聴かせ、“またみなさんに会いにきます!”と大盛況のうちに幕を下ろしたツアー初日。ここからツアーで新作の楽曲が育っていくことを考えると、また次に会う日が楽しみである。