SEが鳴り止むとともに、これから始まるショータイムへの意気込みと足を運んでくれた人たちに向けての感謝の念を感情たっぷりに歌いかけ、NUMBER VOGELのリリースツアーファイナルワンマンは始まりを告げた。「takaga-music,saredo-music」で勢いよく口火を切ると、そこからツアーのタイトルにもなっている1st EP『かくかくしかじか』に収録されている小気味のいいナンバー「MUSICMAN」までの4曲をノンストップで演奏し、会場のボルテージを上げていく。ファイナルワンマンというだけあり、この日の彼らのテンションは最高潮。一音一音を大切に確認し合うようにつま弾き、声を張り上げるメンバーに応えるかのように観客が手を挙げる光景は、胸を熱くさせるものがあった。
メンバー紹介代わりのソロ回しも華麗に決まり、なおも勢いは増していく。もとつね番ちょう(Vo&Gu)は身振り手振りを交えつつ伸びやかなハイトーンヴォイスで魅了し、楽器隊はというと始終笑顔で会場を煽り、こんなにも俺たちは楽しいんだ!と言わんばかりにステージを駆け回って「SENKOU-HANABI」や「I have a water」などのアップチューンを畳み掛けていく。特筆したいのはMCを挟んでの「自問自答」。新作のリード曲というだけあり、この日に至るまで各地で披露してきたこの曲のパフォーマンスからは堂々たる自信が垣間見え、観ている者を圧倒させる。
後半戦に突入すると先ほどの攻撃的な装いからは一転、しっとりと聴かせるナンバーが続く。前半戦で張り上げていた歌声は少し掠れをみせていたが、逆にその刹那が等身大のメッセージととも心に染み渡っていくのが肌で感じられる。そして“当たり前じゃない一日を大切にしてほしい”という願いが込められた「二千十五」では、ひと筋の光のような希望が会場を差し込む。ただがむしゃらに盛り上げるだけではない、彼らの芯にある“伝えたい”という想いが演奏に現れた瞬間だった。
アンコールでは、6月に新音源をリリースするというスペシャルな発表が。盛大な拍手が沸き上がり、満足げな表情を見せるとすぐさまその新曲を初披露。変則的なリズムや軽快なギターリフが特徴的なロックナンバーで、初めてライヴで演奏するとは思えないほどの熱を届けた。その後、会場が一体となって歌い上げた「LAST-SONG」でライヴは終了かと思いきや、鳴り止まない拍手が再度メンバーをステージに上げさせ、“新作の看板と言えばリード曲でしょ!”と言い放った後に「自問自答」を再び披露。この日一番の盛り上がりを見せるとメンバーの顔には最高の笑みが浮かび、この地に集まった全ての人たちへの感謝を、最後の一音まで見事なバンドサウンドで表現し切ってツアーファイナルワンマンは幕を閉じた。
“今日ここに集まってくれたみんなを、必ずもっとでかいところに連れていくから”。自信に満ちた表情で、そう何度も語りかけていたもとつね番ちょうの姿が印象的だったワンマンライヴ。その言葉に観客の1人が“楽しみ!”と返していたが、それは私を含め、会場の誰しもが胸に浮かべていた素直な想いに違いない。そして、きっと彼らはこの日に見せた最高の笑顔とライヴパフォーマンスをもってその野望を成し遂げてくれるであろうと確信した、希望と期待に満ちあふれた一夜だった。