ライヴハウスとも、コンサートホールとも異なるクラシックホール、浜離宮朝日ホール。声は隅々まで行き渡り、その反響音は、細部までもしっかりと聴こえてくる。そんな荘厳なホールに、アコースティックギター、バイオリン、ピアノというアコースティック編成のもと、GILLEは息を吸い、しっかりと吐くように歌い出す。その瞬間、一気にホールの空気は一変した。その場にいた人たちは耳を澄まし、一音一音逃さないようにしっかりと聴こうと静まり返ったのだ。いつもの彼女のライヴとはまったく違う、神々しい雰囲気に飲まれそうになる。そのままその歌声と空気に身を委ねると、アコースティックだからこそ実感できる彼女の歌唱力、表現力をそのまま堪能することができた。“歌の力”。まさにこの力が聴き手全員に伝わるような、圧倒するライヴだった。
とはいえ、天真爛漫で元気なGILLEも健在。「Try Again」や「BIG SUMMER」では、堪え切れなくなったファンたちが席を次々と立ち、タオルを振り上げその感情を剥き出しにして音楽を楽しむ。そこにはいつもの笑顔があった。MCではデビュー前から親交のあるバイオリニスト・白澤美佳と一緒に昔の思い出を語りながら涙する場面も。バンドメンバーにしっかりと突っ込まれながら相変わらずの言葉と笑顔でコミュニケーションを取る姿はとても親近感にあふれ、歌っている時のギャップに驚く。そして、インディーズの頃からずっと大事にしていたというバラード「花びら」も披露し、客席を感動で包み込んだ。
彼女の魅力は、圧倒的な歌唱力と表現力、そして、親しみやすい...というか距離感をまったく感じさせないキャラクターだろう。その両極端な一面をしっかりと味わうことのできる、今までにないこのライヴは、彼女にとっていいステップになったはずだ。より、GILLEの世界観が広がることを期待せずにはいられない一夜だった。