ライブをしているときに最も生を感じ、自分らしく生きていると思える。

―― 新曲以外に、彩さんがアルバムのなかでとくに思い入れの強い曲を挙げるとすると?

ラメント」かなぁ。あんまりこれまでの自分になかったタイプのアレンジだったりして、「みんながどう感じるかわからないけれど、私は好きだからこういう曲にします」みたいな気持ちで作ったんです。でもその結果、意外と「ラメントがいちばん好きです」と言っていただくことが多くて。めちゃくちゃ嬉しいですね。この楽曲もやっぱり最後の最後には、“届かない想いを糧にして生きていく”という希望を描けた歌だなと思います。

photo_03です。

―― 個人的には「愛なんていらない」も好きです。勝手な想像ですが、素の彩さんを感じる気がして。

まさにそのとおりかもしれません。とにかくいろんなことに疲れているとき書いた曲で(笑)。多くの楽曲がわりと、仕事モードの自分というか、スイッチを入れてアーティスト・山本彩として自分を歌っている感覚なんです。でも「愛なんていらない」に関しては、プライベートな自分が表れていますね。

ぽつぽつと本音を吐き出すようなイメージで、サビの<生きていける 愛なんていらない 心が削れるだけだ>というフレーズからできていきました。歌詞とメロディーが同時に降りてきて。この曲は失恋でいうと、別れを受け入れることはできて、立ち上がる直前、みたいなイメージ。一方で、まだそこまでいけてない段階を書いた「あいまって。」も気に入っています。

―― 彩さんはラブソングも多く書かれていますが、幸せな期間というより、別れを切り取りたくなることのほうが多いのでしょうか。

たしかに、幸せなラブソングはあまり書こうと思ったことがないかも…(笑)。多分まだ「幸せ」とか「大好き」みたいな感情を表すことに対する恥ずかしさがあるんでしょうねぇ。やっぱり失恋ソングのほうが好きというか、いろんな別れ方があるから、細かい設定を決めて書きたくなりますね。

あと日常の瞬間を切り取ることも好きです。朝起きたとき隣で寝ている横顔を見た瞬間、とか。帰ってきたとき部屋にいてくれる温かさを感じた瞬間、とか。「あいまって。」なんかは、別れて2~3日後ってイメージなんですけど、<またカメラロール そのままでsleep あなたのメモリまた 消せなくて>ってシーンを切り取って、そこから“まだ全然吹っ切れてない主人公”の物語を広げていく感じでした。

―― ご自身が描く主人公像に何か共通する特徴や性質ってありますか?

わりと…病みがち(笑)。あと強がりがち。とくに曲の前半はすごくもがいていますよね。でもやっぱり最終的には「それでも諦めない」とか「それでも少しずつ前に進もう」という感じで終わることが多いかなぁ。

―― では、このアルバムのなかでとくに書けてよかったと思うフレーズを教えてください。

ひとつは「ドラマチックに乾杯」の<自分を見つけたの ここで生きていきたい>ですね。これはドラマ『その女、ジルバ』の主人公に寄り添って、彼女のテーマソングというイメージで書いたんですね。でもライブで歌いながら、めちゃくちゃリンクする瞬間があって。私はライブをしているときに最も生を感じ、自分らしく生きていると思えるんですよ。ここは歌っていてグッとくるポイントですね。

あとは「劣等感」の<劣等感に殺される>が最後には<今日も劣等感に生かされる>に繋がっているところ。ここにすべてが詰まっているなと思いますね。

―― 彩さんが歌詞を書くとき、意識して使わないようにする言葉はありますか?

日本語としてなるべく正しい使い方をしたいという気持ちがあって。だから「ら抜き言葉」とかはあまり使わない。そんなに意識してない方も多いですし、カジュアルな表現がむしろ親近感に繋がることもあると思うんですけど、私は自分がモヤモヤしてしまうので気をつけるようにしています。

―― 逆にご自身が好きでよく使う言葉というと?

なんやろ…。自然系の一単語ですかね。<空>とか<花>とか<風>とか。歌詞を書くとき、五感を大事にしているところもあって。目で見るもの、耳で聴くもの、鼻で嗅ぐもの、口で味わうもの、肌で触れるもの、どの五感にも作用するようなワード。それが歌詞に含まれているほど、情景が浮かびやすいのかなって。だから自然、風景、情景が浮かぶ単語は多いかもしれないですね。

―― 彩さんにとって歌詞とはどんな存在のものですか?

自分の本音に気づかせてくれるもの。実際、悩みに対する答えなんかも、「あぁこう考えればいいんだな」と書きながら見つけていくことも多いんです。これからもまずは書くことで自分と向き合っていけたらと思います。

―― ありがとうございます! 最後にこれから挑戦してみたい歌詞を教えてください。

それこそさっきもお話したように、これまで幸せなラブソングをあまり書いてこなかったので、すごくハッピーな歌詞を書いてみたいですね。身内も結婚したので、ウェディングソングとか。よくファンの方にも結婚式で使いたいという声をもらっていて。1曲ぐらいは照れずに歌える幸せなラブソングを書くのが目標です。


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