私の歌で、ここまでハッピーで何の問題もないラブソングはなかなかない。

―― 1曲目「Bloom」は咲坂伊緒『サクラ、サク。』4巻コラボソングですね。

もともと私、咲坂伊緒先生の大ファンで。みなさんもちろんご存じだと思いますけど、『ストロボ・エッジ』、『アオハライド』 、『思い、思われ、ふり、ふられ』、大ヒット作ばかり。そんな先生の新作『サクラ、サク。』でコラボできるって話を聴いたときもう、「ぜひ! 絶対にやりたいです!」ってすごい前のめりで。それで書き下ろさせていただきました。

―― 主人公の藤ヶ谷 咲ちゃんは、miwaさんにどんな存在として映りましたか?

咲ちゃんは最初、自分に自信がないというか、自分の存在を肯定できるものが見つけられない子で。でもある日、電車に大切なものを忘れてしまって。それを届けてくれたひとに、ものすごく感謝の気持ちが生まれたんですね。そこから、「自分も誰かを常に助けよう」ということを生きる軸にして。お節介とか、いい子ちゃんとか言われても、「私に“いい子ちゃん”って名前がついた」ってプラスに捉えるようになったんです。

誰かは“いい子ちゃん”って悪い意味で言っていても、自分は褒められている気持ちになる。自分と誰かが見ている世界が、同じとは限らない。そういうことを咲ちゃんが教えてくれる作品でもあって。そして、最初は自信がなくて、いつも誰かの目線が気になっていたけれど、それを取っ払って生きていく潔さがある。そこがすごく魅力的でしたね。

―― 「Bloom」の主人公の<私>も、<まだ言えない言えない言えない>と思いながらも、どんどん自分の恋心を確かなものにしていくような強さがありますね。

そうなんです! 恋したときの、あの止められない強さ。「好き」とは言えないんだけど、気持ちはまったく止まっていません!っていう。桜が咲くという現象も、ピッタリだなと思いました。咲かないでと思っても、<花が咲くように胸がときめいて>どんどん気持ちが膨らんでいって、誰にも止められない。そういう部分を表現できたらと。

―― 最初からそこまで歌のテーマがしっかり見えていると、歌詞も書きやすかったのではないでしょうか。

すごく書きやすかったです! 最初に<花が咲くように胸がときめいて>ってフレーズがパン!って出てきて、そこから勢いでメロディーも曲もアカペラで作りました。恋が生まれていくあの感じを思い出しましたね(笑)。

あと、毎日顔を合わせる学校生活の特権。「おはよう」から「また明日」まで、ずっと一緒の教室にいるあの感じ。逃れようがない。日々のなかに好きなひとが溢れているっていいなぁと思いながら一気に書き上げた1曲です。

―― そして、2曲目「君が好きです」では「Bloom」で<言えない>分まで、<好き>を伝えています。

はい! もうめちゃくちゃストレートに。これも私、元々ABEMA『私たち結婚しました』の大ファンで。とくにトリンドル玲奈さんが出ていたシーズン2にハマってました(笑)。お話をいただいたとき、あまりに嬉しすぎて、最初から曲のイメージもバッチリできていました。

番組の映像的には、お家でのふたりの生活とかがフィーチャーされるんですね。なので、「暮らしはふたりで作っていくものなんだよ」ってメッセージも込めて、同棲を始めたばかりのカップルとか、新婚の方とか、そういうひとたちに共感してもらえるような世界観にしたいなと思って書きましたね。

―― 恋の不安や迷いが一切ない、スペシャル期ですね。

突き抜けてラブラブの時期を描きたくて。私の歌で、ここまでハッピーで何の問題もないラブソングはなかなかない気がします。切なさゼロ。だからこそ、付き合ったばかりで恋が絶好調のひとにピンポイントで刺さるんじゃないかなぁと。

―― 歌詞内の“恋のあるあるエピソード”はどのように集めたのでしょうか。

まず、1番Aメロの<一緒に写った写真 お揃いのTシャツ>は、まさにこの番組をイメージして。番組で、買い物に行くシーンとかが結構あるんです。たしかに同棲を始めたばかりのカップルって、一緒にインテリアや家具を選んだりする時間がすごく甘いじゃないですか。そうやって部屋のなかに、ふたりで選んだものや写真や、おそろいのものがどんどん増えていくんだろうなと想像しながら書きました。

2番Aメロの<夏の夜>からの描写は、私がこんなシーンがあったら素敵だなぁと思って書いたんですね。それがたまたま番組でも、海にドライブに行ったり、花火をしたりするシーンがあって、この曲とリンクしていてビックリしました。好きなフレーズですね。

―― 3曲目「シンクロ」は、5年前に作った曲だとおっしゃっていましたが、もともとはどういう歌詞だったのですか?

中学からの親友がいて、その子のために書いたんです。まさにこの歌詞のとおり、同時にメールや電話をし合ったり、同じタイミングで同じ悩みを抱えていたり、逆に同じような嬉しいことが起こったり、人生がシンクロしているなぁと思いながら、もう15年ぐらいですかねぇ…。社会人になっても、全然違う職業だけどずっと一緒で。

デビュー前にもその親友のために「My Best Friend」って曲を書いて、それはアルバム『Delight』に入れました。その子と10年、15年経っても仲がよくて、相変わらずシンクロするので、このシンクロ具合を今改めて曲にしたいなと思って。それを今回、このEPの収録曲として完成させた感じですね。

―― 2曲目「君が好きです」は<私>から<君>への思いを伝えるラブソングですが、この「シンクロ」は<あなたと私>や<私たち>というワードがあり、ふたりの物語になっているのが印象的です。

そうなんです。ひとりの片思いから始まったのが、ひとりとひとりの恋になって、さらに<私たち>って距離感になったというか。1本と1本の道が交わって、ひとつの<私たち>の人生になった。そういう“今、私たちが生きているストーリー”と描きたくて書いたのが「シンクロ」です。

―― ちなみに「シンクロ」だけは二人称が<あなた>で、他の収録曲は<君>ですが、人称の使い分けはどのようにされていますか?

明確ではありませんが、ライトに聴いてもらいたいときには基本的に<君>を使っています。<君>のほうがフランクに聴こえたり、青春感があったり、爽やかな言葉だなと。<あなた>はもうちょっとしっとりした雰囲気があったり、少し相手を見上げるような尊敬感があったり、でも同時にすごく近い距離感も表せたり、そういう言葉だと感じていますね。

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