僕、夏に恋をしたことってあんまりないなと思って。

―― 作詞のクレジットは“スカイピース”となっていますが、どのようにお二人で作っていくのですか?

テオ まずトラックを聴いた時点で、テーマを話し合って、どちらから書き始めるか決めます。そして自分が担当になったら、サビと自分の歌う部分のパートの歌詞を書いて、相手に渡して、次に相手が残りのパートを書く感じです。たとえば今回のアルバムだと「分かれ道」とか「リメンバー」は、曲を聴いたときに「バラードだな」「悲しい感情だな」と。

で、僕らにとって悲しいことと言えば、コンビを組んで一緒に進んできた相方がやめちゃったらとか。夢を目指している友達が諦めちゃったらとか。そういうことを考えながら、お互い歌詞にしていったと思います。「リメンバー」に関しては、僕の実体験で。他のYouTuberの友達から「やめようか迷っている」という相談を受けたときに、感じた想いを書きました。大体、どちらかの実体験がもとになっていますね。

―― 今回のアルバムタイトルは『BE BOY』で、1stアルバム『にゅ~べいび~』の“赤ん坊”から“男の子”へと成長している感が伝わってきます。

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テオ お!気づいていただけましたか!まず『にゅ~べいび~』のときは、音楽業界にまだ足先を突っ込んだだけで、上手く歌を聞かせようとか、誰かに気持ちを伝えようとか意識したことがなく、とにかく楽しければ良い!という感じだったんです。だけどそこから『BE BOY』にたどり着くまでに、技術的な面でも少し成長できましたし、自分の気持ちを込めたり、誰かに抱いてほしい感情を考えたりしながら作る曲も増えました。経験を経たことで、メッセージ性の強い曲を書けるようになったと思いますね。

☆イニ☆ 『にゅ~べいび~』はライブも経験したことないときに出したもんね。自分もやっぱりいろんな面を配慮するようになりました。たとえば息継ぎとか。僕はネットラップ出身なので、以前はトラック16小節あったら、全部に歌詞を詰め込んでやろうくらいの勢いだったんです(笑)。でも今は曲の作り方にゆとりが持てるようになりましたね。

―― 1曲目「世界」は、まさにメッセージ性が強い楽曲であり、アルバムの入り口に相応しいサウンド・歌詞ですね。

テオ ありがとうございます!バラードでもなく、アップテンポすぎるわけでもない、スカイピースが成長したことを伝えられる1曲目でありたいと思ったんですよね。

この世の片隅で 咲く花たちは
綺麗と言われるチャンスは 訪れないのかい
世界」/スカイピース

テオ この冒頭は自分が書きました。なんか、まだ誰にも見られていないすごく綺麗な花ってたくさんあるはずなのに、咲いた場所がたまたま<この世の片隅>だったせいで、誰からも<綺麗と言われるチャンス>が訪れないというのが、悲しい現実なんだよなぁと思うことが多々あって。もし表に出ることができたらどうなんだろう、とか。

―― 2番の<「しょうがないだろ」なんて言葉で片付けられてしまうような命を せめて少しだけ 愛の近くへ>というフレーズも、最近のいろんな悲しいニュースを見ていて実感しますよね。

テオ そうそう。僕はわりといろんなものを吸収しがちなので、本当はあんまりそういうニュースを観たくないんですよ。感情移入しちゃって、こっちまで悲しくなるから。でもそれでも、最後までちゃんとニュースを見ると、こういう歌詞が出てきたりしますね。これもさっきのフレーズに想いは通じているんですけど、生まれた場所とか環境によって「しょうがないだろ」って片付けられる命なんて、あってほしくないんですよ。みんなが必死に救おうとしてくれるのが命だと思うんです。でも現実にはある。それならせめてそういう命も<少しだけ 愛の近くへ>という願いを込めて書きましたね。

―― そして今作では5曲目「僕の夏の恋の話」や9曲目「クリームソーダ」のようなラブソングも印象的です。これもまたどちらかの実体験をもとにしているんですか?

テオ 「クリームソーダ」は☆イニ☆君が書き始めて、「僕の夏の恋の話」は自分なんですけど、僕は実体験ですね(笑)。2~3年前のことなんですけど。なんか、高校生のときは、素直に好きな人に告白して、OKをもらえたら楽しくやっていって、お互いにすれ違いがあったら別れるみたいな、シンプルな恋愛が多いじゃないですか。でも大人になるにつれて、気持ちだけではうまくいかない恋愛って増えていくなぁって。そんなことを思いながら書いた曲です。

―― たしかに「僕の夏の恋の話」の歌詞は、両想いなのか、片想いなのか、複雑ですね。

テオ 何を言いたいのかよくわからないですよね(笑)。大人だからこそ、自分の気持ちがぐっちゃぐちゃなんですよ。両想いなのに、付き合わないし、繋がらないし、好きって言ったり、言えなかったり、やっぱり言ったり。

―― こうしてお話ししていると、テオさんはすごくノリが良くて、恋愛でもグイグイ攻めそうなタイプに思えますけれど、実際はこの曲のように奥手なのですか?

テオ そう!恋愛だけがダメなんですよ~。他のあらゆることにはプラス思考なのに。病気にかかっても、怪我をしても、なんとかなるだろ!って思えるし、誰かから相談されても「大丈夫だよ!」って言うんです。でも自分の恋愛に関しては、めちゃくちゃネガティブで、いつも「自分じゃ無理や…」って思います。☆イニ☆君は逆だよねぇ。

☆イニ☆ え!?…まぁ…そうですね(笑)。どちらかというとグイグイいけるタイプかも。

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―― ちなみに、お二人で恋バナってよくされるのでしょうか。

テオ もう、☆イニ☆君にはすべて言いますね。他の男友達にも結構話すし。僕はわりとメンタル強そうに見られますけど、実はみんなに吐き出しているから、耐えられているだけなんですよ。誰かに共有してもらわないと、自分の中に溜まって爆発しちゃうので(笑)。だから何かあったらすぐに相談します。でも意外と☆イニ☆君は秘密主義なんですよねぇ。

☆イニ☆ うん(笑)。自分の恋愛の話はあんまり積極的にはしゃべらないかなぁ。

―― では、そんな秘密主義だという、☆イニ☆さんが作った「クリームソーダ」はどのように生まれたのですか?

☆イニ☆ この曲の話来たか~(笑)!でもこれは実体験じゃないんですよ。なんか僕、夏に恋をしたことってあんまりないなと思って。だから“昔ながらの喫茶店で隣の人に恋しちゃったけど、なかなか伝えられない。でもこの夏はちょっとチャレンジしてみようかな!”という気持ちを想像した、甘酸っぱい感じの歌詞を書いてみました。

―― なぜ夏には恋をされないんですか?

☆イニ☆ いや~、なんかできないんですよね。多分ね、たとえば学生のときとかって、夏と言えば休みじゃないですか。で、僕の場合、アニメが大好きなので、夏休みはずーっとクーラー効かせた家でアニメを観ていたんですよ。アニメが恋人だったわけです(笑)。そっち側の人間だったから、まず外に出なかったんじゃないかなぁ。

テオ 僕と真逆だ(笑)。自分はもう夏と言えば、海に行って、プール行って、サッカーして、はしゃいでって感じだから。まぁ正反対だから、違うタイプのラブソングができるのかもねぇ。

―― お二人は、ご自身が書くラブソングの<僕>や<君>の特徴というと、どんなところだと思いますか?

☆イニ☆ う~ん…<僕>は言いたいのに言えない子。そのもどかしい気持ちを書きたくなりますね。さっき「自分はグイグイいける」とか言いましたけど、それは「この子も俺のこと好きなんじゃない?」という両想いの確信があるときのみですからね(笑)。それまでは結構、慎重です。そして<君>は、なかなか振り向いてくれない子を書きがち。

テオ 小悪魔ちゃんだ!

☆イニ☆ そうそう。ちょっとあっちも気づいているけど、簡単には来ないタイプの子ですね。

テオ 僕は、後悔することが多い主人公だな。伝える前に死んじゃったりとか。みんなには後悔しないでほしいからね。自分の歌を聴いてもらうことで、こういうやつは後悔しちゃうってことを知ってもらって「じゃあ動き出さなきゃ!伝えに行かなきゃ!」みたいな感じで思ってほしいというか。

―― 反面教師ソングですね。

テオ そう(笑)。で、<君>はあんまり自分の想いを言わない子が多いかもしれないですね。強がりの子。たとえば<僕>が「別れよう」と言ったとき、泣いて「嫌だ!」って言ってくれる子ならわかりやすいじゃないですか。でも「わかった、頑張ってね!」って言って、相手の知らないところで泣いているような子を書きがちですね。だから「僕の夏の恋の話」とかまさにそう。なんか、なかなかこういうことを考える機会がないので、さすが歌詞サイトならではの質問だ(笑)!

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