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第93回 King Gnu「白日」
 作詞・作曲は常田大希である。これほど表現力がありパワーもあるバンドだが、歌詞の世界観もすこぶる優れている。コトバとサウンド、イミとノリ、これらがあやふやに二極分化するのではなく、有機的に響きあい、我々を包み込んでいくのだ。

タイトルは、なぜ「白日」なのか? それは、[降りしきる雪]の季節を描くこの歌にあって、春の季語として機能するからだ。「白日」が春の季語、なんて書くと、おそらく「プレバト!!」の夏井先生からはお叱りを受けるかもしれないが、つまりは雪がすべて溶けて消えたなら、様々なことが白日の下に晒される、ということだろう。

そうだとしたら、このタイトルは実に素晴らしく、その余韻をおかずにこっぺぱん三つくらい何もつけずに食べられそうなくらいだ。そして、さらに歌詞を見ていくと、キラリキラリと光るフレーズが満載なのである。
ジャケット画像です。
「白日」
2019年2月22日発売
アリオラジャパン
歌詞を見る。
King Gnu(キングヌー)
東京藝術大学出身で独自の活動を展開するクリエイター常田大希が2015年にSrv.Vinciという名前で活動を開始。 その後、メンバーチェンジを経て、常田大希(Gt.Vo.)、勢喜遊(Drs.Sampler)、新井和輝(Ba.)、井口理(Vo.Key.)の4名体制へ。SXSW2017、Japan Nite US Tour 2017出演。2017年4月26日、バンド名をKing Gnuに改名し新たなスタートをきった。2019年1月、アルバム『Sympa』でメジャデビュー。
新鮮な時制表現としての[地続きの今]

 過去が追いかけてくる、みたいな書き方は、よく見かけるし、過去というモノが逃れようのないものとして「今」を支配する姿は、例えばラブ・ソングにおける“忘れ得ぬ君”の存在などで、世の中にあまた描かれてきた。

この歌にも、そのあたりに関連した表現が出てくる。でも、とても新鮮なフレーズである。それは[地続きの今]。これはすごい。過去が追いかけてくるのなら、なんとか逃げることもできる(もし億万長者なら、超法規的に国外に逃げることもできる)けど、し、しかしである。[地続きの今]はどうだろうか?

己の裸足が生乾きのセメントにのめり込み、それがどんどん凝固を早めていくような、他では味わえない切迫した心理状況が醸しだされる。実際に歌のなかで、そこまで重たく用いているわけではないのだが、この表現には、とても心を動かされるのである。

自問自答をさり気なく、しかし、真実味をもって

 さらにこの歌の魅力のひとつとして、[かな]→[よな]、[よな]→[だろう]という、自問自答する歌詞の展開も挙げられるだろう。

具体的には、[なってやしないかな]を[なれやしないよな]で受けたりする部分だが、ここでの主人公の心の揺らぎが、とてもリアルに聴き手に届く。ここは物語が進んでいくわけじゃなく、時間軸的には宙ぶらりんである。ところが生きていくには、こういう“時間帯”が大切なのだ。そうやって主人公は、単にもがき苦しむわけじゃなく、かといって達観するわけでもなく、なんとか未来をこじ開けようとする。

全体としては普遍的テーマの歌

 細かいことを書いたが、「白日」は小難しい歌ではなく、とても普遍的なテーマ、そう、閉ざされた冬から解放的な春へと想いを馳せる歌である。

それがヴィヴィッドな時代性をまとい、万人の心を打つ仕様として完成されて、これほど多くの人びとを魅了した(もちろん筆者を含め…)。

しかし、このKing Gnuというバンドは、実に方法論が多彩である。他の作品に触れれば、即座に気づくことだ。この1曲だけでは、彼らという多面体のほんの一面を覗き込んだに過ぎない。なのでバンドの全貌が“白日の下に晒される”のは、まだまだずっとずっと先のことだろう。
INFORMATION

NEW ALBUM 『CEREMONY』
2020年1月15日発売
Blu-ray Disc付き初回生産限定盤
BVCL-1046~1047 ¥4,500(税抜)
通常盤 BVCL-1048 ¥2,900(税抜)

ジャケット画像です。
<収録曲>
01.開会式
06.幕間
12.閉会式
アマゾン画像です。
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