弱いとこだって見せてくれって強く抱き締めたくせに。

誰にも言えない気持ち
誰にもわかってもらえない気持ち
そんなひとりぼっちの気持ちに寄り添いたいな。
楽しい時も悲しい時も、
あなたの小さな味方でありますように!
(鈴木友里絵・公式HPプロフィールより)


 ひとりぼっちの気持ちに寄り添いたい。小さな味方でありたい。そんな想いで歌を届け続けているシンガーソングライター“鈴木友里絵”が2018年7月7日にニューシングル「あなたのせいで、」をリリースしました。この歌はまさに、誰にも言えない気持ちが綴られている切ない恋のバラード。では「あなたのせいで、」の「、」のあとには、一体どんな想いが続くのでしょうか。

この涙と一緒に あなたの記憶も全部
流れてしまえばいいのに
まぶたの裏に貼りついたまま

もう最後にしなくちゃ さよならするんだ
たかが一つの恋が終わるだけ
もうやめにするから
あなたのことなんかで辛くなったりしない
好きだなんて思わない
「あなたのせいで、」/鈴木友里絵


 涙が流れる瞳には、実際<あなた>の姿など映っていません。だけど、目を閉じれば<まぶたの裏に>いつだって<あなたの記憶>は張り付いていて、鮮やかに再生される…。どんなに忘れたくても忘れられない苦しみが、冒頭から伝わってきますね。しかし、主人公の<あたし>はなんとかこのドン底な現状から抜け出そうとしております。

 自分に<もう最後にしなくちゃ さよならするんだ たかが一つの恋が終わるだけ>と言い聞かせ、目の前にいない相手にさえ<もうやめにするから あなたのことなんかで辛くなったりしない 好きだなんて思わない>と強がり、立ち上がろうとする“意志”を持とうとしているのです。忘れて前に進むこと。それは、最も正しい道であることはたしかでしょう。

 でも、失恋した経験がある方ならわかりますよね。<もう最後にしなくちゃ>と思うことは“まだ最後にしたくない”ことです。<あなたのことなんかで辛くなったりしない>と思うことは“あなたのせいで辛くて、好きで、どうしようもない”ということです。だからこそ彼女が、忘れなきゃ忘れなきゃと歌えば歌うほど、忘れたくない忘れたくないという想いが伝わってくるのです。強がれば強がるほど、弱さが溢れてくるのです。

弱いとこだって見せてくれって強く抱き締めたくせに
ひとりじゃないってそばにいてくれたくせに
今更何よ 強くなれないよ
あなたのせいで、
恋を知ったせいで
「あなたのせいで、」/鈴木友里絵


 かつての<あたし>なら、誰かのためにこんな涙を流すことはなかったのかもしれません。常に強さや強がりを貫き通し、ひとりで生きていけると思ったはず。それを変えたのが<あなた>です。<弱いとこだって見せてくれって強く抱き締め>てくれたから、弱い<あたし>になることができた。<ひとりじゃないってそばにいてくれた>から、誰かに寄りかかる<あたし>になることができた。何もかも“あなたのおかげ”であることです。

 ただ、そんな<あなた>を失ったとき、オセロの白がすべて黒にひっくり返るかのように“あなたのおかげ”だったことが“あなたのせい”に変わってしまいました。あなたのせいで、もう強がりを貫き通せやしないし、あなたのせいで、もうひとりで生きてゆける自分にも戻れない。大切な恋を初めて知った<あたし>は、同時に新しい自分を知って、大切な恋を初めて失った<あたし>はまた同時に、新しい苦しみと戦っているのでしょう。

出逢わなかったなら こんな痛みも知らなくて良かった
ねぇどうして 思い出だけ
綺麗に光って忘れられないの
でもねあたしね もう行くね
弱いあたしはあなたのとこだけに置いてくわ

弱いとこだって見せてくれって強く抱き締めたくせに
ひとりじゃないってそばにいてくれたくせに
今だけはちょっと強がらせて
あなたのせいで、
恋を知ったせいで
「あなたのせいで、」/鈴木友里絵


 それでも、この曲を聴いていると「あなたのせいで、」の「、」のあとに続く想いは、マイナスなものばかりではないようにも思えます。もちろん、恋を失ったことは悲しいし淋しいし悔しいし苦しい。けれど、それ以上に“あなたのおかげ”で知ることができたいろんな感情に、新しい自分に、幸せな日々に、感謝をしている気がするのです。それゆえに<今だけはちょっと強がらせて>と「あなたのせいで、」という“強がり”な言葉を使っているのではないでしょうか…。

 まだ「あなたのせいで、」失恋の苦しみから抜け出せずにいるというあなたへ。鈴木友里絵のこの歌が届きますように。きっとひとりぼっちのその気持ちに寄り添ってくれるはず。そして、あなたの心の小さな味方になってくれるはずです…!

◆紹介曲「あなたのせいで、
作詞:鈴木友里絵
作曲:鈴木友里絵