眠れない夜だけが僕の味方だ

 2023年4月19日に“レトロリロン”が1st EP『インナーダイアログ』をリリースしました。既発曲3曲+新曲3曲を収録した今作。インナー(内側)+ダイアログ(対話) という単語をつなげて“自分自身との対話”という意味になっており、このEPが自分自身と対話するきっかけになってほしいという思いが込められている作品です。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“レトロリロン”の涼音による歌詞エッセイを3週連続でお届け。今回が最終回です。綴っていただいたのは、今作の収録曲「深夜6時」にまつわるお話。ある日突然、眠れなくなってしまった理由とは。そしてその先で気づいたこととは…。ぜひ歌詞と併せて、エッセイを受け取ってください。



―眠れない夜だけが僕の味方だ―
 
ある日突然、僕は眠ることができなくなった。
正確には眠り方が分からなくなった。
 
原因はシンプルで明白だった。生きることへのプレッシャーだ。前に進めば進むほど、完璧でいなくてはいけないと思い込んでしまっていた。
 
誰かに必要とされること、それは幸せなことでもあるが、僕にとって一番苦しいことでもあった。自分の為に、生きていたかったのだ。
 
 
僕はいつもうまく生きることができない。
 
全てに対してリスクを考えてしまうし、一度スイッチが切れると何もしない時間をひたすら過ごしてしまう。そしてとうとう夜眠ること自体が怖くなってしまったのだ。
 
毎晩自分の何がいけないのか、どうしてこうなってしまったのかを考えては眠れないという日々を繰り返していた。そうしている内に、1日の境目がわからなくなるほど時間感覚が無くなっていった。
 
 
でもこの眠れない時間は僕が僕でいるための大切な時間でもあった。
 
真っ暗な部屋の中、天井を眺めながら自分自身とひたすらに向き合った。
生きるとは何か、幸せとは何か。
でも答えが出ることはなかった。
どれだけ夜にしがみついても、朝はやってくる。
太陽は昇ってしまう。
何だか悩めば悩むほど、馬鹿馬鹿しくなってしまった。答えなどなくてもいい。
 
 
きっと僕は日々に、そして自分自身に"意味"を求めていたのかもしれない。
 
夜と向き合っていた僕は、夜と同じ方向を向いてみることにした。
夜を味方にして僕はまだまだ成長できる。その衝動に駆られた僕は曲を書いていた。
 
気づけば、時計は6時を回っていた。
 
<レトロリロン・涼音>



◆紹介曲「深夜6時
作詞:涼音
作曲:涼音

◆1st EP『インナーダイアログ』
2023年4月19日発売
 
<収録曲>
1.カウントダウン・ラグ
2.Restart?
3.Document 
4.Don’t stop
5.きれいなもの
6.深夜6時