優しくて痛くて意味のある嘘を。

 2021年12月8日に“LACCO TOWER”がニューアルバム『青春』をリリースしました。すでに発表されている「閃光」「無戦無敗」「罪」「化物」「約束」をはじめ、タイトル曲「青春」を含む新曲7曲が加わった全12曲が収録。レコ発全国ワンマンツアー<青春旅行>も開催!2022年1月15日、ホームの群馬・高崎clubFLEEZ公演を皮切りにスタート!
 
 さて、今日のうたコラムでは最新作をリリースした“LACCO TOWER”の松川ケイスケによる歌詞エッセイをお届け!今回が最終回。今作の収録曲「」に通ずるお話です。彼がずっと後悔しているあの日の嘘。みなさんは誰かのために嘘をついたことはありますか? 一体それはどんな意味を持ちましたか…? 是非、そんな記憶も思い浮かべながら、このエッセイと歌詞を受け取ってください。



吐息が形を作る冬。この季節になると思い出す。
あの時をずっと後悔している。
 
私は学生時代、バスケットボール部に所属していた。当時、流行真っただ中にあった『SLAM DUNK』の影響をもろに受けた我々世代の8割強の男子は、中学に上がると同時に「流川になりたい」という夢を思い描いたに違いない。私もその一人だった。
 
新1年生部員は皆仲が良かった。初めての先輩、初めての後輩、初めての練習試合、初めての遠征、勝利、敗北。その全てが純粋で無垢できらきらと輝いていたかのように思う。
 
皆小学生に毛が生えた程度の年齢だ。仲の良いメンバーでも当時からちょっとした喧嘩や、なんとなく話さなくなる事はちらほらあった。ただやはり皆仲は良かったように思う。そんな学生生活を1年ほど送っていたある日、何がきっかけかは分からないが、バスケットボール部でいつもつるんでいたメンバーの一人が顔を見せなくなった。次第に放課後会う事もなくなり、皆連れ立って買い物に行く事もなくなり、次第に彼の悪い話が耳に入るようになった。しかも何か悪い事をした話ではない。なんとなく「うっとうしい」と思われているようなのだ。
 
中学校から少し歩いた所に、我々がよく溜まっていた公園があった。マンションのふもとにあるその場所は、この辺りでは珍しくネットの張られたバスケットゴールを有するハーフコートと、そのネットをハーフラインから見つめるようにトーテムポールが立っている奇妙な場所だった。その公園のあるマンションに、彼は住んでいた。
 
いつからだろうか、そういえば彼がコートに来る事はなくなり、その場所に彼がいた事を噂で聞くようになり、その頃にはほとんど彼とは話さなくなっていた。そんな折、たまたま彼と出くわす機会があった。冬休み直前、私は彼女と待ち合わせをして下校した。その帰り道だった。彼はおもむろに
 
「、、なぁ、みんなからなんか聞いてる?」
 
と私に話しかけた。
 
今思えば、彼の「なんか」には恐らく色んな意味が含まれていただろう。
「俺の事悪く言ってる?」
「皆どんなかんじなの?」
「何かした?俺」。
 
でも私は
 
「んー、、。知らんよ?」
 
と適当な返答をした。恐ろしく曖昧で意味のない保身に溢れた嘘を。
 
あの日からこのコラムを書く今日現在まで、正直彼の事は忘れていた。ただ今になって、あの時の嘘が酷く恥ずかしい。何と無責任に酷い事を言ったのだろうと。
 
自分自身が痛みを伴い、相手に優しさを与え、それが何かの意味になる嘘を、私は今までいくつついてきたのだろう。消えると知って燃やすマッチは、それでも一瞬の暖かさを与えてくれる。真冬の空の下で、私は彼にマッチどころか毛布を掛ける事さえしなかった。自分自身が凍えてしまうような気がしていたから。
 
誰かの為につく嘘は、果たしてただの嘘なのだろうか。それとも一筋の光を見せる励ましや優しさなのだろうか。願わくば、どうかこれから先は、私自身、後者のような嘘をつけるようになりたいと思うのだ。
 
 
全3回の「青春」コラム。乱文駄文にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。皆様の青春が素晴らしいものである事を心から願っています。

<LACCO TOWER・松川ケイスケ>



◆紹介曲「
作詞:松川ケイスケ
作曲:LACCO TOWER

◆ニューアルバム『青春』
2021年12月8日発売

<収録曲>
1 青春
2 化物
3 証明
4 嘘
5 閃光
6 独白
7 口紅
8 罪
9 渦巻
10 約束
11 無戦無敗
12 雪