そうだ、このアルバムを“花束”に見たてよう。

 2019年8月7日に“リリィ、さよなら。”がニューアルバム『最終話までそばにいて』をリリースしました。彼がこのアルバムのコンセプトに据えたのは【花】です。収録楽曲の1曲1曲を花になぞらえ、楽曲を聴き終えたあと、ブックレットの最後に添えた花言葉を読むと、その曲の歌詞が色彩を放つ仕掛けになっているんだとか!

 切ない歌詞と綺麗なメロディで聴く人の涙を誘う、彼ならではの世界を堪能できる楽曲はもちろん。これまでとガラっと変わった一面を魅せる楽曲も加わった全7曲が収録されております。さて、今日のうたコラムではそんなアルバムについての歌詞エッセイを、リリィ、さよなら。本人が執筆!4週に分けて記事をお届けいたします。前回のプロローグに続き、今回はアルバムセルフライナーノーツ【第1章】をご堪能ください…!

『最終話までそばにいて』
~セルフライナーノーツ【第1章】~


私自身がアルバムの楽曲にこめた
想いや制作の背景を話そうと思う。

【制作開始】

 今回のアルバムは今年の1月に入って制作が決まり、実はその時にはまだアルバムの曲は何一つ決まっていなかった。だから今作はとにかく新しい曲を作ることから始まったため、様々なテイストの楽曲が生まれ、詰め込められたバラエティ豊かなものになった。

 今まで“リリィ、さよなら。”はミディアム~バラードの切ない楽曲が多かったが、令和最初のリリースというタイミングである今作は「せっかくだから今までやらなかったこと。やれなかったことをやろう。だって新時代だし」という、コンセプトで作り始めた。オーガニック感溢れるミディアムや、今にも踊り出しそうなファンクの曲も出来た。

 様々なテイストの楽曲がバラバラに集まったので、どうしようと悩んだところ「あ!そうだ、このアルバムを“花束”に見たてよう。」というアイデアが浮かんだ。花束なら新しい何かが始まる時にぴったりだし、いろんな種類の花が集まって一つの美しい作品になっている様が、このアルバムにピッタリだと思ったのだ。

 つまり今作のテーマは、バラバラの7曲の物語一つ一つを花ととらえ、それをまとめた【花束】であるということだ。7つのストーリーを表す花と花言葉もそれぞれ与えた。まさに実験的なアルバムである。では、これからそれらの新しい楽曲を少しずつご紹介しようと思う。

【M1.その手にふれたあの日から

 アルバムのリード曲。多分 自他共に1番「リリィっぽい」と思えるミディアムバラードである。今作には、他にもリードにしたい曲があったのだが、新しいことに挑戦した楽曲もあれば、この楽曲のように「背骨」のような、変わらないで聴いてもらえる楽曲もあるべきと考え、今作の看板になった。

 内容としては、主人公の<僕>が、友達以上恋人未満な<君>にとっての、頼られる良いやつポジションではあるが、なかなか気持ちを伝えられず、もう一歩が進展しない片思いのもどかしさを歌った曲である。

 実はこの曲最初に誕生したのは、リリィが地元・熊本で高校生をしている時代であった。ハイティーンのまだピュアな恋愛の視線がリアルで、大人になった今歌うと、恥ずかしくなったり照れたりしてしまうくらいだ。今回は夏のリリースということもあり、この曲の甘酸っぱい感じが季節にぴったりだと思ったのだ。

 「近代主義の流れの中で身に付いた自己防衛のせいだよ」と、始まる歌詞は、高校生だった自分が、ちょっと背伸びしてかっこつけたことを言おうとしている感じが表されていて、こんな男の子かわいいなと笑ってしまう。若さっていいな。

 また、この曲は<僕>が<君>との日々の中で、なかなか進まない関係や踏み込めない自分にもやもやしつつ、最後には気持ちを伝えるところで終わる。

こんなしょうもないやつだけどさ
聴いてくれ
「       」


 最後の歌詞。あえて歌詞カードに空白のカギ括弧をつけた。音源ではこの部分で、何かを言おうと大きく息を吸って終わる。いったい<僕>は<君>になんと言ったのか、そしてその後の二人はどうなってしまったのか、それは書いた僕にも分からない。この楽曲を聴いてくれた方が自由に思いを馳せてほしい。

◆楽曲の花…「プリムラ」
花言葉…「青春の始まりと悲しみ」


【M2.甘い生活


 この楽曲はもはや僕の夢であり、祈りであり、確かな幸福の記憶である。糖度がかなり高い。これがフルーツや野菜だったら相当メディアで特集されるであろう。それくらい甘い。歌詞がタイトル負けしてない自負がある。

窓に差す光が 君の横顔を照らして
今日は休みだって思い出して
「幸せだなあ」柔らかく笑った


 休み前日からお泊まりデートして、起き抜けの朝の一コマである。「今日は休み」だったこと、そしてそんな朝に大好きな「君」がいること。まさしく甘い生活である。幸せの象徴。

 あいにく私は、プライベートに幸福な思い出があったことが、はるか昔のことなので作る際にはかなりの努力を要した。必死に思い出した。心の中で空想の恋人まで作ってみた。胸キュンの少女漫画やBLも読んだ。

 その結果できた曲がこちらである。終始「こんなカップルに自分もなりたい」「恋したい」気持ちが溢れる作品となった。この曲を聴いてくれたあと、実写化した少女漫画の映画を観たあとみたいな「どうしようもなく恋したい」や「今すぐ好きな人に会いたい」という気持ちになってもらえたら、こちらの目論見としては概ね成功である。

 ああ自分もまたこんな恋したい。今まさに私もこの曲を聴きながらそう思っている。

◆楽曲の花…「ドラセナ」
花言葉…「幸福」

<リリィ、さよなら。>


【第2章へ続く!】

◆ニューアルバム『最終話までそばにいて』
2019年8月7日リリース
POCS-1816 ¥1800+税

<収録曲>
1.その手にふれたあの日から
2.甘い生活
3.Lovin’you?
4.Your best friend
5.コールドスリープ
6.Clover
7.モラトリアム