夜空に咲いて散る花火のように、消えてしまえれば楽だろう。

好きになるのは一瞬だったんだから
一瞬で忘れられたらいいのに。
(ドラマ『失恋ショコラティエ』より)


 恋を失った多くのひとに刺さる言葉ですよね。好きになるのは一瞬だったのに、忘れられるどころか、一分、一秒、数々の記憶が“一生モノ”になって頭から離れない。今日のうたコラムでは、そんな苦しさを抱えている方に届いてほしい新曲をご紹介いたします。2019年7月17日に“The Super Ball”がリリースしたニューシングル「花火」です。

偽りの装いは好きじゃない
君はそんな瞳をしていた
飾り気ない その笑顔に
僕は一瞬で恋に落ちた

横殴り 雨降る遊園地も
纏わりつく 蒸し暑さも
溶けていった かき氷も
君がいれば何でもよかった

薄紫の浴衣姿が
いつまでたっても脳に焼き付いて
離れないよ ねえ僕はどうやって
生きていけばいいのだろう?
「花火」/The Super Ball


 まさに<一瞬で恋に落ちた>主人公。この<僕>もまた『一瞬で忘れられたらいいのに』それができず、もがいている人間なんです。だからこそ歌詞には“一生モノ”になってしまった記憶が綴られてゆきます。まずは出会い。相手の瞳に<偽りの装いは好きじゃない>という意思を感じたのは、自身が<偽りの装い>をよく知っていたからでしょう。
 
 つまり<君>に出会うまでは、いつもどこか自分を偽りながら生きていたのが<僕>だった。しかし、そんな自分とは正反対の<飾り気ない その笑顔>に初めて触れ、人生が変わったのだと思います。さらに、思い出すのは<横殴り 雨降る遊園地>や<纏わりつく 蒸し暑さ>や<溶けていった かき氷>など、一見ちょっと冴えない記憶ばかり。
 
 ただしそこに<君がいれば>、オセロの黒がすべて白にひっくり返るかのように“幸せな時間”となったのです。そのすべてが“特別な記憶”なのです。きっと、どんな日常も、不運も、不幸も、特別な幸せに変えてくれるのが<君>という存在だった。でもそんなにも大切な存在が、今はもういない。そう想像すると<ねえ僕はどうやって 生きていけばいいのだろう?>というフレーズが一層、悲しく響きます…。

夜空に咲いて散る花火のように
消えてしまえれば楽だろう
もう君に会えないなら
今 世界の終わりが訪れたって
構わないや
「花火」/The Super Ball

夜空に咲いて散る花火のような
愛の記憶に締め付けられる
もう君に会えないなら
明日の朝が来ても来なくても
構わないや

闇夜で誰かを照らす花火のように
君は僕の光だった
暗くて何も見えないさ 歩けないよ
「花火」/The Super Ball

 そして、サビで溢れ出す<もう君に会えない>世界への絶望。自分の<闇夜>を<照らす花火のよう>だった君。人生の<光>になってくれた君。だけど、その光を失い、二度と戻ってこない眩しい時間。もはや<消えてしまえれば楽だろう>と、<今 世界の終わりが訪れたって 構わないや>と、“生きる気力の喪失”にまで繋がっております。
 
 それでも、この「花火」は、希望がゼロの歌ではないのだと思います。なぜなら<僕>は<楽だろう>、<構わないや>などとは言っているものの、自ら『消えてしまいたい』『世界が終わればいい』『朝なんか来なくていい』『もう歩きたくない』と強く拒絶しているわけではないからです。まだ“希望”が入る隙間を閉ざし切ってないのです。

もういっそ咲いて消える花火のように
君の全部忘れられたらいいのに
たとえ誰に手を
差し伸べられたとしても今は
立ち上がれないや
「花火」/The Super Ball


 こうして幕を閉じてゆく歌。やはりあくまで“<今は>”立ち上がれないのです。もう二度と、歩けない、立ち上がれないのではありません。ちゃんと“いつか”の希望があるから。たとえ苦しくても、つらくても、確かに<君>が照らしてくれたこの世界を、記憶のなかの“花火”を頼りに、いつかは立ち上がって歩んでいきたい。歩んでいかなきゃ。そんな声にならない声も、伝わってくる気がしませんか?
 
 歩かなきゃと思うのに、歩けない。立ち上がらなきゃと思うのに、立ち上がれない。忘れたいのに、忘れられない。そんなあなたに、The Super Ball「花火」が届きますように。この歌が、あなたの明日を少しでも照らしてくれますように。

◆紹介曲「花火
作詞:The Super Ball
作曲:The Super Ball

◆NEW 6th Single「花火」
2019年7月17日発売
初回限定盤 TKCA-74803 ¥1,389+税
通常盤 TKCA-74804 ¥1,111+税

<収録曲>
1. 花火
2. 夏の神様
3. サンサーラ
4. 花火(Instrumental)
5. 夏の神様(Instrumental)