女の子だから、とか男の子だから、とかそろそろうるさいな。

青い海を見つめて 何を待つ? 返事をくれよ 僕は…
「Spark」/家入レオ


 2019年1月30日に“家入レオ”が15thシングルをリリースしました。今日のうたコラムでは、その収録曲からNHK短編アニメ『アニ×パラ~あなたのヒーローは誰ですか~』の第3弾『車いすテニス』テーマ曲として書き下ろされた歌をご紹介いたします。まず『アニパラ』とは、パラリンピックの魅力を“アニメ”で世界に発信するプロジェクト。
 
 日本を代表する漫画家たちが毎回、独自の視点でアスリートを見つめ、オリジナルアニメを書き下ろしているんです。そして、そのテーマ曲を書くにあたり“車いすテニス”界のレジェンドである国枝慎吾選手のドキュメント作品や試合映像を観た家入。彼女はそのときの自身の心の動きについて、オフィシャルブログで次のように綴っております。

青いテニスコートと車いすに乗ってプレーする国枝。
私には、それが青い海に漕ぎ出していく
一隻の船に乗っている姿に見えて。
サビの「青い海を見つめて 何を待つ?」という
言葉が生まれたんです。
(家入レオ Amebaオフィシャルブログより引用)

 よく「大きな海を見つめていたら、自分の悩みなんて小さく感じられてきた」という言葉も耳にしますが、この歌詞はそうではありません。広大な海と同じくらいの世界へ、何が起こるかわからない未来へ、漕ぎ出しながら<青い海を見つめて>いる誰かがいるのです。その出航を目にして<僕>はここから自身の生きざまにも目を向けてゆきます。

女の子だから、とか
男の子だから、とか そろそろうるさいな
私は私だし 僕でもあるし 気分次第

答え合わせの毎日 思うように生きているの?
近道は探さずに 僕とさぁ旅しよう
「Spark」/家入レオ


 女の子だから、男の子だから、健常者だから、障害があるから、国籍が年齢が境遇が…と、日々いろんな声に晒されているわたしたち。ときにはそれによって遠慮してしまったり、本音を伝えられなかったり、不当に扱われたりということもあるでしょう。でもきっと<青い海>を行く誰かの胸にあるのは<私は私>という想いと夢への意志だけ。
 
 その“ひとりの人間”としての強さに揺さぶられたからこそ<僕>は<そろそろうるさいな>と、そんなことより自分もみんなも<思うように生きているの?>と、一緒に変わろうよと、声を届けているのです。ちなみに<女の子だから、とか 男の子だから、とか そろそろうるさいな>という思想に通じるような言葉を以前、家入レオは口にしておりました。

今、自分が一番興味を持っているテーマが“男女”についてなんですよ。私は出会った最初の頃ってあまり男性とか女性とか意識しないんですね。話していて面白いと思ったらご飯に誘ったり、どこかに行ったりして、だんだん「あ、好き」って瞬間がいっぱい重なっていって“愛”みたいなものになった時、初めて性別を自覚するんですよ。

そして、相手が女の子の場合、私は恋愛には発展しないので、その愛情が「一人の女性として幸せになってほしい」という気持ちに繋がります。そうやって同性だと“ずっと一緒”が叶いやすいじゃないですか。だけど、相手が男性の場合は“お付き合いをする”とかその先が望めてしまうからこそ「どんなに好きになってもこの人とはサヨナラがゴールなんだなぁ」って思ってしまうんですよね。

その人のことを中途半端に好きなのかと訊かれたらそれは違って、全力で好きなんです。ただ、現実的にこの年齢で自分がその人と結婚するかと訊かれても、多分違うし…。だからよく「あー、この人が女性だったら良かったのに」って思ったりもします。人間として「好き」という気持ちは同じなのに、どうして男性とか女性とか関係してくるんだろう…、とかそういうことを考える時間がとても多いですね。
(2018年 家入レオ・歌ネットインタビューより引用)

 このインタビューの時点では『人間として「好き」という気持ちは同じなのに、どうして男性とか女性とか関係してくるんだろう…』というモヤモヤした気持ちまでを語ってくださっていますが、実は新曲「Spark」には“いや、そんなのは関係ないんだよな。私も相手もただの人と人なんだ”というひとつの結論も込められているのではないでしょうか。

女の子だから、とか 男の子だから、とか
私は私だし 僕は僕だし

同じような未来を 語るたび 絶望感
悩みはじめたときは 運動して よく遊ぼう

青い海の先には 君がいる 感じるだけで 強くなれるよ
生まれた意味が分かったんだ もう泣かない

青い海を見つめて 君を待つ 声が聞こえる 僕はここだよ
続けることで作り出せる 景色があるから 信じてる 今
「Spark」/家入レオ

 まずは何より<私は私だし 僕は僕だし>どんな価値観にも縛られず、自由に旅に出ようと、この歌は伝えます。もちろん、行き先も手段も目的もそれぞれ異なりますし、孤独を感じることもあるはず。だけど<悩みはじめたときは>運動してよく遊べば、なんとなく元気を取り戻せることはきっとみんな同じ。そして、別々に広大な海に出航したとしても<青い海の先には 君がいる 感じるだけで 強くなれる>のです。離れたところにたくさんの“旅仲間”がいるのです。
 
 地道にやり続けていくことでしか、見えてこない景色を見たいと思っているあなた。今はまだ、青い海を渡ってゆく誰かの背中を見つめているだけのあなた。自分らしく旅立ちたいと思っているあなた。是非、家入レオの「Spark」を聴いてみてください。もしかしたらこの歌が、その人生を変えるきっかけの“Spark(閃光)”になるかもしれません…!

◆紹介曲「Spark
作詞:家入レオ
作曲:家入レオ

◆15thシングル「この世界で」
2019年1月30日発売
初回限定盤 VIZL-1517 ¥1,700(+tax)
完全生産限定盤 VIZL-1518 ¥2,900(+tax)
アニメジャケット限定盤 VICL-37454 ¥1,400(+tax)