おかえり、優しく抱きしめたいよ。

 2018年12月19日に“androp”がニューアルバム『daily』をリリースします。今日のうたコラムでは、今作のリード曲であり、すでに歌詞先行公開中の新曲「Home」をご紹介。MVは、ボーカル・内澤崇仁の故郷であり、彼自身が音楽を始めたルーツでもある青森の八戸にて撮影されたそう。歌詞にはどのように“Home”が描かれているのでしょうか。

おかえり
優しく抱きしめたいよ
ここまで遠回りしたのかい

変わってしまったものもあるけど
今は抱きしめてあげてよ

例えば悲しくて涙に濡れるなら
また笑えるまで 側にいるよ
側にいてよ
「Home」/androp

 優しいピアノの旋律で幕を開け、温かな「おかえり」のひとことで始まる歌。まず「Home」という言葉には【故郷】という意味がありますが、きっと今<君>は<僕>という“こころの故郷”に帰ってきたところなのでしょう。ここにたどり着くまで、良くも悪くもいろんな何かや誰かと出逢って、たくさん道に迷って<遠回りした>かもしれません。

 それに<変わってしまったもの>を憂う気持ちも、また<悲しくて涙に濡れる>気がする不安もあると思います。だけど“こころの故郷”では、そんな心の闘いは一旦、終わりです。何もかも<優しく抱きしめたい>と思ってくれる、絶対に<また笑えるまで 側にいる>と言ってくれる<僕>がいる。だから、安心して<君>は、自分のすべてを<抱きしめ>、ただただ側にいたいひとの側にいて良いのです。

雨に濡れない
雪に消えない
照りつける日差しからも
守れるような屋根になる

暗闇には光を入れる
鳥の声が響くような
風がそよぐ窓になる
「Home」/androp

 そして<僕>は、やっと“こころの故郷”で一息つけた<君>が、より穏やかな気持ちでずっと<側に>いられるように、さらなる想いを伝えます。ご存知のとおり「Home」という言葉には【家】という意味もありますよね。この歌で<僕>は<君>にとっての“こころの故郷”のみならず、自分が“こころの家”のような存在になると誓うのです。

 たとえば、屋根。家にはあって当然で、改めて眺めたりすることもあまりないでしょう。でも<雨>からも<雪>からも<照りつける日差し>からも守ってくれる、まるで大きな愛のような役割を果す、大切なもの。それが<屋根>です。さらに、たとえば、窓。もちろん光を取り入れたり、風通しを良くしたり、機能的な面でも欠かせないもの。
 
 ただし、それだけではありません。歌詞にあるように<鳥の声が響くような>美しい景色や<風がそよぐ>様子を見せ、安らぎや開放感も与えてくれます。そんなふうに<僕>は、物理的にも精神的にも<君>にとっての“こころの家”になって、心身の力になりたいと考えているのではないでしょうか。いつでも帰ってこられる“こころの家”に。

重たい荷物背負って立ち続けて
汚れて傷ついて また行くのかい
また行くなら

一人で寂しがる心が
夢の鍵で開く心が
どこへでも行ける扉になる

君のために作った場所さ
笑う奴がいるのなら
全て遮る壁になる

日が落ちて暗くなり迷う時は
明かりを灯し待ってる
「Home」/androp

 続く歌詞には<汚れて傷ついて また行く>日が来るであろう<君>のため、どのように自分が<君>の“こころの家”としてここに在るか、いっそう確かに綴られております。帰る場所だけではなく、出発の場所にもなり得る<扉>だったり。何があっても、どんなときも、味方であることを象徴する<壁>だったり。また、暗闇のなかでも<明かりを灯し待って>いてくれるから、迷う心配もありません。

帰る場所さ
休む場所さ
旅立つ場所さ
また進み出す場所さ
いつでも君の場所なんだよ

変わったものも
変わらないものも
捨ててきたのも
大切なのも

癒えない傷も
大事な人も
ありがとうも
忘れたくない想いも

おかえりも
ただいまも
いってらっしゃいも
いってきますも

ここにあるよ
君とあるよ
全部全部

やがて来るさよならも
抱きしめてく
今を君と一緒に
「Home」/androp

 そして、このように歌は幕を閉じてゆきます。描かれている<ここ>で、実際の自分の故郷を思い出すひともいるでしょう。今日、帰る自宅に想いを馳せるひともいるでしょう。これから作ってゆく家庭を想像するひともいるでしょう。andropの音楽こそが“こころの故郷”であり“こころの家”であるひともいるでしょう。どんな境遇のひとも、それぞれの<ここ>を胸に聴くことができるのが、androp「Home」なんです。

家族の言葉には
「さよなら」ってないじゃないですか。
「さよなら」って言いたくないひとに出会ったとき
ひとは結婚するのかなあって思うんですよ。
(ドラマ『Woman』より引用)

 余談ですが、ドラマ『Woman』にそんなセリフがございました。きっと、androp「Home」の<僕>と<君>の日常にも「さよなら」という言葉はないのだと思います。唯一あるのは<やがて来る>最期の<さよなら>です。だからこそ、最期のその時まで<抱きしめてく 今を君と一緒に>という決意も、この歌には込められているのでしょう。
 
 自分にとっての「Home」とは? ときには<僕>の立場として、ときには<君>の立場として、じっくり聴いてみてください…!

◆紹介曲「Home
作詞:Takahito Uchisawa
作曲:Takahito Uchisawa

◆ニューアルバム『daily』
2018年12月19日発売
初回限定盤 UPCH-7474 ¥2,808(税込)
通常盤 UPCH-2182 ¥2,160(税込)