運命に膝まで濡らさないように、はしっていこう。

 2018年10月17日に“ビッケブランカ”が新曲「まっしろ」を配信リリースしました。11月21日にリリースの2ndアルバム『wizard』収録曲でもあり、新垣結衣と松田龍平がダブル主演を務める水曜ドラマ『獣になれない私たち』挿入歌として書き下ろされた楽曲です。ドラマを動かしてゆくのは、人生うまくいってるようで、ままなっていない男女二人…。

誰にも見つからない
街の灯も灯らない
交差するクレーンを一人見上げた
今は叶わないことばかりのまま
ただあるいていこう
「まっしろ」/ビッケブランカ

 本能のまま“野生の獣”のように自由に生きられたら楽なのに、そうはできずにいる。そんな全ての“頭でっかちな大人”のための物語に寄り添うのが、この挿入歌「まっしろ」なんです。まず、歌詞には一人称も二人称も綴られておりません。だからこそ、誰しもより自分事として重ねられる。そして<一人>きりの孤独感が色濃く伝わってきます。

 きっと<誰にも見つからない>のは、自分の本音や人知れず頑張ってきた姿。また<街の灯も灯らない>様子は、どんなに希望を求めても真っ暗な現実を表しているかのようです。その空しい夜の帰り道、一人で見上げた<交差するクレーン>は、どこか今の“自分自身”に重なったのではないでしょうか。
 
 巨大なものや重いものを吊り上げて運ぶ機械。つまりそれが、責任や役割を背負いながら日々を<あるいて>いる自分です。何かを作っているのか、壊しているのか、それはわかりません。でも何かを成し遂げる途中である<クレーン>のように、とにかく自分も淡々と<今は叶わないことばかりのまま ただあるいていこう>と、明日のための小さな深呼吸をしているのでしょう。

別に言うことなんてない
言ってもいいことなんてない
人知れず黙り方を覚えた
いつか変わらない日々を穿つような
鐘が鳴るはず

粉雪が降ってきた 可笑しさがこみあげてきた
最高な夜だね 泣けてくるから
運命に膝まで濡らさないように
はしっていこう

この世に一つの鐘の音よ
「まっしろ」/ビッケブランカ

 続く歌詞では、生きにくい毎日がいっそうリアルに伝わってきます。誰にも何も<別に言うことなんてない>日々。何故なら<言ってもいいことなんてない>から。これは“言って許されることなんてない”という意味と“言っても何かが変わるわけじゃない”という意味、どちらの諦めも含まれていそうですね。ゆえに、本音にフタをして沈黙する耐え方を覚えたのです。

 それでも、わたしたちは<変わらない日々を穿つような鐘>を期待せずにはいられません。ちなみに<鐘の音>とはドラマにも登場するキーワード。何かが変わる合図がしたらすぐ動き出せるように、思い込みの<運命に膝まで濡らさないように はしっていこう>。いろんな諦めのなか、まだ息づき続けているそんなたしかな希望も描かれているのが、この歌なのだと思います。

冷たさが吹いてきた 悲しみがこみあげてきた
降り積もったすべてよ 時間を超えてよ
そして今まで全部なかったように

気づいたら 少し涙
もう一度帰れたとしたなら
全てに変えても守りたいものを
決して手放さないように
はしっていこう
「まっしろ」/ビッケブランカ

 世の中は冷たいし、頑張れば頑張るほどなんだか悲しいし、いっそ何もかも「まっしろ」にして<今まで全部なかったように>人生をやりなおしたい…。みなさんもそう感じるときがありませんか? だけど、ここからもう一度<全てに変えても守りたいもの>がある新しい自分になることはできるでしょう。まだ「まっしろ」な未来のなか、大切なものを<決して手放さないように>はしってゆくことはできるでしょう。
 
 「まっしろ」は何もない絶望の「まっしろ」ではなく、何でも築いてゆける希望の「まっしろ」にもなるはず。この歌を聴きながら泣けてきてしまったという“獣になれない”あなたも、いつか鳴る<この世に一つの鐘の音>に期待しながら、まだまだ「まっしろ」な明日を進んでゆくことができますように。

◆紹介曲「まっしろ」
2018年10月17日配信
作詞:ビッケブランカ
作曲:ビッケブランカ

◆メジャー2ndアルバム『wizard』
初回生産限定 AVCD-96009/B ¥3,800+税
CD only AVCD-96010 ¥3,000+税