なんでわたしは綺麗になりたいの。

 2018年9月25日に“moumoon”が配信アルバム『autumn moon -sentimental-』をリリースしました。今作のテーマは、タイトルどおり【秋】です。新曲3曲に加え、過去のmoumoon楽曲からこの時期にぴったりな7曲をセレクトした、計10曲が収録されております。今日のうたコラムでは、そのなかからセンチメンタルな新曲「ひとつだけ、」をご紹介。

なんでわたしは
綺麗になりたいの
それは
きみが迷っても
見つけやすいようにだろう
「ひとつだけ、」/moumoon

 ボーカル・YUKAの切なく儚く柔らかな声と、雫が滴るようなピアノの音が交わり合う歌の幕開け。大切な<きみ>への深い愛情は<綺麗になりたい>という想いになって溢れ出してゆきます。もちろん、好きな人のためだったら容姿も綺麗になりたいものですが、この歌では“心”の美しさのほうを意味している気がしますね。
 
 たとえば<きみ>が人生の選択で迷っているときは、一番に「あの人ならなんと言うだろう」と思い浮かべてもらえる存在でありたい。希望が見つからないときだって「でもあの人がいてくれるから大丈夫」と思ってもらえる存在でありたい。たったひとつの標として<きみ>のために輝いていたいから、きっと<わたし>は日々、その光になるにふさわしい生き方を探しながら過ごしているのでしょう。

つめたい電車の窓
寄りかかって
焼ける空を見てた
その名前を
つぶやいたら
この景色が滲んだ
「ひとつだけ、」/moumoon

この道を通るたびに
あの夜の湿度が香るよ
「ひとつだけ、」/moumoon

 また、この歌では<つめたい電車の窓>に肌で触れる“触覚”や、<焼ける空>を見つめる“視覚”や、<その名前を つぶやいた>自分の声が響く“聴覚”や、<あの夜の湿度が香る>のを感じる“嗅覚”などが描かれております。目の前に<きみ>はいないけれど、いないからこそ【五感】でその存在をたしかめている<わたし>の姿が伝わってくるのです。

 電車の窓をつめたく感じたのは、それだけ<きみ>を想う<わたし>の体が熱を持っていたからかもしれません。もしくはまだ<きみ>のぬくもりが<わたし>に残っていたからかもしれません。さらに<焼ける空>は、胸の内で密かに静かに燃え続けている恋の炎を表しているようでもあり…。様々な【五感】の描写からいろんな想像が広がります。

ひとつだけ、
ただひとつだけ
きみとの思い出があるだけで
こんなにも
ねえこんなにも
街が輝いてみえるから

Ah Ah

つぎはいつあえるのだろう

今日だけは、
ねえ今日だけは
恋人のように手をつなぎたい
人混みに消えてしまおう
きみのぬくもりに包まれて
こんなにも、
ねえこんなにも
明日よ来ないで
くるおしく
きみを想うほど眠れないよ
「ひとつだけ、」/moumoon

 そして歌の終盤。<つぎはいつあえるのだろう>。<今日だけは恋人のように手をつなぎたい>。そんなフレーズから、おそらく二人は、会いたいときにいつでも会えるような簡単な関係でないことが明らかになるのです。それゆえに<わたし>は、離れていても<きみ>のトクベツな光でありたいのではないでしょうか。こんなにも五感で日常から<きみ>を感じようとしてしているのではないでしょうか。
 
 一週間に<ひとつだけ、>でも、一ヶ月に<ただひとつだけ>でも、約束や思い出があるだけで十分。それだけでなんとか生きてゆくことができる。そう<わたし>は歌ってきました。でも最後の最後、やっと会えた<今日だけは><明日よ来ないで>と願ってしまうと、零れる本音。本当はもっと会いたいけれど<ひとつだけ、ただひとつだけ>といつも自分に言い聞かせている<わたし>の気持ちが切ないですね…。
 
 会いたいけど会えない。好きな人を想って眠れない。そんな夜には是非、moumoonの「ひとつだけ、」を聴いてみてください。やさしい歌声や音色や歌詞が、あなたの心を包み込んで、きっと少し痛みを和らげてくれるはずです…!

◆紹介曲「ひとつだけ、」
作詞:YUKA
作曲:K.MASAKI

◆『autumn moon -sentimental-』
2018年9月25日発売

<収録曲>
1 ひとつだけ、
2 Yes
3 ラヴソング
4 moonlight
5 愛の音
6 Cinderella
7 PINKY RING
8 どこへも行かないよ
9 青い月とアンビバレンスな愛
10 Do you remember?