誰かを傷つける幸せだとしても、それでも君と居たかった。

 2018年7月25日に“Ghost like girlfriend”が2nd mini Album『WITNESS』をリリース。このアーティストは、作詞作曲トラックメイクを全て自身で手がける“岡林健勝”によるソロ・プロジェクトです。現在のところアーティスト写真はイラストを使ったロゴのみで、本人のパーソナリティはほぼ謎に包まれたまま…。さて、今日のうたコラムでは今作に収録されており、歌詞先行公開中の新曲「髪の花」をご紹介いたします。

疲れ切って一人でいつまでもシャワーに背中打たれ
排水溝の君の髪の束がぼやけて花に見えた

今 朝までの幸せは二度と君とはもう作れない
浮かべている
君との何でもない特別な幸せを
「髪の花」/Ghost like girlfriend

 快活で疾走感あるギターサウンドで幕を開ける楽曲。ですが、すでにMVを観たリスナーの方々が多数コメントしているように、歌詞と併せて聴くと、とにかく【エモい】のです。まるで寂しさと悲しみと恋しさでいっぱいの胸をかき鳴らしているかのように聴こえてきます。何故なら<僕>はまさに今、愛する<君との何でもない特別な幸せ>を二度と作れないという現実に陥ってしまったから…。

 そんな“最悪”を背負った背中を<一人でいつまでもシャワーに>打たれていると、涙のせいか<排水溝の君の髪の束がぼやけて花に見えた>主人公。これが曲タイトルの由来です。この恋の名残のような髪。それは<君>の不在を際立たせ、同時に、まだ部屋の隅々に残っている存在感や、髪のように絡まる想いを象徴しているのだと思います。また<花に見えた>という表現からも<僕>にとって幸せな日々がいかに美しかったか、伝わってきますよね。

会いたくて、うつむく
言葉が一つと浮かばなくなっても
それでも君と居たいから
「髪の花」/Ghost like girlfriend

 そして<僕>の気持ちは現在進行形です。本当は会いたいし、ずっと君と居たい。でもこの恋はそうはいかないのです。たとえ<君>が同じ気持ちだったとしても。お互い会いたいと思うことも、もっと一緒に居たいと思うことも許されない。もうどうしようもないからこそ“言い訳”の<言葉が一つと浮かばなくなって>いるのです。その理由は続く歌詞で明らかになってゆきます。

言ってしまえば僕たちの気持ちの出会い方は
赤信号になったばかりの横断歩道で
目が合ったみたいなものさ

あと少しタイミングがもしずれてたら
僕らには正しくて誰にも責められない
幸せがあったのかな
「髪の花」/Ghost like girlfriend

君の踵と目が合って
そっとドアを開けてあの人のものになっていく

君は正しい幸せを生きてよ
「髪の花」/Ghost like girlfriend

 そうです、もともと<君>には<あの人>という存在がいたのです。それでも<僕たち>は<赤信号になったばかりの横断歩道>をまだ大丈夫だろうと渡ろうとしてしまった。もしくは渡ってしまったのではないでしょうか。もちろん世の中的にはそんな恋はルール違反。だから<正しくて誰にも責められない幸せ>とは正反対の、間違っていてみんなに責められる幸せだった…。

 やがて、ルール違反のこの恋を続ける限界がきました。そうして<君>はもう一度、渡ってしまった<横断歩道>を<僕>を置いてひとりで戻ってゆきます。再び<あの人のものになっていく>のです。今度こそは<正しくて誰にも責められない幸せ>の道を<あの人>と生きてゆくのです。苦しいけれど、悲しいけれど、切ないけれど、もはや<僕>も<君>の“まっとうな”幸せを願うしかありません。

会いたくて、うつむく
誰かを傷つける幸せだとしても
それでも君と居たかった
「髪の花」/Ghost like girlfriend

 誰かを傷つける幸せだとしても、間違っていてみんなに責められる幸せだったとしても、君が居るだけでよかったのに…。その想いは身勝手ではありますが、正直で、痛切です。だけど歌の冒頭では<それでも君と居たいから>と現在進行形だった気持ちが、ラストでは<それでも君と居たかった>と過去形になっております。これは“忘れないといけない”という意志の表れなのかもしれません。もう、排水溝の「髪の花」も捨てて。この恋をちゃんと枯らせるのです。
 
 今、同じ状況に陥っているあなたは心を重ねながら。そうじゃない方も楽曲の世界観をじっくり味わいながら。是非、Ghost like girlfriend「髪の花」のサウンドや歌詞をご堪能ください…!

◆2nd mini Album『WITNESS』
2018年7月25日発売
BNCD-003 ¥1,300(+TAX)

<収録曲>
1. sands
2. (want) like (lover)
3. 髪の花
4. room
5. Before sunny morning