冴えない愛に見えてしまったけど違うの?

 2018年6月13日に“藤原さくら”が2ndアルバム『PLAY』から約1年ぶりにEP盤『green』をリリースしました。今作には本人作詞作曲による全6曲が収録。今日のうたコラムではその中から新曲「グルグル」をご紹介いたします! 最初は、本物だと信じて疑わなかった愛。この人だ!と思っていた人。それなのに月日が経つにつれ「…アレ?」という感覚が増えていくことってありませんか…?

消えない愛を頂戴
消えない甘い色した
癒えない愛に見えてしまったけど違うの?

消えない愛を頂戴
冷たい甘い匂いの
知らない人に見えてしまったけど違うの?
「グルグル」/ 藤原さくら

 哀愁漂うギターと、憂いを帯びた歌声で幕を開ける曲。まず、この歌には“私”や“あなた”といった人称が一切、綴られておりません。だからこそ<消えない愛>を求めて、だけど手に入らなくて、自分の価値もわからなくなってしまっているような主人公の脆さが見えてきます。さらに、愛する人は<冷たい甘い匂いの知らない人に見えて>しまって、もはやその面影すら薄れている様子も際立つのです。

 消えない愛を頂戴。そう口にするのは、手元にある愛が今にも消えてしまいそうだから。まるで偽物の<癒えない愛>みたいだから。この言葉は<知らない人に見えてしまった>愛する人に向けての一刺しでしょう。そして<違うの?>と、もう一刺し。このたったひと言には、「違わないでしょう?」という苛立ち、不満、皮肉、嫌気、憂鬱、様々な感情が込められているのだと思います。

今さら何でこんな想い
しなくちゃいけないの?
グルグル 同じとこ まわってるだけでしょ
「グルグル」/ 藤原さくら

嘘つき 早く消えて
ふかしたタバコみたいに
冴えない愛に見えてしまったけど違うの?

今さら何でこんなこと
言わなきゃいけないの?
もういっそ嫌いになれたら良いのに
「グルグル」/ 藤原さくら

 歌が進むにつれ<違うの?>に含まれた感情は、ますます膨らんでゆきます。ちなみに<ふかしたタバコ>とは、煙を肺に入れる前に吐き出す行為のこと。タバコの後味だけを口だけで楽しむのです。きっと主人公にとっては、なんだか二人の関係も、まるで<ふかしたタバコ>のよう。心には取り入れられず、いいところだけ調子よく味わって、吐き出される<冴えない愛>のようなのです。

 でも<違うの?>が日々、膨らみながらも、別れられないのは<今さら>だからこそ、ではないでしょうか。<もういっそ嫌いに>なるには、あまりに月日を重ねてしまった。<消えない愛>だと信じたくて、あとに退けなくなってしまった。それゆえに<冴えない愛>だとわかりながらも<グルグル 同じとこ まわってるだけ>の関係を、また今日も繰り返してしまうのでしょう。

こんなんじゃ終われないから
筋書きを変えて変えて 見つけなきゃ
こんなんじゃ壊れないなら
行き先を変えて変えて変えて変えて

今さらね 口だけのくせに 忘れないから
どうも許されるとでも思ってるみたいで呆れる

こんなんじゃ終われないから
筋書きを変えて変えて 見つけなきゃ
こんなんじゃ壊れないなら
行き先を変えて変えて変えて変えて
「グルグル」/ 藤原さくら

 そして、サビでは<変えて変えて変えて変えて>というフレーズがグルグルグルグル繰り返されます。筋書きを変えて終わらせて、見つけたいのは、消えない愛。行き先を変えて、壊したいのは、冴えない愛。その<消えない愛>は他の誰かから欲しいものなのでしょうか。それとも<知らない人に見えてしまった>目の前の人から取り戻したいものなのでしょうか…。
 
 心ではまだグルグルグルグルしているいろんな葛藤が、藤原さくら「グルグル」から伝わってきますね。消えない愛を探しているあなた。冴えない愛にウンザリしているあなた。是非、この曲に自分の心を重ねながら聴いてみてください…!

◆2nd EP『green』
2018年6月13日発売
VICL-65008 ¥1,800+税

<収録曲>
01. Dance
02. Time Flies
03. Sunny Day
04. グルグル
05. bye bye
06. The Moon