あなたに出逢えて最高だ、どうしよう。

 2018年6月6日に“aiko”がニューアルバム『湿った夏の始まり』をリリース!今作には「恋をしたのは」「予告」「ストロー」のシングル3曲に、新たな10曲を加えた全13曲が収録されております。今日のうたコラムではそのなかから、ゆったりとしたラブソング「愛は勝手」をご紹介。あなたは最近、わざと恋愛から遠ざかってはいませんか…?

何も受け入れない方が
悲しくないし良いと思っていた
だから信じられなくても
どうせいつもの事だと吐き捨てた
「愛は勝手」/aiko

 冒頭のフレーズ。大きな失恋の経験がある方、誰かに傷つけられた経験のある方、大いに頷けるのではないでしょうか。何を受け入れたって、失うときは失う。何もかも受け入れていた分、悲しい想いをする。大人になればなるほどその“自分方程式”が当たり前になり、やがて恋愛というものに線を引くのです。つまり<信じられな>いわけではなく、信じないようにしているのだと思います。

無理してささくれ探し
ついつい前歯で噛んでしまってた
だけどあなたに出逢えました 心が気を失ったよ
「愛は勝手」/aiko

 恋の予感がしても、やがて訪れるであろう悲しみに先回りして<無理してささくれ探し>をする。ちょっとでも合わないところ、信じられないところ、ダメになりそうなところを見つけ、ネガティブな未来予想図を描いては<ついつい前歯で噛んで>恋の可能性を切ってしまう。そうして失う前に<どうせいつもの事だと吐き捨て>てきたのでしょう。
 
 …<だけどあなたに出逢えました>。このフレーズにたどり着くまで、主人公の<あたし>はどこか刺々しくやさぐれた印象でしたよね。でも、ふいに敬語で<あなた>への想いが綴られることで突然の“変化”が感じられます。敬愛や感謝、はにかんだ表情までも伝わってくるのです。もう頑固に恋愛に線を引き、誰も信じないようにしていた<心が気を失った>のです。

今日も愛してるの 今日もしっくりいかないの
他に言葉はないんだろうか
毎日あたしの体があなたで形成されていきます
羽根いっぱいのプールで泳いでるような
めちゃくちゃな嬉しい日々
これじゃ救えない 誰か知りませんか
愛の言葉を
「愛は勝手」/aiko


 そんな<あたし>の<あなた>への想いは<愛してる>なんて言葉じゃ<今日もしっくりいかない>くらいです。固くなっていた全身全心が<羽根いっぱいのプールで泳いでるような めちゃくちゃな嬉しい日々>によってほぐれて、優しくなってゆくのでしょう。そして<毎日あたしの体があなたで形成されて>いって、これまでの傷も過去も思想も何もかも、新しく生まれ変わってゆくような感覚。それほどの“今”を表す<愛の言葉>をあなたは知っていますか…?

繰り返すのは呼吸だけ 明日は知らないと口答えして
短い爪に繰り返し 綺麗でいてねと赤を塗り続けた

愛の深さは勝手 まだ大したことはないんじゃない
だけどこれから気づくのかな 辛くなったら抱きしめてよ

盗んだ心をどう扱っているの?
毎日何回触ってくれているの?
こんなあたしとずっと一緒にいたいの?
あなたに出逢えて最高だ どうしよう
楽しい日々
あたたかく包まれる感じに慣れないよりも
失う方が怖くなったじゃないか
「愛は勝手」/aiko

 また、ところどころで天邪鬼な<あたし>が現れるのも、この曲の可愛いところ。<明日は知らない>なんて言いながらも<綺麗でいてねと赤を塗り続け>た時間には、どうかこの恋だけはずーっと続きますようにという願いが込められていることでしょう。愛の深さは<まだ大したことはないんじゃない>なんて言いながらも<あなたに出逢えて最高だ どうしよう>と歌う声には、すでに十分、深い愛が含まれていることでしょう。
 
 そして<失う方が怖くなった>のは、そんなにも嬉しくて、楽しくて、最高で、幸せな証。もう、かつてのように<どうせいつもの事だと吐き捨て>たりはしないのです。きっとこれから<あたし>は、やっと信じることができた愛を大切に大切に育ててゆくはず。今は<何も受け入れない方が 悲しくないし良いと>思っている方にも、いつしかそのようなお相手が現れるかもしれません。そのときは是非、あなたも<愛してる>をはるかに越える<愛の言葉>を探してみてください…!

◆紹介曲「愛は勝手
作詞:aiko
作曲:aiko

◆13th Album「湿った夏の始まり」
2018年6月6日発売
PCCA-15013 ¥2,913+税

<収録曲>
1.格好いいな
2.ハナガサイタ
3.ストロー
4.あなたは
5.恋をしたのは
6.ドライブモード
7.愛は勝手
8.夜空綺麗
9.予告
10. あたしのせい
11. うん。
12. 宇宙で息をして
13. だから