ひかりのなかに恋をしてる。孤独はきっと、そういうもの。

 2018年5月23日に“[ALEXANDROS]”がニューシングルをリリース!今日のうたコラムでは、今作に収録される「ハナウタ」をご紹介いたします。尚、先行掲載中の歌詞は『注目度ランキング』の1位を記録!この歌は、詩人・最果タヒが作詞、小林武史がプロデュースと編曲を担当。そして、石原さとみがイメージキャラクターを務める、東京メトロ『Find my Tokyo.』新CMソングとして流れている楽曲です。

夜空を引き裂いた春も
ぼくには触れてはこなくて
まぼろしのように咲いたバラ
痛みだけが指にふれる

愛おしさばかり打ち寄せ
だれにも触れたくないのに
ひとりきり生きる瞳に
やむことのない波音
「ハナウタ」/[ALEXANDROS]×最果タヒ

 [ALEXANDROS]のボーカル・川上洋平は「電車内はちょっとおとなしくしないといけませんが、心だけは自由にあって欲しいという思いから今回の楽曲はスタートしました」と語り、歌詞を手がけた最果タヒは「昼下がりの地下鉄に乗り、ひとり、前を見つめるあの時間。今回のお話をいただいて、まずその時間のことを思い返した」と語るこの歌。描かれているのは“ひとりであるからこそ、自由に感じ取ることができる景色や想い”です。

 まず冒頭のフレーズから見えてくるのは、何かの変化に満ちた<春>の姿。人と人との縁が、新たに繋がったり、千切れたり、結ばれたり、解けたり…。ただし、そんな季節が全ての人にとって“自分事”なわけではありません。この歌でも<春>は<ぼくには触れては>こないのです。だから<ぼく>は、少し離れたところで<夜空を引き裂いた春>の眩しさを、人と人との縁を、ポツリと見つめているのではないでしょうか。

 また、愛の象徴とも言える<まぼろしのように咲いたバラ>とは、世の中の光景なのかもしれませんし、他者には見えない<ぼく>の心の中のものなのかもしれませんが、いずれにせよ、自分にとって<痛み>を伴うもの。それは【孤独】がゆえの<痛み>でしょう。そして、その【孤独】を感じれば感じるほど<だれにも触れたくないのに ひとりきり生きる瞳に>やむことのない波が打ち寄せるのです。誰のものなのか、自分のものなのか、何度も<愛おしさ>という波が打ち寄せるのです。

ひかりのなかに恋をしてる
孤独はきっと、そういうもの
緑、破れた日影に滲む、夜の焼け跡
走るメトロの振動で、ぼくの輪郭ぼやけて
愛が、溶けだすように揺れる、ぼくだけの朝
「ハナウタ」/[ALEXANDROS]×最果タヒ

 しかし、その【孤独】は決して、悪いものじゃないと教えてくれるのが、この「ハナウタ」の魅力。痛みを感じるのは<ひかりのなかに恋をしてる>から。さらに、恋をしているから<緑、破れた日影に滲む、夜の焼け跡>と、日常のなかに潜む繊細な“非日常”を味わうことができるのだと思います。つまり【孤独】とは<ぼくだけの朝>を、自分だけの時間を、丁寧に楽しむためにとても大切なものなのです。

影、桃色の空と
朝焼けの海、波、まばたき
灯りつづける 生まれた日の朝日
息をするたび ふかく染まって
「ハナウタ」/[ALEXANDROS]×最果タヒ

沖へと流れる静寂
誰ひとりいない砂浜
呼ばれることなどない名前
やむことのない波音
「ハナウタ」/[ALEXANDROS]×最果タヒ

ひかりのなかに恋をしてる
孤独はきっと、そういうもの
緑、ふちどる夜明けの風に、すべてを預けて
走るメトロの振動で、ぼくの孤独がぼやけて
空へ、重なるように響く、ぼくだけの街
「ハナウタ」/[ALEXANDROS]×最果タヒ

 続く歌詞もやはり、描写の美しさが際立っております。これらはすべて、表面上の軽い“繋がり”ばかりを重視していたら逃してしまう、瞬間瞬間でしょう。もしも電車内で、ツイートをしていたら、インスタにアップするための画像を加工していたら、facebookに「いいね!」をしていたら、LINEのグループトークの仲間外れにならないよう必死だったら、心で<ぼくだけの街>を感じ取ることはできません。

ひかりのなかに恋をしてる
孤独はきっと、そういうもの
愛が、とけだすように揺れる、ぼくだけの朝
「ハナウタ」/[ALEXANDROS]×最果タヒ

 孤独ゆえの、自由。自由ゆえに、見つけられるもの。そんな宝物のような感情と景色が綴られている、[ALEXANDROS]×最果タヒの「ハナウタ」を是非、詩としても、歌としても、ひとりでじっくりとお楽しみください。メトロに揺られながら、心のなかで口ずさんでみるのも、オススメです…!