こんな心は、君に悟られたら面倒臭いな。

しょうがないから、頑張るか。
(映画『川の底からこんにちは』より)

 こちらのセリフ、みなさんはどのように捉えますか? たとえば「しょうがない」の他にも「どうなったっていい」とか「まぁいっか」とか「どうせ」とか、そういった言葉はほとんどの場合、ネガティブな意味として響くのではないでしょうか。しかし、わたしたちには時に「しょうがない」が必要なことだってあるんです…。

 さて、今日のうたコラムでは、そのネガティブに聞こえがちなワードが、どこか前向きに伝わってくる新曲をご紹介いたします。2018年3月28日に“サイダーガール”がリリースした今年の第1弾シングル『パレット』に収録されているカップリング「しょうがないよな」です。尚、この歌はアップテンポのロックチューン!

環状線沿いを歩いて思う
いつになれば街は眠るのだろう
今だって主役は僕じゃない
僕が消えても其の侭であってほしい

くだらないよな こんな心は
染み付いたモノが落とせないんだよ
しょうがないよな こんな心は
君に悟られたら面倒臭いな
「しょうがないよな」/サイダーガール

環状線沿いを歩いて思う
いつまでこの道は続くのだろう
何年経ってもずっと残ってしまうような
後悔だって忘れたら全部同じだ
「しょうがないよな」/サイダーガール

 真夜中、眠らない街を見つめながら歩く主人公。何かを終えた帰り道でしょうか。消化しきれなかった今日を背負ってトボトボと進んでいる姿が見えてきます。いつだって<主役は僕じゃない>毎日。きっと<僕が消えても其の侭>である世界。そんな人生がいつまで<続くのだろう>というモヤモヤ。

 そんな不安や不満、憤り、焦燥、空しさ、後悔、いろんな感情が歩くリズムと共にどんどん膨らんでいくかのようですね。そして<こんな心>を作り出す原因となっているものは<染み付いたモノ>です。それは追いかけている夢への執着かもしれませんし、好きな人への未練かもしれませんし、人それぞれでしょう。

 しかし、いずれにせよ<こんな心>を抱えている自分とあまりに向き合いすぎたり、現状打破に必死になりすぎたりすると、自己嫌悪やフラストレーションはますます悪化していくばかりなのだと思います。だからこそ、必要なのが「しょうがないよな」という言葉なのです。つまり“開き直り力”です。

嗚呼 もうどうなったっていい
もうどうやったって誰も気付かないでしょう
嗚呼 情けなくていい
だからもっと本当の僕で居たいのに

馬鹿みたいだな 馬鹿みたいだな
染み付いたモノに縋ってるんだよ
しょうがないよな こんな心は
君に悟られたら面倒臭いな

嗚呼 戻らなくていい
戻ってしまえば何も変わらないしな
嗚呼 壊してしまえばいい
繕ってしまった夢じゃつまらないしな
「しょうがないよな」/サイダーガール

 もうどうなったっていい。情けなくていい。馬鹿みたいだな。でもしょうがないよな。今、主人公はこうした“開き直り力”を持った言葉たちで、膨らんでゆく負の感情と戦っているのでしょう。すべては<こんな心>に<染み付いたモノ>を守るためです。

 また<戻らなくていい>という言葉は、今の自分を肯定しております。さらに<壊してしまえばいい>という言葉は、未来の自分に勇気を与えております。人間は開き直ることで、同時に「他に方法がないんだからとにかく生きるしかないよな」と、やぶれかぶれ頑張るエネルギーが湧いてくることもある。この歌を聴いているとそんなことに気づかされるのです。

どうせなら全部夢のせいだって事にしよう
きっと誰も気にしないでしょう
最初から全部夢のせいだって事にしよう
こんな僕じゃ君に会えないしな
「しょうがないよな」/サイダーガール

 最近、なんだかいろんなことが上手くいかないなぁ…とモヤモヤしているあなた。是非、サイダーガール「しょうがないよな」を聴いてみてください。しょうがないよな。どうせならな。頑張ろうかな。きっと少しずつ少しずつ上向きに歩いてゆくことができるはずです…!