拗ねた君も、静かなあの子も、彼の歌も、誰かを救うだろう。

 2018年2月28日に“星野源”がニューシングル『ドラえもん』をリリースしました。タイトル曲は、3月3日から公開の『映画ドラえもん のび太の宝島』主題歌として書き下ろされた楽曲です。尚、今作はオリコン週間シングルランキングにて初登場1位に君臨。さらに映画も、週末の映画動員数ランキングで1位を獲得。共に大きな人気を得ております。今日のうたコラムではその話題曲をご紹介!

少しだけ不思議な
普段のお話
指先と机の間 二次元

落ちこぼれた君も
出来すぎあの子も
同じ雲の下で
暮らした次元
そこに四次元
「ドラえもん」/星野源

 この曲はまさにタイトルどおり、とことん【ドラえもん】にピタリと寄り添った歌詞となっているんです。まず冒頭の<少しだけ不思議な 普段のお話>というフレーズで、ピンと来る方もいらっしゃるでしょう。これは【ドラえもん】原作者である“藤子・F・ 不二雄”先生が、かつて自身の作品を【SF=S(少し)F(不思議)】と語っていたことに対して、星野源が「すごく素敵」だと感銘を受けたところから生まれたんだそう。

 そして【ドラえもん】では、その【少し不思議】がちゃんと私たちの日常にありふれた<普段のお話>にも繋がっているんですよね。他人事のおとぎ話ではなく。そんな魅力も改めて教えてくれるこの曲。だからこそ、歌詞に散りばめられている“あのキャラクター”たちも、固有名詞を使わずに、あえて“個性”を描く形で描かれているのではないでしょうか。そうすることで、聴く人それぞれの日常の身近な<落ちこぼれた>あの人や<出来すぎ>なあの人を想像することができるのだと思います。

背中越しの過去と
輝く未来を
赤い血の流れる
今で繋ごう
僕ら繋ごう

拗ねた君も 静かなあの子も
彼の歌も 誰かを救うだろう
「ドラえもん」/星野源

 さらに、このように続く2番の歌詞。やはり“あのキャラクター”たちが<拗ねた君>や<静かなあの子>や<彼の歌>という表現で登場しておりますね。では、そういった存在が<誰かを救う>とはどういう意味でしょうか。たとえば、音痴なジャイアンの歌も誰かのためになるのでしょうか…。おそらく、キーワードは【コンプレックス】です。落ちこぼれている人も、出来すぎな人も、すぐに拗ねてしまう人も、静かな人も、音痴な人も、誰しも少なからず抱えているであろうコンプレックス。

 それは<背中越しの過去>に苦々と刻まれていくものでしょう。しかし、コンプレックスがあるからこそ<赤い血の流れる今>「変わりたい」という気持ちが生まれるのです。それこそ、有名な「ドラえもんのうた」にもある<こんなこといいな できたらいいな>という空想にも通じます。そして、その「変わりたい」から生まれた空想がいつか<輝く未来>に繋がるかもしれない…。それゆえにどんなコンプレックスだって、どんな個性だって、全て大切なんだということを、この曲は伝えているのではないでしょうか。

君が遺したもの 探し続けること
浮かぶ空想から また未来が生まれる
「ドラえもん」/星野源

 ただ【ドラえもん】を何度か観たことがある方なら、ご存知かと思いますが、ドラえもんのポケットから出てくる特別な道具には、いつも何か欠陥があります。使い方を間違えると逆効果だったり、タイムリミットがあったり。だからキャラクターたちのコンプレックスも完全に無くなることはないのです。でも大事なのは、完璧になることではなく、むしろ不完全だからこそ<探し続ける>気持ちが生まれること。不完全だからこそ<浮かぶ空想から また未来が生まれる>ことなんですよね…!

ここにおいでよ
一緒に冒険しよう
何者でもなくても
世界を救おう
いつか
時が流れて
必ず辿り着くから
君をつくるよ
どどどどどどどどど
ドラえもん
「ドラえもん」/星野源

 さて、星野源「ドラえもん」のサビはこのフレーズ。曲全体で3回繰り返されるため覚えやすく、一度聴いたら<どどどどどどどどど ドラえもん>と思わず口ずさみたくなってしまいます。ここでは<冒険>や<世界>というワードも綴られておりますが、それはきっと大それたものではありません。<冒険>はちょっとしたチャレンジ。<世界>は身近な人たちがいる職場や学校、自宅などの場所。つまり、日常の中でただ懸命に生きることが<君>=<未来>を<つくる>ことに繋がってゆくのでしょう。

 星野源の“ドラえもん愛”が隅から隅まで詰まったこの新曲。歌詞もサウンドもじっくりと楽しんでみてください!是非、併せて『映画ドラえもん のび太の宝島』も劇場にてご堪能あれ…!

◆11thシングル『ドラえもん』
2018年2月28日発売
初回限定盤 VIZL-1346 ¥1,800+税
通常盤 VICL-37373 ¥1,200+税