今だから言うけど割と好きだったんだよ。

 2018年2月28日に“ほのかりん”が3rdシングル「ふわふわ」をリリースしました!デビュー曲「メロンソーダ」は<セックスだけの好きも聞き飽きた頃だしな>という辛辣なメッセージも込められた恋の終わりの歌。2ndシングル「東京」は、傷だらけになりながらも<最後に戻ってくるのは私の所にして>と待ってしまう女性のラブソング。いずれも、恋につまずいて転んだばかりの傷がヒリヒリと痛む歌詞です…。では、今作「ふわふわ」には、どのような心模様が描かれているのでしょうか。

ふわふわな貴方が懐かしいなぁ
今だから言うけど割と好きだったんだよ
ふわふわな貴方は好きじゃないなぁ
今だから言うけど割と信じてたんだよ
「ふわふわ」/ほのかりん

 タイトル通り、柔らかな曲調と歌声が印象的なこの歌。しかし「ふわふわ」でも、やっぱり主人公は「メロンソーダ」や「東京」と同じく、決して“幸せ”とは言えない切ない現在を生きているようなんです。懐かしく思い浮かべる<ふわふわな貴方>はおそらく、もうそばにはおりません。だからこそ綴られているのが、二度と会えない<今だから言う>本音。そして、冒頭のサビフレーズから<僕>と<貴方>の様々な背景の想像が膨らんでゆきます…。

 まず、見えてくるのは<ふわふわな貴方>の姿です。良い意味で【ふわふわ】という言葉からイメージするのは、まとう空気感が、優しくて穏やかで朗らかであたたかい人。一緒にいるだけで癒されて、居心地が良いことでしょう。逆にマイナスな意味だと、曖昧で、掴みどころがなくて、安定感がなくて、どこか頼りない人。共に歩む将来のことを考えると不安になってしまいそうですね。ただし、曖昧な関係は時に、居心地の良さにも繋がるのですが…。

 この歌の<貴方>は多分、その両方の面を持っていたのではないでしょうか。【ふわふわ】は長所でもあり、短所でもあったのです。一方、そんな<ふわふわな貴方>に恋をしたからこそ、別れるまで素直になれなかったのが<僕>でしょう。のほほんと過ごせて居心地は良いけれど、相手がいつも曖昧で掴みどころがないゆえに「好き」も「信じてる」もなかなか伝えにくかった…。さらに、二人の関係性も【ふわふわ】だったように思えます。歌詞の続きには次のようなフレーズがあるんです。

気付かずに見ていた夢の中で白を纏う僕が踊ってた
僕が悪い子になったら
貴方は叱ってくれたのになベロアな夢で会いたいなぁ
「ふわふわ」/ほのかりん

 このフレーズには【夢】というワードが2回登場しますが、その意味は異なるのでしょう。最初の<気付かずに見ていた夢の中で白を纏う僕が踊ってた>の【夢】は、未来の願望です。つまり、曖昧で【ふわふわ】な関係の二人だったからこそ、将来など見ないようにしていたつもりだったけれど、本当は“白を纏いたい”と願っていた<僕>の想いの表れである気がします。それは“白黒はっきりした関係の幸せ”なのかもしれませんし、もっと深読みすれば“ウェディングドレス”=“結婚”であるのかもしれませんよね。

 だけど、今や何もかも現実で叶うことはありません。だから<ベロアな夢で会いたいなぁ>の【夢】は、いわゆる眠っているときに見る幻でしかないのです。ちなみに【ベロア】とは【毛足が長くビロードに似た、柔らかく肌ざわりがよい織物】のこと。まさに【ふわふわ】な感触が想像できますね。ふわふわな夢で会いたい…。言い換えると、ふわふわな貴方に会いたい、なのではないでしょうか…。

ふわふわな貴方が懐かしいなぁ
今だから言うけど割と好きだったんだよ
ふわふわな貴方は好きじゃないなぁ
今だから言うけど割と信じてたんだよ

ふわふわな貴方が懐かしいなぁ
今だから言うけど割と好きだったんだよ
ふわふわな貴方は好きじゃないなぁ
今だから言うけど本当好きだったんだよ
「ふわふわ」/ほのかりん
 
 こうして幕を閉じてゆく歌。尚、全体の中でサビは4回繰り返されるのですが、それによってまだ<ふわふわな貴方>への想いの中でふわふわと揺られ続けている<僕>の心模様がいっそう強く伝わってきます。しかも、最後の最後のフレーズだけは<割と>ではなくて<本当好きだったんだよ>なんですよね。本当に好きだったし、本当に信じていた、そんなまっすぐな想いが込められているのが、ほのかりんの新曲「ふわふわ」なんです。是非、歌詞を見ながら、曲を聴きながら、切ないふわふわの世界観を味わってみてください。