鳥かごの中で鳴いてる私を見て、彼女は笑った

 デビュー20周年となる2018年、1月24日に“Kiroro”が13年ぶり7枚目となる待望のオリジナルアルバム『アイハベル』をリリースしました!今日のうたコラムでは、今作の収録曲から「鳥かご」という新曲をご紹介いたします。哀愁の漂うメロディーと歌声が印象的なこの歌。みなさんは、自由に空を飛ぶ鳥と、鳥かごの中で飼われる鳥、どちらが幸せだと思いますか? また、人にとっての<鳥かご>とは何だと思いますか…?

ここで鳴いているのは 愛しているからなのに
「あの空飛んでもいい?」 意地悪に問いかけた

鳥かごの中で 鳴いてる私を見て
彼女は笑った 空を横切っていった

別に何も 不自由なんてない
幸せだし 危険なんてないし
「鳥かご」/Kiroro

 鳥かご。それは人それぞれ、大切な“家庭”かもしれませんし、今の“職場”や“学校”かもしれませんし、愛する方からの“束縛”かもしれません。そのような<鳥かご>のなかで生きる、というと、どこか不自由で退屈というイメージもあるのではないでしょうか。しかし、確かな【居場所】があるということは、心に大きな安心を与えるもの。窓の外のあらゆる危険からは守られ、生活にも困らなかったりする。だからこそ、ときに私たちは自らの意思で<鳥かご>に入ることを選ぶんですよね。

 そこに<愛している>という想いがあれば、なおさら<何も 不自由なんてない 幸せだし 危険なんてない>と胸を張って言えるのでしょう。ただ、この歌の<私>は、幸せだけれど、少し、ほんの少し、心にモヤモヤがある模様。それゆえに「あの空飛んでもいい?」などと<意地悪に問いかけた>り、自由に空を飛ぶ<彼女>の様子が気になったりするのです。<別に>という言葉がつくことで、どこか<彼女>に対する強がりのようにも、自分自身に言い聞かせているようにも感じられます。

寂しさが募り 鳴かなくなった鳥達
けっこういるのよ 気づいてほしいだけなの

頬寄せあって 抱き締めてくれたら
強がりなんて すぐに消えてゆくわ

そう愛されたいのよ 老いても忘れたくない
形だけなんて嫌よ 情熱はどこへ行った
照れ臭いのなら時代遅れもいいところね
そういう間に傷ついてる 私に興味ないの?
「鳥かご」/Kiroro

 そして心のモヤモヤの原因は、歌が進むにつれ、明らかになってゆきます。先ほど『そこに<愛している>という想いがあれば、胸を張って幸せだと言える』と述べましたが、本当はそれだけじゃダメなんですよね。歌詞にもあるように<愛されたい>のです。もちろん守られていることも、幸せな環境であることもわかっている。わかっているけど…老いても<頬寄せあって 抱き締めて>ほしい。照れ臭くたって形だけじゃない情熱を感じさせてほしい。

 その想いを<鳴いて>伝えているつもりなのだけど、うまく言葉にできなくて、気づいてもらえなくて、傷ついて、やがて諦めるかのように多くの鳥達は鳴かなくなってゆく…。鳥かごのなかでは、目の前の愛する人が全てだからこそ<私に興味ない>なんて態度を取られると、世界を丸ごと失ったことと同等な気持ちになるのではないでしょうか。きっと、そんな寂しい事態に陥らないためにも<私>は「鳥かご」を歌うのです。

愛してるの?
愛したいの
それなのに
わからない
ほっとかないで
飛んでもいい?
「鳥かご」/Kiroro

 愛してるの?ほっとかないで。飛んでもいい? 最後のフレーズひとつひとつから伝わってくるのは「飛んでいったりしないから、一生、ちゃんと愛して」という痛切な想い。これが、幸せで安全に見える“鳥かごの中の鳥”の本音なのだと思います。では、一方の<鳥かごの中で 鳴いてる私を見て>笑って自由に<空を横切っていった>あの彼女の本音はどうなのでしょうか。その“笑い”の奥にはやはり<愛されたい>が隠れているような気がします…。
 
 自由に空を飛ぶ鳥と、鳥かごの中で飼われる鳥。境遇は違っても、もしも語り合うことができたなら、わかりあえる共通のキモチがあるのかもしれません。この歌を聴いているあなたは、どちらの鳥派ですか?

◆ニューアルバム『アイハベル』
2018年1月24日発売
通常盤 VICL-64907 ¥3,240(税込)

<収録曲>
1 アニバーサリー
2 あなたに会えなくなって
3 ブランコ
4 ラララ
5 無敵なBig Smile
6 Let's go together
7 ルルリラ
8 鳥かご
9 ヒカリ
10 OK OK
11 ずっとこれからも
12 花は咲く