続く未来、でもキミはいない、わかっている。

風に紛れて 記憶をさらって
出来るだけ 遠くまで
続く未来 でもキミはいない わかっている

雨に紛れて 夜に溶けて
望んでない 朝迎えて
騙し騙し ここまで来たよ
「エム」/WANIMA


 2018年1月17日に“WANIMA”がメジャー1stフルアルバム『Everybody!!』をリリースしました。歌ネットでも歴代人気曲に認定されている「ともに」「CHARM」「やってみよう」といった代表曲も収録されている今作。今日のうたコラムではその中から新曲「エム」をご紹介いたします。明るく前向きでパワフル!なイメージが強い彼らですが、この曲の冒頭から伝わってくるのは【絶望】に近い感情です。

 何故なら、主人公の未来にもう大切な<キミはいない>から。でも、日常はどんなことがあったって淡々と続いていきます。だから<雨に紛れて>泣いて、暗い自分は<夜に溶けて>バレないようにして、何度も<望んでない 朝迎えて>ボロボロなはずの心身や、周りからの心配を<騙し騙し ここまで来た>のではないでしょうか…。

生意気ばかり言うガキだったから
ガッカリする言葉吐き
脱ぎ捨てた服 いつも元通りで
何度も繰り返しただ
見守ってくれた
いまだに支えられ生きている
「エム」/WANIMA

 そんな【絶望】のなかでも、主人公がなんとか生き続けてきたのは、たとえもう会えなくても<ここまで来たよ>と伝えたい<キミ>が心の中に存在しているからです。歌詞には<約束はまだ 残っている>というフレーズも綴られております。きっとその【約束】を含めたたくさんの【記憶】に<いまだに支えられ生きている>のだと思います。

 でも、だからこそ<風に紛れて 記憶をさらって 出来るだけ 遠くまで>と思ってしまう時もあるんですよね。それは【記憶】さえなければ、いっそ消えてしまえるのに…という想いでしょう。未来に<キミ>がいないから消えてしまいたいのに、過去に<キミ>がいるから命が引き留められる。絶望も希望も<キミ>によって生み出されているのです。

目を見開いて
濁った街を清らかに
歩いてる もがいてる「混ざらん 交ざらん」
唱え 描いてる
履き潰したお気に入りのシューズ
黄昏そうな日々にダンクシュート
流れ流れ ここまで来たよ
「エム」/WANIMA

 では、タイトルの「エム」とは何を表しているのでしょうか。まず考えられるのは<キミ>の名前のイニシャルの“M”です。ただ、歌詞を読んでみると“Mother(母)”の“M”にも思えてきませんか…? <生意気ばかり言うガキ>で<ガッカリする言葉吐き>いつも服を脱ぎ捨てたままにしていた主人公。そんな自分を<何度も繰り返しただ 見守って>くれて、服を<いつも元通り>にしてくれたその姿は、お母さんに繋がるような気がします。

 さらに、主人公が歩きもがきながら唱えている「混ざらん 交ざらん」という言葉は、お母さんから受け継いだモットーなのかもしれません。どんな時も<履き潰したお気に入りのシューズ>で進み続けるのをやめなかったのは、そのシューズがお母さんからもらった大切なものだからなのかもしれません。あくまで想像ですが、そういった捉え方もできるのではないでしょうか。

イタズラにただ…眺めるオリの中
答え見つからないまま...
いつの日かまた... 流れるトキの中
お気に入りのウタ...
いますぐにただ... 宥めるムネの中
カケラ拾いながら...
いつまでもまた... 夢みるユメの中
迎えに行くから...

「あの頃の様に...」
雲一つ無い空 望み増す
風に紛れ雨に紛れ 脱ぎ捨てた服いつも元通りで
「あの頃以上に...」
曇り空を越えて光り出す
風に紛れ雨に紛れ
迎えに行くから...
「エム」/WANIMA

 こうして幕を閉じてゆく歌。冒頭のフレーズからは【絶望】が感じられましたが、ラストに<迎えに行くから...>という想いが込められていることで、同じ言葉でも【希望】がより強く伝わってきます。いつか「あの頃の様に...」「あの頃以上に...」なって迎えに行く。そのために今は<風に紛れ雨に紛れ>何があっても生きる。「エム」が本当に届けようとしているのは、そんな絶対に命を諦めない“生命力”なのです。この歌の力を今、必要としているあなたに、ちゃんと届きますように…!

◆紹介曲「エム
作詞:KENTA
作曲:KENTA

◆ニューアルバム「Everybody!!」
2018年1月17日発売
WPCL-12817 ¥3,000+税

<収録曲>
M1「JUICE UP!!のテーマ -Album ver.-」
M2「OLE!!」
M3「シグナル」
M4「CHEEKY」
M5「ヒューマン」
M6「花火」
M7「サブマリン」
M08「CHARM」
M9「ANCHOR」
M10「やってみよう」
M11「エム」
M12「SNOW」
M13「ともに」
M14「Everybody!!」