いつだって物語の主人公は笑われる方だ、人を笑う方じゃない。

さざんか さざんか さいたみち
たきびだ たきびだ おちばたき
あたろうか あたろうよ
しもやけおててが もうかゆい
「たきび」/童謡・唱歌


 みなさんは、冬の有名な童謡「たきび」に登場する【サザンカ】という花を見たことがありますか? 花期は、晩秋から初冬にかけて。歌詞にもあるように、もう手が<しもやけ>になるほど、寒さの厳しさが増してゆく季節にも負けず、ピンクなど美しい色の花を咲かせるのです。その力強い姿に由来し、花言葉には【困難に打ち克つ】【ひたむきさ】といった意味があります。さて、今日のうたコラムではそんな花の名がタイトルの新曲をご紹介!

 平昌オリンピック・パラリンピックNHK放送テーマソングとして“SEKAI NO OWARI”が書き下ろした「サザンカ」です。FukaseとSaoriが作詞を、NakajinとFukaseが作曲を手がけたこの歌。メンバーは『夢を追いかける人、その側で見守り続ける人たちの物語を歌に出来たらと思い、今回の楽曲を制作させて頂きました。オリンピック・パラリンピックに挑戦する選手たちや応援している方々に、この曲がそっと寄り添うことが出来たら光栄です』とコメントしております。

ドアの閉まる音 カレンダーの印
部屋から聞こえる 君の泣き声
逃げる事の方が怖いと君は夢を追い続けてきた

努力が報われず 不安になって
珍しく僕に当たったりして
ここで諦めたら今までの自分が可哀想だと
君は泣いた
「サザンカ」/SEKAI NO OWARI

 花を咲かせようと懸命なサザンカが<君>だとすると、その花をそばで見守り続けているのが<僕>です。きっと、多くの人が見るのは“咲いた花”だけでしょう。だけど、想いを込めて種を蒔いたその瞬間から、そっと寄り添ってくれている誰かや何かの存在が必ずあるのだと思います。それは家族や友達、恋人などの“身近な人”かもしれませんし、SEKAI NO OWARI「サザンカ」のような“音楽”なのかもしれません。
 
 そうして<君>を見つめ続けてきた<僕>だからこそ、ただ<ドアの閉まる音>からもいつもと様子が違うことがわかるのでしょう。<カレンダーの印>とは、これからやってくる決戦日であるとも、今日が決戦日で<君>はひとつの戦いに敗れてしまったとも考えられますね。しかし、いずれにせよ<努力が報われず 不安になって 珍しく僕に当たったり>して<君は泣いた>のです。今にも崩れ落ちてしまいそうな<君>の心が伝わってきますね…。

夢を追う君へ
思い出して くじけそうなら
いつだって物語の主人公が立ち上がる限り
物語は続くんだ

嬉しいのに涙が溢れるのは
君が歩んできた道のりを知っているから

夢を追う君へ
思い出して つまずいたなら
いつだって物語の主人公は笑われる方だ
人を笑う方じゃない
君ならきっと
「サザンカ」/SEKAI NO OWARI


 そんな<夢を追う君>が、つまずいて、くじけそうな今。心から<僕>が贈りたいメッセージが込められているのが、この「サザンカ」という応援歌なんです。「もうダメだ…」と自分を信じられなくなったとき、諦めそうな夢を代わりに支えてくれるのは、期待してくれる人の声なのではないでしょうか。その声があるから<誰よりも転んで 誰よりも泣いて>も、立ち上がってきたことや、どんなに人に笑われたって<夢を追い続けてきた>ことを思い出すことができる。
 
 そして、自分を信じてくれる<僕>の想いが少しずつ“自信”へと注がれてゆくのでしょう。どうか、夢を追う君へ、この歌が届きますように…!ちなみに、【サザンカ】にはもう一つ【理想の恋】という花言葉もあるんです。諦めずに戦い続ける大切な恋人のそばに、この歌のような想いを抱きながら寄り添えたなら、それはまさに【理想の恋】と言えますね!時には<僕>の立場として、時には<君>の立場として、SEKAI NO OWARI「サザンカ」を聴いてみてください。

◆紹介曲「サザンカ
作詞:Fukase・Saori
作曲:Nakajin・Fukase