幸福行きのワインの色は、ぼくの血よりずっと赤くて…。

トワイライト 写真はモノクロで少し笑っていて
トワイライト ぼくら あの日で止まったままかな
「トワイライト★トワイライト」/スガシカオ

 そんなフレーズで幕を開けるのは、2017年12月26日に“スガシカオ”が配信リリースした「トワイライト★トワイライト」という新曲。この歌は、女優・多部未華子が出演の『三井アウトレットパーク』新CMソングに採用されており、12月24日からオンエアがスタート。躍動感あふれるポップナンバーです。ただ、曲調に反してその歌詞は少し切なく、過ぎ去った青春の後味でほろ苦いのです…。

 まず、タイトルの【トワイライト】とは、薄明かりや黄昏を意味する言葉。同時に、黄昏とは夕暮れのことであるため【盛りを過ぎて終わりに近づこうとする頃】を表すワードでもあります。そして、この主人公は今、<あの日で止まったまま>の<ぼくら>から、ひとりの<ぼく>として旅立とうとしているところ。まさにひとつの節目、ひとつの終末期に立っているのでしょう。

ねぇダーリン 幸福行きのワインの色は
ぼくの血よりずっと赤くて
とても飲めたもんじゃない

トワイライト 写真はモノクロで少し笑っていて
トワイライト 明日で この街を卒業するんだ

荷造りが終わった部屋は もうカラッポで
空き缶の中でジュッと タバコの消える音
「トワイライト★トワイライト」/スガシカオ

 最愛の人への<ねぇダーリン>という呼びかけ。もしかしたら<ぼく>には、その大切な<君>と共に<幸福行きのワイン>を楽しみながら、この街で同じ未来を歩んでゆくという道もあったのかもしれません。また<幸福行きのワインの色>=<赤>は、鮮烈な愛や“赤ちゃん”の“赤”のことだとも考えられそう。しかし、その幸せの<赤>は<ぼくの血よりずっと赤くて とても飲めたもんじゃない>と綴られているのです。

 そこには「こんな幸せは自分なんかにふさわしくない」という息苦しさやわずかな恐怖を感じる気もしますし、一方で「この幸せは自分が求めている幸せではない」から<明日で この街を卒業する>という希望的な意志も伝わってくるので、きっとそのどちらもが入り混じった心境なのでしょう。それゆえに<ジュッと タバコの消える音>は<ぼくら>の“もしもの未来”への気持ちを断ち切るための音のようでもあります。

輝いていた あの日を ぬけぬけと思い出す
行き先などなくても ストーリーは続いてく
輝く季節 この街にも きっと君にも…
空になったグラスでも いつかまた満たされる
「トワイライト★トワイライト」/スガシカオ

 歌詞はこのように続いていきます。本当は<幸福行きのワイン>がなみなみと注がれていたかもしれないけれど、もう今は<空になったグラス>…。少し胸が苦しくなりますが、でも寂寥感よりも<行き先などなくても ストーリーは続いてく 輝く季節 この街にも きっと君にも…>、<空になったグラスでも いつかまた満たされる>、そんなフレーズには、強く前向きな想いがグッと込められていることがわかりますね。

君がくれたヘッドフォンは 置いていこうかな
右がもう聞こえないんだ 新しいのにするよ

愛ってどんな色? 思い出すとき 少し痛い
君といた時間でなら 休日の朝の色です
愛ってキレイなもの? 胸の奥が 少し痛い
美しさと同じだけ みにくくて いとおしくて
「トワイライト★トワイライト」/スガシカオ

 愛ってどんな色? そう問いかける<ぼく>ですが、もう答えは十分に知っているようです。休日の朝のように平凡で開放的で穏やかで、美しさと同じだけみにくくていとおしくて、思い出すとき、胸の奥が少し痛くなるもの。それが<ぼく>にとっての<愛>です。いや、<ぼく>と<君>にとっての<愛>でした。では、これから<ぼく>はどんな新しい愛の色を見つけてゆくのでしょうか。みなさんなら<愛ってどんな色?>…この質問にどんな答えを返しますか…?