私は今決めたんだよ、もっともっと強くなるよ

通じやすくしていれば通じる。
だいじなのは違うことをしないことだ。

 作家・よしもとばななさんの『花のベッドでひるねして』という小説に、このような言葉が綴られておりました。たとえば、日常の中で願いを「通じやすく」する行為というと何を思い浮かべますか? 逆に「違うこと」とはどんなことだと思いますか…? さて、今日のうたコラムでは是非、そんなことも考えながら歌詞を読んでいただきたいウィンターラブソングをご紹介いたします!

白い流れ星
手のひらに落ちて
きれいだね と言う
君に恋をしたんだ
凍えそうな夜も
寒くなかったよ
君が心 暖めてくれたから

時を越えて 空に願う
「白い流れ星」/erica

 空から舞い降りる雪の結晶を<白い流れ星>になぞらえたこの歌。2017年12月20日に“erica”がLINEMUSICにて配信スタートした新曲「白い流れ星」です。冬の夜を過ごす二人の、素敵な光景が頭に浮かんできますね…!そういえば、流れ星に願いを唱えることも「通じやすく」する行為であると言えそう。では<私>は何を<空に願う>のでしょう。

「君が好きだ」
その笑顔を ずっとずっと見てたいから
私は今決めたんだよ もっともっと強くなるよ
「白い流れ星」/erica

 もちろん心の中で強く想っているのは<その笑顔を ずっとずっと見てたい>ということでしょう。ただしその願いは、単に<白い流れ星>に託しているものではないような気がします。それを叶えるために自ら<もっともっと強くなる>と“誓って”いるのです。だからこそ、そっと口にしたのが「君が好きだ」という言葉。

 おそらく<私>は、この告白がちゃんと<君>の心に届くようにと願い、白い流れ星にちょっとだけ背中を押してもらいたいのではないでしょうか。しかし、歌の中盤ではまだ「君が好きだ」と呟く声は小さくて不安げで、<君>には届いていないようにも感じられます。それゆえに、歌詞は次のように続いてゆきます。

ぐるぐるに巻いた
マフラーの中で
何度も唱えた
君への言葉達は
やがて私から
あの人の元へ
どのくらい伝えられるだろうか
「白い流れ星」/erica

 君の隣を歩いたあの夜も、ひとりきりの帰り道も、きっといつだって<私>は<ぐるぐるに巻いた マフラーの中で>何度も何度も小さく「君が好きだ」と唱え続けてきたのです。冬空を見上げながら。直接<あの人の元へ>伝える日のことをイメージしながら。それは、ただ流れ星に願いを託すよりもずっと「通じやすく」する行為なのではないでしょうか。

少しだけ触れた手
嬉しかったのに
すぐに離したのは私で
臆病な心が 不器用な心が
邪魔したの本当は繋いでいたかったのに
なんで、、、

窓の外は白い星で
ふわり光り染まっている
奇跡のような時の中で
そっとそっと誓ったんだ
「君が好きだ」
その笑顔をずっとずっと見てたいから
私は今決めたんだよ もっともっと強くなるよ
「白い流れ星」/erica

 時には<臆病な心が 不器用な心が>邪魔をし「違うこと」をしてしまうこともあるでしょう。でも<嬉しかった>のなら、<本当は繋いでいたかった>のなら、してしまった「違うこと」を後悔するよりも、通じてほしい道の方へ再調整すればいいのです。そして何より<私>は、そのことをわかっているからこそ<決めたんだよ もっともっと強くなるよ>と、白い流れ星に強く誓っているのだと思います。
 
 なんだか、歌のラストでは「君が好きだ」というフレーズが、最初よりずっと強く胸に響くような気がしませんか? もう<君>にもちゃんと届いているような気がしませんか? 白い流れ星を味方に、日々「通じやすく」なるよう一生懸命に生きている<私>の願いが、みなさんの願いが、どうかこの冬、すべて叶いますように…!