立ち上がるのに大きな理由なんてないよ。

泣きながらごはん食べたことある人は
生きていけます。
(ドラマ『カルテット』より)

 ドラマでこのセリフを聞いて、グサッと刺さった視聴者の方は多かったようです。生きていると、全て投げ出したくなるほどの苦しみや、死んでしまいたいほどの悲しみが訪れることもありますよね。だけどそれでも、涙と一緒にご飯を飲み込んで、命を繋いだこと。本能が必死で生きようとしていたこと。そのときの食事は、身体だけでなく確実に心の養分となり、人を強くするのでしょう。今日のうたコラムでは、そんなセリフにも通ずる新曲をご紹介いたします。

まだ諦めてないの? いつまで夢見てるの?
誰かにそう聞かれたって答えられなくて
思いきり蹴とばした 悔し紛れの空き缶
どこかに飛んで行ければいいのに

「どうせ全部僕のせいだ」と夜更けにうなだれながら
冷めた牛丼をほおばって この命をつないでる
「冷めた牛丼をほおばって」/ファンキー加藤

 この歌は“ファンキー加藤”が2017年11月8日にリリースした8枚目のシングル『冷めた牛丼をほおばって』のタイトル曲です。歌いたい想いと旋律をずっと探していた彼が、ようやく出会えた楽曲なんだそうです。絶対に譲れない夢を追い続けてきた主人公。しかし度々、投げつけられるのは「まだ諦めてないの?」「いつまで夢見てるの?」というセリフ。これは純粋な質問なんかじゃなく「もう諦めなよ」「現実を見なよ」と脳内で変換される嘲笑の言葉ですよね…。

 きっと彼は<誰かにそう聞かれ>なくたって、同じ言葉を自分自身に幾度も問いかけてきたはず。それなのに全然、結果が出せない現実にうなだれるのでしょう。しかし、そんな最悪な夜更けにだって<冷めた牛丼をほおばって この命をつないでる>自分がいるんです。情けなくて、ダメダメで、それでも生きようとしている。その己の姿に気づくことは、まだ夢をつなごうとしている自分に気づく瞬間でもあったのはないでしょうか。頼んだ牛丼が冷めてしまったのだって、それだけ長い時間、真剣に夢について考えていた証です。

どしゃぶりの雨の中 傘もささずに走る
そんな気力なんて今はないけど
雨上がりの虹を信じて それくらいは信じて走り出すよ

何回でも そう何回でも
立ち向かうのに大きな理由なんてないよ
ただこのまま 終わりたくないから
十万回でも 百万回でも
また一から始めていけるんだ
震えたままで 手離しそうな勇気を
握りしめるよ Fight for me again
「冷めた牛丼をほおばって」/ファンキー加藤

 そしてサビでは一転。まるで<冷めた牛丼>が心身にエネルギーを与え、パワーがみなぎってゆくように力強い歌声が放たれます。もうアツアツの牛丼のように<どしゃぶりの雨の中 傘もささずに走る>ほどのアツい気力はありません。だけど<手離しそうな勇気>はまだ<震えたまま>のこの手がちゃんと握り締めているんですよね。たとえ<冷めた牛丼>だって、たしかに<この命をつないでる>ように、<手離しそうな勇気>が、諦めそうな夢への情熱を何度でも繋ぐのでしょう。
 
 つまり人生は、今日食べたものが明日の自分を生かすのと同じで、今日やったことが明日につながっていくだけ。その繰り返しなのだから、もうがむしゃらに<十万回でも 百万回でも>立ち向かうしかないのだというメッセージを「冷めた牛丼をほおばって」は伝えてくれているのです。この主人公の“僕”の姿に、私たちの誰もが重なる瞬間があると思います。投げ出す前に、諦める前に、立ち上がるパワーを与えてくれるこの曲で、あともうひと踏ん張り、してみましょう…!

◆8th single『冷めた牛丼をほおばって』
2017年11月8日発売
初回限定盤 MUCD-9119/20 ¥1,667+税
通常盤(CD) MUCD-5339 ¥1,000+税

<収録曲>
1. 冷めた牛丼をほおばって
2. We can Dance
3. We Wish~聖夜の街で~