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今日のうた

米津玄師

どれだけ背丈が変わろうとも、変わらない何かがありますように。

 米津玄師が、2017年11月1日にニューアルバム『BOOTLEG』をリリース。先日、その収録曲である「灰色と青 ( + 菅田将暉)」のMVが解禁となり、なんと公開からわずか24時間以内に100万回再生を突破しました。歌ネットでも、先行公開されている歌詞がデイリー1位を記録中!今日のうたコラムでは、そんな話題のコラボ曲をご紹介いたします。この曲で描かれているのは、幼少時代を共に過ごした<僕>と<君>が、大人になった“今”のそれぞれの想いです。みなさんも、ちょっとした瞬間に思い出す“誰か”って、いませんか…?

袖丈が覚束ない夏の終わり
明け方の電車に揺られて思い出した
懐かしいあの風景
たくさんの遠回りを繰り返して
同じような街並みがただ通り過ぎた
窓に僕が映ってる

君は今もあの頃みたいにいるのだろうか
ひしゃげて曲がったあの自転車で走り回った
馬鹿ばかしい綱渡り 膝に滲んだ血
今はなんだかひどく虚しい
「灰色と青 ( + 菅田将暉)」/米津玄師

 歌の前半を歌うのは、米津玄師。まず<袖丈が覚束ない夏の終わり>というフレーズひとつから、いろんな想像が膨らみますね。半袖と長袖、どちらが正解なのかはっきりしない季節の変わり目の切なさを表しているようでもあり。まだ着慣れないスーツを身にまとっている新人サラリーマンが無気力に<明け方の電車に揺られて>いる姿が見えてくるようでもあり。生活や仕事、夢などの“身の丈”がしっかりしておらず、心もとない<僕>の現状が伝わってくるようでもあり…。

 いずれにしろ冒頭では、コンクリートジャングルのごとく<同じような街並み>のなか、空虚感を抱きながら生きている主人公の【灰色】の毎日が描かれているようです。しかし、ふと思い出した<懐かしいあの風景>は、現状と対照的。<ひしゃげて曲がったあの自転車で走り回った 馬鹿ばかしい綱渡り>は躍動感や興奮や刺激を、<膝に滲んだ血>は生き生きとした鮮烈な赤を感じさせます。では、彼が<君は今もあの頃みたいにいるのだろうか>と想いを馳せた相手は今、どうしているのでしょうか。

忙しなく街を走るタクシーに
ぼんやりと背負われたままくしゃみをした
窓の外を眺める
心から震えたあの瞬間に
もう一度出会えたらいいと強く思う
忘れることはないんだ

君は今もあの頃みたいにいるのだろうか
靴を片方茂みに落として探し回った
「何があろうと僕らはきっと上手くいく」と
無邪気に笑えた 日々を憶えている
「灰色と青 ( + 菅田将暉)」/米津玄師

 歌の後半を歌うのは、菅田将暉。ここで主人公がバトンタッチします。どうやらこの<僕>もまた、忙しさに<ぼんやりと背負われたまま>生きているような【灰色】の毎日を過ごしている模様。そして奇跡的にも、先ほどの友と同じく<君は今もあの頃みたいにいるのだろうか>と考えていたのです。あの頃の記憶には、瑞々しい緑色や、無邪気で無敵な二人が映っております。やはり現状とは対照的ですね…。ただし、この曲は単純に「あの頃はよかったのに…」なんて思い出迷子な二人を描いた歌ではありません。

どれだけ背丈が変わろうとも
変わらない何かがありますように
くだらない面影に励まされ
今も歌う今も歌う今も歌う
「灰色と青 ( + 菅田将暉)」/米津玄師

 このサビのフレーズは、曲の中で二度登場し、米津玄師も菅田将暉もそれぞれ歌っております。つまり、二人に共通する想いだということです。離れ離れである今、お互いに相手の現状はわからず<君は今もあの頃みたいにいるのだろうか>と過去を思い出すことしかできません。でも、だからこそ、その<くだらない面影>が<今も歌う>ための大きなチカラになっているのです。【灰色】になった<僕>は、思い出のなかの【青い】ままの<君>に背中を押されることで、今も“歌っている”=“生きている”のです。
 
 一方で<君は今もあの頃みたいにいるのだろうか>というフレーズには、自分と同じように<君>も変わってしまったのだろうかという気持ちも含まれていることでしょう。もし二人が再会したなら、お互い【灰色】になった現実を思い知ってガッカリする部分もあるのかもしれません。それでも、<変わらない何かがありますように>と願う。どれだけ背丈が、身の丈が、地位が、環境が、関係が変わろうとも、一つでも<変わらない何かがありますように>と願う。これが「灰色と青 ( + 菅田将暉)」の芯になっている想いなのでしょう。それは“忘れないでくれ”という祈りにも近いのだと思います。

朝日が昇る前の欠けた月を
君もどこかで見ているかな
何もないと笑える朝日がきて
始まりは青い色
「灰色と青 ( + 菅田将暉)」/米津玄師

 そして【灰色】で幕を開けた歌は、ラスト【青い色】で幕を閉じてゆきます。ほんの少し前までの二人なら<何もない>と【灰色】の朝を無表情にやり過ごしていったはずです。でも、お互いに思い出したあの頃の“青さ”が<何もないと笑える朝日>に変えてくれたのではないでしょうか。何もない、ということは、何でもできる、ということ。きっと、そんな新たな気持ちが<始まりは青い色>という一行に込められているのです。

 たとえどんなに離れていたとしても、もう会えない相手だとしても、本当に強い絆の思い出はいつまでも心のなかで息づくのだと教えてくれるアツい1曲。是非、自分にとっての<君>を思い浮かべながら、聴いてみてください。