愛を、今 ―自分を好きになるきっかけのラブソングを― 前編。

 2021年4月21日に“BRADIO”がニューアルバム『Joyful Style』をリリース!Major 2nd Albumにして、これぞBest Album。究極ベストなオリジナルフルアルバムがついに完成。Major 3rd シングル「O・TE・A・GE・DA!」、配信限定シングル「幸せのシャナナ」、先行配信シングル「愛を、今」を含む、魂を込めた全10曲が収録されております。

 さて、今日のうたコラムではそんな“BRADIO”の真行寺貴秋による歌詞エッセイを2週連続でお届け。今回はその前編です。綴っていただいたのは、今作の収録曲「愛を、今」のお話。まず、この曲のコアが生まれたきっかけとは…。新たな名曲「愛を、今」という“自分へのラブ・ソング”が完成するまでの軌跡を、彼の言葉とともに最後まで歩んでみてください。

~歌詞エッセイ前編:「愛を、今」~

自分を愛するってなんだろう。って言っているそばから嫌いな所をあげてみる。意見を否定されれば自身の存在や人格さえも否定されているように思えてしまう可愛くない自分。周りの人と比べては毎日が自尊心の喪失の連続で、もはや「コニュニケーションこそが悩みの根源だ」なんて、きっと人並みには純粋であろう。と、思っているだけの心の中に、口には出さなくとも自身の体の内側では啖呵を切っている。こんな薄暗い気持ちが少量だとしても脈々と全身に染み渡っているのだろうと思うと、なんとも自分がちっぽけに感じられてならない。

まだある、まだまだあるが、冒頭から悲壮感が漂いすぎるのもよくないので手短に。例えばこういう書き物にしてもそうだ。言うなれば瞬間に出た自分の言葉ではない。これが顔を付き合わせたインタビューならば、まごついて何も喋れていないか、核心に触れられない、言葉の上澄みをすくった程度のことしか言えていないのがオチだ。言葉を考え選び、センテンスを雰囲気カッコよく構築して、あたかもイケてる自分がしゃべっているかのように書き綴っているわけだから、もはや自分は自分でありながら媒体である。真にカッコいい人間はその一瞬一瞬に、これまでに刻まれてきた生き様が言葉になって行動になっているものだ。

そんな自分はこのエッセイで何を言いたいのか。結びに何を持ってくるのかを今の段階では何も考えていない。結局、取り繕って考えてせっせと書いたところで、突然自分のスペックを超えることなんてありゃしないし、土臭くとにかく書いてみる。それが自分のモットー。あとは委ねます。

2019年10月、山梨県の山中湖付近に泊まり込みで一週間程度、楽曲制作の合宿をおこなった。バンドは翌年に10周年を控えてのそこに向けたアルバム楽曲の制作とあわせて、今思えばそれまでの海外を挟んだ47都道府県ツアーもひと段落し、ライブ生活からの気分転換や新たな環境を欲していたこともあってだったように思う。

自分たちの音を楽しむ感覚から、充実した時間の中で生まれた数曲の原石達。その一つ一つが我々の“子供”であり、これから磨いていくもの、もうすでに輝き始めているもの。それぞれが持つ個性という音色が産声のように演奏と共に鳴り響く。突如生まれ落ちたこの世界の輝きを、眩しくてまだ受け入れられず、光をまぶた越しに認識しながら、優しく無垢な表情を浮かべるその楽曲達。

「愛を、今」はその中の一曲だった。生まれて間もなく、メンバーしかりチームからも愛されたこの「愛を、今」の原石、この子供をサウンド面はもちろん、どんな言葉で一人前に聴いてくれた人達の心に寄り添える音楽にするのか。ここから「愛を、今」との長い生活の始まりだった。

冒頭でも述べた、今この瞬間にも脈々と全身に染み渡っている薄暗い気持ちが“自分へのラブ・ソング”を書こうと思ったきっかけだったなんて、ただの自己満足であり、もっと格好のつく理由でありたかった。ただその反面、「人間らしくて良いじゃないか」というこれまた諦めにも似た慰めの言葉に、いつからか漢気と色気を感じている自分がいる。言う人が違えばガツンとしたセリフなのだが。

子育てを経験したことはないが、前途多難とはよく言ったものだ。歌詞は早い段階である程度の片鱗はできていたものの、曲の方が先に出来上がって歌詞待ちという状況が2020年の夏ごろまで続いた。時間はたっぷりあった。あったが出てこないものは出てこない、そう言うものだと思いたい。あまえです。サビの部分、この曲で伝えたい“自分へのラブ・ソング”のコアが先に述べた早い段階で出来上がっていた部分で、そこから先が全く進まない。

作詞作曲は十人十色。一行出てくればあとはスラスラ書けるなんて人もいるし、最後の一語が数日たっても出てこないって人もいる。自分も後者だろうな。考えすぎる癖がある。音を楽しむ、何も考えずに感覚の赴くままに。それはもちろん心得ているし、感覚なので意識してしてない。気づいたらすでにそうなっている。

ただいつしか、音楽が趣味の領域を出たところで、プラス“考えないことは恐怖”だとも思えるようになっているんだと思う。そして考えれば考えるほど複雑になっていき、当初の目的を見失いがちになる。そこで一旦の破壊をすることがよく制作では起こるのだ。もう一度まっさらにして、そもそもの歌詞のテーマから練り直すだとか、そのままの形で別の道を探れないかだとか。

しかし、ここで新たに生じるのが、見えない壁を超えなくてはならないということ。初期衝動や最初に作った印象ってのは、なかなかにインパクトを心に根ざす。馴染みの語感なんかは特に、最初に見たものを親だと認識してしまう「刷り込み」と同じで、それがしがらみとなり自身でハードルを上げることになる。前のバージョンより良いものをって。だから壊すんですけどね。見えなかった世界が顔を出す快感がそこにはあるんです。

今回の「愛を、今」はテーマは変えずとも何度も何度も描き直した。最初のバージョンとはもう描いている人が違うくらいに性格の違う言葉達になった。この歌が向かう方、その指針は一つ、「人の心に寄り添えるもの」に向けて。

<BRADIO・真行寺貴秋>

◆紹介曲「愛を、今
作詞:真行寺貴秋
作曲:BRADIO

◆Major 2nd full Album『Joyful Style』
2021年4月21日発売
初回生産限定盤A WPZL-31859~60 ¥4,800+税
初回生産限定盤B WPZL-31861~62 ¥3,800+税
通常盤 WPCL-13291 ¥3,000+税

<収録曲>
1.Time Flies
2.幸せのシャナナ
3.サバイブレーション
4.Switch
5.Fitness Funk
6.愛を、今
7.ケツイ
8.O・TE・A・GE・DA!
9.Be Bold!
10.アーモンド・アーモンド