あなたも私も自分が大好きだからつまらなかった。そんなラヴソング。

 2021年3月24日に“FINLANDS(フィンランズ)”が3rd Full Album『FLASH』をリリース!これまで年間100本近いライブを行ってきたFINLANDSが、ライブハウスにほぼ立つことすらできなかった2020年。さらにリリースの延期、大規模なツアーの中止を経験する中で込み上げる様々な想いを込めた10曲を12月に都内でレコーディング。CD化を切望されていた「USE」「SILVER」「HEAT」と楽曲を加え、全13曲のフルアルバムが完成しました…!
 
 さて、今日うたコラムではそんな“FINLANDS”の塩入冬湖による歌詞エッセイを3週連続でお届けいたします。今回はその第1弾。綴っていただいたのは、今作に収録されている新曲「ラヴソング」に通ずるお話です。<さよならさ つまらない人>と幕を開ける歌。その背景にある想いとは。好きだけど、好きだから、大切なひとに本音が言えないあなた。是非、想いを重ねながら読んでみてください。

~歌詞エッセイ第1弾:「ラヴソング」~

ルノアールくらいのもてなしはする。いや、モーニングを出してくれる朝のコメダ珈琲くらいのもてなしかもしれない。家に来た恋人に。それでいて頼まれてもいないサービスに最後疲弊してしまう。だからと言って時が経てど、手を抜くわけにはいかない。

あれ?サービスの質落ちましたね? と思われるくらいなら、そうだ、いっそ閉店しちまおう、夜逃げじゃ!夜逃げ!と心に決め私は恋人から格好をつけたまま逃げ出すのだ。

好きで恋人同士になったはずが何時からか愛想笑いのオンパレードになって、つまらない。が言えなくなった。

つまらないから眠りたい。が言えなかった。

明日朝早いので眠りたい。が言えなかった。

よくわからない音楽流すな寝る前に。が言えなかった。

あなたの生活のオススメの自論に興味がない。が言えなかった。

これくらいで怒る奴と思われたくない、これくらいで睡魔に負けるような奴だと思われたくない、よくわからない音楽も受け入れる器のある人間でいなければ。と見えない敵と戦うのだ。

こうして少しずつ少しずつろくでもない内弁慶女が完成した。

持つべく恥じらいは時に、色恋沙汰に特別な起爆剤のような作用を齎す事があるけれど、己を良く見せたいが為存在するプライドや恥じらいは全く役に立たない。

ちなみに、私はマッサージでもすみませんちょっと痛いです。と言えない。「こいつこれぐらいで痛がるなんて。弱い奴だ」と思われたくないのだ。

先日も、もう間もなく頭蓋骨割れます。という握力でヘッドスパをされたが「痛いです。」の一言が言えなかった。激痛で帰宅した。2日間程、事故にでもあったのか?という痛みに耐えた。やっぱり言える事は言っておいた方がいいんだ。プライドなんてない方がいい事ばかりだと日々学ぶ。

そもそも相手をつまらないと思った事なんて、私自身が殻を突き破る努力をしないで相手と面白く共存しようとしなかった事が問題である。

それなのに、私は「さよならさ つまらない人~」と歌う。きっと自分に向けても歌っている。自分の話のオンパレードの男を自己愛満点だと感じて皮肉を歌った。

これは、プライドを守る為に持った自己愛満点の私が感じた同族嫌悪そのものだったんじゃないか。

本当は私もきっと相手に話したい事、言いたい事が沢山あったんじゃないだろうか。

もしあの時、恐れずに本心で話をしていたら、少し違った未来を繰り広げていたのかもしれない。

もし、殻を破っていたら、お互いの面白い所をもっと知る事ができていたのかもしれない。私のどうしようもないところも何て事なく愛してもらえたのかもしれない。

互いが自分を愛するが故に起きてしまった顛末、これは自分に向けたラヴソング。自己愛を歌ったラヴソング。

相手を悪にすると自分は気楽になる。

本当はわかっている。何となく。あなたも私も自分が大好きだからつまらなかった。そんなラヴソング。

<FINLANDS・塩入冬湖>

◆紹介曲「ラヴソング
作詞:塩入冬湖
作曲:塩入冬湖

◆3rd Full Album『FLASH』
2021年3月24日発売

<収録曲>
01.HOW
02.ラヴソング
03.HEAT
04.テレパス
05.Stranger
06.ナイトハイ
07.ランデヴー
08.ひかりのうしろ
09.Silver
10.Balk
11.UNDER SONIC
12.USE
13. まどか(FLASH ver. )