“奇跡を殺してしまった世界”へ旅をしました。

 2021年2月24日に“edda”がNew EP『CIRCUS』をリリースしました。今作は“奇跡を殺してしまった世界の物語”を描いた作品。すべて新曲となる全6曲で、先日行われた edda 1st streaming live“kaleidoscope”にて初披露した「Frau.Ebene」も収録。また、ジャケットは、好奇心、誤解、再生などの象徴とされる蛾がモチーフになっております。その世界観を様々な面からご堪能あれ…!
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“edda”による歌詞エッセイをお届け。音楽でいろんな物語を作る際、いつも「旅」をしてきたという彼女。では今回の“奇跡を殺してしまった世界”はどんな旅だったのでしょうか。そこで見たもの、聞いてきたもの、感じたものを、綴ってくださいました。是非、歌詞と併せてお楽しみください。

~歌詞エッセイ~

eddaと申します。これまでいろんな物語を作って来ましたが、その全てで旅をしました。旅をしたなんていう表現をすると、なんだか詩的で柄じゃないですが確かに旅をしたのです。小説を読んだり、映画を見たりする感覚にかなり近いものがありますが、もう一声、肉体に影響をもたらすというか、そういうものなのです。私にとっての制作は。今回はそのレポートでもしてみようかなと思います。

先日リリースした『CIRCUS』というEPの舞台は奇跡を殺してしまった世界でした。さあ、旅を始めます。持ち物は持たず、現地調達することにしました。縋るものをなくした世界は暗くて、とても不安定で、矛盾するようですが不思議な安定感を感じました。

街がありました、行ってみましょう。空は灰色で花火のような音が鳴り響いています、空爆なのかもしれません。“うるさい!怖い!どこかに避難できる場所はないかな”不安からポッケに手を突っ込むと、去年の11月に拾った万華鏡を発見しました。“なんだ、手ぶらでこようと思ってたけど、入れっぱなしだったか”覗き込むと、先ほどまでの不安が和らいできました。

はっ!こんなことをしている場合ではない!万華鏡から目を離すと暗い家の中です。はて、いつの間にこんなとこに。小さな埃がびっしりと板張りの床についています。ところどころ穴あきになっている床下には緑が見えます。随分ボロい家ですね。長いことや主が留守なんでしょうね。窓にはボロボロになったカーテンがかろうじてぶら下がってます。ああいうのに触ると私はすぐ蕁麻疹が出てしまうのでいまは触らないでおきましょう。

がらんとした部屋には書き物づくえが一つだけ寂しそうに佇んでいました。インクに差しっぱなしのペンと机に散乱した古い紙が、この部屋で生活していた人物の温度を知らせます。窓から見える世界は相変わらず最悪を極めていました。静かな部屋の中で、私ここで死ぬのかな。という危機感がやっと芽生えて来ました。

書き物づくえに座り、これまでの旅を全て捧げてきたエーベネへ、最後の手紙を書きます。いや、違うな、最後になってしまうかもしれない手紙を書きます。書いているうちに悲しくなってきました。手紙へ落ちた涙が文字をにじませてかなりエモいことになってしまったので、矢印して「泣いたから滲んじゃった」と書いておきます。エーベネはこういうのを嫌いますが、最後かもしれないのでこれくらいのアピールは良いでしょう。

、、、さて。この後もこの世界をじっくりと旅をして無事帰還したわけですが、長くなりすぎるので割愛いたします。一つだけその後のお話をさせてください。奇跡を殺してしまった世界での旅から帰って来てからというもの、私は「死」を意識するようになりました。もう少し細かく言うと「〇〇することが叶わないまま死ぬ恐怖」です。次にeddaが向かう物語がどんな旅になるかはまだ私にもわかりませんが、きっとこの恐怖を満足にかえる旅になるんじゃないかと思っています。

また次の物語でお会いしましょう。

<edda>

◆2nd EP『CIRCUS』
2021年2月24日発売
CD PAGE-003 \1,800+tax

<収録曲>
M1. 「奇跡
M2. 「clone
M3. 「知らない体温
M4.「Frau.Ebene
M5. 「kaleidoscope
M6. 「CIRCUS