作詞家をはじめ、音楽プロデューサー、ミュージシャン、詩人、などなど【作詞】を行う“言葉の達人”たちが独自の作詞論・作詞術を語るこのコーナー。歌詞愛好家のあなたも、プロの作詞家を目指すあなたも、是非ご堪能あれ! 今回は、作詞・作曲・編曲家、フォークデュオ「TANEBI」のギタリストとして活躍をなさっている「杉山勝彦」さんをゲストにお迎え…!
作詞論
表現したい感情をちゃんと相手に伝わるようにする
作詞は、自分の感情を表現するひとつの方法です。歌詞にすることで(音楽とセットで表現することで)、自分の感じた感情をただ言葉にするよりも、イコールに近い形で人に届けられるので、そのために作詞をします。

作詞をするときに大切にしているのは、自分の表現したい感情をちゃんと相手に伝わるようにすることです。言葉の数は限られますが、情報の密度を濃くして一度聴けば伝わるように、受け取り手のことを考えて何度も客観視を行い、書き直しを繰り返します。

僕の場合は、作詞・作曲・編曲と全部やるのですが、作詞を先にすることによって初めて生まれるメロディがあり、例え歌詞は必要とされていない案件でもクリエイティビティを高める目的で作詞をします。
[ 杉山勝彦さんに伺いました ]
  • Q1. 歌詞を書くことになった、最初のきっかけを教えてください。

    世の中に発表されている作品ベースであれば、NHK教育番組の情報番組のテーマ曲の詞を書かせていただきました(作詞作曲編曲を担当)。コンペティションでの採用だったのですが、他の参加者はインストゥルメンタルで提案してくると予想しました。当時の僕は学生で、技術もなく、機材的にも他のプロの方より劣っていましたので、何で勝負したらいいか考えました。そこで、その番組名やコーナー名を歌詞として発信する音楽を作ることにしました。そのインパクトにより採用していただき、音楽で仕事をしていく最初のきっかけになりました。

    アーティストへの楽曲提供として、作家事務所から最初に提供させて頂いたのが嵐の「冬を抱きしめて」です。この曲は『C1000 レモンウォーター』のCMタイアップ楽曲だったのですが、“冬の寒さを感じるからこそ、人の温かみをより一層感じられる”ということを、どうやったら表現できるか考え、いっそのこと冬を抱きしめてしまえ!と“冬を抱きしめて”というサビ頭の歌詞が生まれました。

    最初に歌詞を書くきっかけになったのは、高校生の時です。高校生の時からオリジナル曲を書いていたのですが、オリジナル曲を歌うためには歌詞が必要なので、必要に迫られて書きました。プロの見様見真似で書いていました。

  • Q2. 歌詞を書く時には、どんなところからインスピレーションを得ることが多いですか?

    人との会話から得ることが多いです。歌に使える、掴みのあるフレーズは、心の声が素直に出ている生の言葉から生まれることが多いと感じています。

    他にも、電車の中吊り広告や週刊誌の見出しなどから影響を受けることもあります。当然、キャッチコピーをそのままは使えないですが、例えば、「甘かったり、辛かったり」というカレーのキャッチコピーがあった時に、それを「嬉しかったり、悲しかったり」と置き換えてあげるだけで、歌詞になったりします。グッとくる、ありそうでないフレーズを作るためにそうした作為的なこともします。

  • Q3. 普段、どのように歌詞を構成していきますか?

    作品によります。タイアップ作品や原作が決まっている作品の場合は、その楽曲でプロモーションをしていくので、サビの一節目で、どの言葉で世の名にメッセージを伝えていきたいのか、アーティストのイメージをどう発信していくのかを考えて、サビ頭から作ります。それに対して、自身のアーティスト活動やフリーテーマの楽曲、また、書きたいストーリーがある場合は、ストーリー構成をした後に一番ピークにくる感情をサビに持ってきます。

  • Q4. お気に入りの仕事道具や、作詞の際に必要な環境、場所などがあれば教えてください。

    曲とセットで作る場合が多いので、音をあてはめてイメージしていくのにピアノがある方がいいですね。言葉のイントネーション等の確認も早くなります。ゼロからアイデアを練る時は、カフェに行くこともあります。僕は花粉症持ちなので、花粉の季節は沖縄のホテルに避難して、ホテルから一歩も出ずに部屋にこもって、ひたすら曲を書いていることもあります。基本的に場所にこだわりは無いのですが、コーヒーは必須です。

  • Q5. ご自身が手掛けた歌詞に関して、今だから言える裏話、エピソードはありますか?

    中島美嘉さんの「一番綺麗な私を」という曲を手がけさせていただいた際に、サビの「一番綺麗な私を抱いたのはあなたでしょう 愛しい季節は流れて 運命と今は想うだけ」というフレーズを生み出しました。集中してその世界観に浸って制作していたので、大胆なことを言っているフレーズだという感覚がなくなっていました。リリースされて街中で流れ、知り合いや色々な方から、「あのサビのフレーズ、衝撃的だね」と言われて、初めて客観的に歌詞を見直したときに、赤面してしまったことがあります。

  • Q6. 自分が思う「良い歌詞」とは?

    聴く人のことを考えてあって伝わってくる、伝え方の温度がふさわしい歌詞ですね。歌い手や楽器の演奏も含めて、言葉の持つ温度感が、その音楽にマッチしている歌詞はすごく好きです。ドラマ主題歌であれば、ドラマの世界観を壊さない歌詞がふさわしいと思いますし、アーティスト単体のアルバムに入っている曲であれば、そのアーティストの独自性が存分に発揮されている歌詞が良いと思います。それぞれの場所において、表現を書き分けられている歌詞は良いと思います。

    あとは、観念的になりすぎていない歌詞ですね。僕の師匠でもある森浩美先生からアドバイスをいただいたことなのですが、以前は自分の感情の分量が多過ぎる歌詞を書いていました。歌詞を読めば、絵が想像できて、どんな人がどんな行動をして、どんな気持ちになったのかが伝わってくる歌詞が今の理想です。

  • Q7. 「やられた!」と思わされた1曲を教えてください。

    Mr.Childrenの「GIFT」です。この曲は、NHK北京オリンピック・パラリンピック放送テーマソングとしてリリースされた楽曲なのですが、「降り注ぐ日差しがあって だからこそ日陰もあって そのすべてが意味を持って 互いを讃えているのなら もうどんな場所にいても 光を感じれるよ」という歌詞にすごく感動しました。オリンピックというと「金メダルを目指せ!」という歌詞が多くなりがちですが、勝者になれる人は少数で限られているなかで、人生をかけて挑戦すること、技を競うことの価値はそれだけではないということ。ある種、陰になった人も光を感じられるということを歌っていて、その時代と当時の自分の気持ちと一致して、素晴らしいなと思って毎日聴いていました。

  • Q8. 歌詞を書く際、よく使う言葉、
         または、使わないように意識している言葉はありますか?

    よく使う言葉は、話し言葉ですね。キャラクターの個性が出やすいですし、歌にスピード感が出るので、僕はよく使っています。

    使わないように意識している言葉は、英語です。ダンスビートの曲にはマッチすることもあるのですが、以前、韓国のアーティストが歌っているのを聴いた時に、途中で英語や日本語が一瞬入るのに違和感があったんです。まぁ、僕が、英語が得意でないということもあるのですが…。

  • Q9. 言葉を届けるために、アーティスト、クリエイターに求められる資質とは?

    アーティストでもクリエイターでも、必要なのは“リスナーが初めて聴いた時にどこまで伝わるのか、ターゲットは誰なのか”ということをちゃんと見つめることだと思います。

    後輩から「詞を見てください」と言われて歌詞を見たときに、「この登場人物はどんな人ですか?」と質問すると、しどろもどろになってしまって答えられない。人物設定から状況設定までが明確になっていないことが多々あります。歌詞に全部書ききれていなくても、作り手のなかでシチュエーションやターゲットが明確になっていないと、絶対に相手にも伝わらない。それは、同じ言葉を言っても分かる世代と分からない世代があるように、作り手が相手を思いやって作れるかどうかだと思います。

    世の中にある色々なエンターテインメントの中から音楽を選び、しかも自分の音楽を選んでもらうためには、ある意味、親切である必要があると思います。それは、リスナーのことを良く考えるということ。受け取る人が、どういうシチュエーションで、どういう気持ちで、どういう言葉を持っている人たちなのかを想像したうえで、届けることだと思います。

  • Q10. 歌詞を書きたいと思っている人へのアドバイスをお願いします。

    よく、「歌詞だけ沢山書きました!」と言ってメロディの乗っていないもの持ってくる人がいるのですが、それは歌詞とは言えないと思います。メロディとセットで始めて歌詞なので、メロディを自分で作れないとしたら、メロディを作れる人とペアになってやることをおすすめします。もし周りにいないのであれば、自分でメロディも作れるようになって、曲とセットで作れるようにした方がいいと思います。優秀な作曲家は良い歌詞を書く人が多かったりするので、それらも含めて努力が必要な時代だと思います。とにかく、歌詞だけでメロディのないものは、歌詞とは言えないと思います。

歌 手
中島美嘉
タイトル
一番綺麗な私を
「女性が自らの一番の大恋愛を想い返している。それでいて今はその人のことを愛しているわけではない」というメッセージが伝わる曲を作ってください、というお題だったのですが、それを一行で表現するのに、このフレーズを捻り出しました。

一週間くらいあったコンペの期間のほとんどの時間をこの一節を生み出すのに使ったことを覚えています。ちなみに、メロディは、日本語のイントネーションに合うように組んでいます。歌詞を最大限に活かせるように、詞を先に作ってメロディを後から作った楽曲です。

作詞・作曲・編曲家、フォークデュオ「TANEBI」のギタリスト。

2013年に上田和寛と出会い、翌年にフォークデュオ「USAGI」のギタリストとしてユニバーサルミュージックから念願のメジャーデビューを果たす。2016年、株式会社コライトを立ち上げ独立。フォークデュオ名を「TANEBI」と改め、新たな歩みを始める。

2017年、家入レオ「ずっと、ふたりで」(作詞・作曲・共編曲)にて『第59回輝く!日本レコード大賞』作曲賞を受賞。テレビ朝日『関ジャム 完全燃SHOW』(「勝手にミスチル論 プロが見たモンスターバンドの功罪」の回)に出演。また、『音楽チャンプ』『ラストアイドル』では審査員として出演。

2018年、フジテレビ系月9ドラマ「絶対零度」の主題歌、家入レオ「もし君を許せたら」にて作詞を手がける。NHK紅白歌合戦歌唱曲に、倖田來未「好きで、好きで、好きで。」(作曲)、乃木坂46「君の名は希望」(作曲・共編曲)「サヨナラの意味」(作曲)がある。

代表作は、乃木坂46「制服のマネキン」「君の名は希望」「サヨナラの意味」、私立恵比寿中学「仮契約のシンデレラ」「禁断のカルマ」「まっすぐ」、中島美嘉「一番綺麗な私を」「Dear」「明日世界が終わるなら」、倖田來未「好きで、好きで、好きで。」、家入レオ「ずっと、ふたりで」「もし君を許せたら」など。
INFORMATION
TANEBI
2nd album『しずく』
2018年9月16日発売
¥3,500(税込)

TANEBIオフィシャルサイトや
ライブ会場にて発売予定!
詳細はこちら

01, マフラー~第13話~
02. ホコリ~第17話~
03. 言えなかったけどさ~第14話~
04. うさぎときつねIII~第15話~
05. 風邪~第18話~
06. もうすぐ昼ですね~第19話~
07. 学習机~第20話~
08. うさぎときつねII~第21話~
09. コンプレックス~第22話~
10. あなたの笑顔になりたい~第23話~
11. オモイドオリ~第16話~
12. あとがき~第24話~

家入レオ
14th single「もし君を許せたら」
2018年8月1日発売
VICL-37405 ¥1,200(税抜)

表題曲「もし君を許せたら
フジテレビ系月9ドラマ
『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』主題歌

First Place
1st single「さだめ」
2018年8月29日発売
JBCZ-6088 ¥926(税抜)

表題曲「さだめ
読売テレビ・日本テレビ系
全国ネット『名探偵コナン』
エンディングテーマ

TANEBI
5th single『うさぎときつねIII』
2018年7月1日発売
¥1,500(税込)

オフィシャルサイトや
ライブ会場にて発売中!
詳細はこちら

01, うさぎときつねⅢ~第15話~
02. オモイドオリ~第16話~
03. うさぎときつねⅢ~第15話~
      (instrumental)
04. オモイドオリ~第16話~
      (instrumental)
<コンサート・イベント情報>
2nd albumリリースライブ TANEBI Season2 episode3~玲瓏~
<大阪公演>【日程】9月18日(火)【会場】BIGCAT
<東京公演>【日程】9月24日(月・祝) 【会場】すみだトリフォニーホール 小ホール
イープラスにてチケット発売中! 詳しくはコチラ
TANEBI凱旋アコースティック弾き語りライブ@入間    TANEBI 2018 TOUR@BIGCAT(大阪)
【日程】10月12日(金)【会場】入間市産業文化センター  【日程】12月11日(火)【会場】BIGCAT
イープラスにてチケット発売中! 詳しくはコチラ     詳細は決定次第発表いたします。 詳しくはコチラ
TANEBI 2018 TOUR FINAL@さくらホール(東京) 2018年の集大成ライブの開催が決定!
【日程】2018年12月15日(土)【会場】渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール【時間】開場15:00/開演16:00
イープラスにてチケット発売中! 詳しくはコチラ