15年間の“軌跡”と“変化”が詰まったニューアルバム!

 2018年3月14日“スキマスイッチ”が3年ぶりのオリジナルアルバム『新空間アルゴリズム』をリリース!今年でデビュー15周年を迎える彼らに、今の関係性を訊いてみると、「ドライです」と笑う二人。しかしインタビュー中、決してわかりやすい仲良しオーラが出ているわけでもないのに、お互いそれぞれの発言をしっかり受け取った上で、次の言葉を繋いでゆく姿からは、その信頼の深さと確かな絆がひしひしと伝わってきました。そんなスキマスイッチの軌跡から新たな代表作への想いまで、じっくりお楽しみください!

(取材・文 / 井出美緒)
未来花 作詞・作曲:大橋卓弥・常田真太郎
声が届き 声を返す そんな 何気ない日常
ひとつひとつに愛情の種を撒こう
僕らが歩む道の途中 暗闇もあるだろう それでも手を繋ぎ
いつもよりもっと話をしよう 素直な二人のままで
潤んだ瞳に映るのは 未来
もっと歌詞を見る
「結局、お前ら二人でやりたいんだろ」って言われて。

―― スキマスイッチは今年デビュー15周年を迎え、共に音楽を始めてからは19年目に突入するんですよね。それだけ長い間、二人で一緒に活動をしていくと、どんな関係性に近くなっていくのでしょうか。同僚、親友、家族…。

常田 …ドライな関係(笑)。でも今おっしゃったどれとも違うようであり、どれにも当てはまるような気もします。あと最近はとくに、もうスタッフが引いてしまうくらい、曲に対してお互い真剣に言い合うようになったし、一方で他愛ない話をすることも多くなったんですよね。まぁ一年のうち300日以上は会っているわけですから。

―― ほとんど毎日一緒にいらっしゃるんですね!

常田 今はわりと結成当初の雰囲気と似ているのかもしれないですね。でもデビューして3年目、4年目くらいの頃は、制作が立て込んでいたので、あえて会わないようにしてしまったりとかも結構あって。たとえば別部屋で作業をするとか。不仲とかではなくそうしないと仕事が回らなかったんですよ。でもそれだと、他愛ない話をする余裕もないですし、そういう間が開きすぎちゃって、くだけた話をするのがこっぱずかしくなっていたというか。それゆえに「お互いに離れて、一回ソロでやった方がいいんじゃないか」ということになったのが2008年なんですよね。そこは一つの転機になったと思います。

―― そんな転機も含まれた音楽活動のなかで今、お互いに「ここが変わったなぁ」と感じる面はありますか?

photo_01です。

大橋 二人とも歳を重ねるごとに丸くはなったんでしょうねぇ。昔はもっとピリピリしてました。真太くんが言ったように別部屋で作業していた頃なんかは、とにかくスピードが要求されていたので、お互いちょっとしたことが気になったりもしたし。制作の中で意見をぶつけ合うときも、今のぶつかり方とは違ったと思います。多分、どっちも音楽活動の中で自分にとって「ここだけは入ってくるな」みたいな譲れないところがあったんです。でも今は、人間的に丸くなったおかげでそういうのがなくなって、より健康的な関係になっているんじゃないですかね。

常田 あとやっぱりよく喋るようになりました。もともと卓弥は友達の後輩だったので、かつてはそういう先輩後輩的な関係性が色濃く残っていたと思います。だからこそ頑張って喋らなきゃいけないようなプレッシャーとストレスと…(笑)。あの頃、喋らなくていいって言われたら、お互いに喋らない方を選んでいたでしょうし。

大橋 それこそ昔は音楽活動のパワーバランスも違いましたね。真太くんがいろんなことを全て押し切ってやっていくところに、僕がついていくという形が、スキマスイッチとしてスムーズにやりやすいと思っていて。でもそれがソロ活動を挟んだりしたことで、だんだん50 対 50くらいの感じに変わっていったと思います。

常田 そのパワーバランスがあったからこそ、以前の卓弥は主張もあまりなくて、何でも「いいよ、僕は歌えればいいから」みたいな感じで。やっぱり気を遣ってくれていたとも思うんですよね。そういう距離感は最初の頃はちょうど良かったんですけど、活動を重ねていくうちに二人ともいろんなことを覚えて、そうしたらその覚えたことを音楽に出したくなるじゃないですか。でも、その出し方を一回、お互いが間違ってしまったんです。だから「いや、これはちゃんと喋らなきゃね」って、2009年にとことん話し合いました、三軒茶屋で(笑)。そこで正直な気持ちを出し尽くしたことは、その後の活動が良くなった要因の一つとしてあって、そこから少しずついろんなことを喋るようになったのかもしれないです。

―― では、その2008年~2009年あたりには【解散】も浮かんだりしましたか?

常田 いや~、どちらかが解散したいと思っていたら、多分サッと別れていましたね。でも解散したくなかったし、仲良く続けていきたかったからこそ、ソロで活動したり、長くちゃんと話そうという機会を設けたりしたんだと思います。その2009年の話し合いのとき、当時のマネージャーも途中から呼んだんです。で、僕らがガーッと言い合っている横でずーっと話を聞いていて、最終的に「結局、お前ら二人でやりたいんだろ」って言われて、二人とも黙って(笑)。「まぁ…ねぇ…」ってなって。

―― お二人とも、スキマスイッチとして続けたいという気持ちは一緒だったんですね。

常田 はい、ただお互いに自分の言いたいことをわかってほしいだけだったんですよ。だからその頃、解散するかもしれないって恐怖はすごくありましたけど、いつも「続けるためにはどうしたらいいか」ということを考えていたということは、やっぱり二人でやっていきたいという気持ちが強かったんだろうし、スキマスイッチとして音楽をやりたかったんだと思います。

―― また、スキマスイッチ楽曲は全て共作だというところに驚きました。どうやって二人で一つの歌詞を作っていくのでしょうか。

大橋 たとえばゼロの状態から、二人で一行ずつ書いていくようなときもあります。あと僕らが作り上げた想像上の人物もいたりするんですよ。それは僕と真太くんが混ざった“スキマスイッチくん”みたいな感じなんですけど。そこに自分たちの実体験とか気持ちとかを重ねていったり。その“スキマスイッチくん”はちょっと女々しくて、頼りないんですけど、どこか女性にとって理想的な面も持っているらしく、そこを好きだと言ってもらえることはありますね。基本的にはそういう作り方が多いです。

photo_01です。

―― これはお二人にしかわからないと思いますが、その“スキマスイッチくん”を作っていくにあたり、お互いの歌詞の特徴の違いを感じる部分はありますか?

常田 あ~、初期は余計に違いが大きかったかもしれないですね。卓弥がイメージしていた歌詞の主人公はこう…男らしかったり、潔かったりという面が強かったと思います。一方、僕が“スキマスイッチくん”に持とうとしていたイメージは真逆で、うじうじ女々しくて、とはいえその弱さを振り切りたいみたいな理想もありました。そういう真逆な僕らから生まれたからこそ“スキマスイッチくん”は一言で言い表せないような人物像なんですかね。

大橋 すごく簡単に言うと、僕の方が現実的だと思います。真太くんの方がもう少しファンタジックというか、それこそ理想的というか。

常田 ロマンだよ、ロマン。

大橋 そうですね(笑)。あときっと僕の方がネガティブで、真太くんの方がポジティブ。僕は、他人に見せない弱い部分とか、気を許した人にしか出せないダメな部分とか、そういうものに魅力があると思っていて。それがあるからこそ、普段の一面も輝くし、人間らしいなって。だから僕の歌詞もまさに「誰かに言いたいけど言えないこと」を書いていく傾向があるんです。だけど真太くんの描く主人公は、すごく生き生きと夢に向かっていたりする。もちろんそこに迷いとか苦悩はあるんでしょうけど、どちらかというと優等生というか。でもそれって真太くんそのままではないと思うんですよ。きっとお互いの理想の世界観が違うからこそ、二人で書くと歌詞に幅が出るんでしょうね。

―― おもしろいですねぇ。男らしさと女々しさ、現実と理想、ネガティブとポジティブ、正反対の性質がいろいろと混ざり合って、1曲1曲ごとの“スキマスイッチくん”は出来上がるわけですね。

大橋 だと思います。二人してネガティブだったら、ものっすごく暗くて誰も聴きたがらないだろうし(笑)。だからこそ“スキマスイッチくん”を作るにあたって、自分の中のどの辺りを削るかということはすごく意識しますね。自分のこういうところは、スキマで言わなくて良いだろうなとか。逆にソロのときは、スキマで言わないような違う部分を削り取ってみようとか。

常田 あ~結構、卓弥から「そこは言わなくていいんじゃない?」って言われますね。「そこまで言っちゃうとちょっと気持ち悪いよ」とか、昔なんかは「トースターは捨てろよ!」とか(※「ドーシタトースター」)。そういう会話はよくします(笑)。僕は全然そういうところを気にしないんですよ。実体験も全然書くし、さらにそこへ理想も乗っけますからね。逆に乗っけすぎて「この主人公はこんなに強くないでしょ」って言われたり。そうやって指摘してもらって、もうちょっと抑えた方法で書いていきます。

―― なんだかある意味、人間作りのようにも感じました。

大橋 そうそう、まさにそういうときもありますよ!主人公がどんな人物かというディテールを二人で考えるんですよ。歌詞の中には一切出てこないんですけど、この主人公は何歳くらいで、犬を飼っていて、サラリーマンで、結婚はしてないけど好きな人はいる…とか(笑)。そういう人物像が少しずつ出来上がっていくと「この人がこのセリフは言わないでしょ」って気づいたりするんです。

常田 とくに年齢の話はよくするよね。ほぼ全曲、ちゃんと年齢設定はしているくらい。たまに全く認識が違うようなときもあります。「え!そうなの!?」みたいな(笑)。同じ歌詞なんですけど、全然違う人物像とか年齢を想像しているんですよ。そこをいろいろ話し合って、少しずつ主人公を作っていくんです。だから、どちらがたたき台を書こうが、1行ずつ綴っていこうが、最終的に頭からザーッと読んでいって、修正しながらバランスを取って歌詞を作り上げていくのが、スキマスイッチのスタイルですね。

1 2 3 次のページ