ももいろクローバーZの“有安杏果”が、2017年10月11日に1stソロアルバム『ココロノオト』をリリース!自身で作詞や作曲を手がけた楽曲から、豪華アーティストからの提供曲まで、曲が生まれた順に全14曲が収録されております。今回の特集では、そのアルバムリリースを記念してインタビューを敢行!ソロの“私”で伝えたいキモチ、とくに想い入れの強い歌詞、作詞論などなど、たっぷりお伺いしました。
(取材・文 / 井出美緒)

―― ついに1stソロアルバムのリリースですね。今年の9月2日には“有安杏果”として福岡の『宗像フェス』にご出演もなさっていましたが、ももクロの一員であるときと、ソロであるとき、違いはどんなところだと感じますか?

ももクロだと単純に1×5で5人分のパワーは絶対ありますよね。それプラス、ダンスだったり、パフォーマンスだったり、映像だったり、バラエティーだったり、そういう歌以外のエンターテインメントでお客さんを楽しませていることも多いんです。でもソロの時は、やっぱりパワーとしては1人分だし、ガチガチにダンスを決めたりもしないし、私の気持ちを歌で伝えることのみで勝負するスタイルだなって思います。あとは、セルフプロデュースすればするほど、もちろんやりがいがあって楽しいけれど、その分いい評価もそうじゃない評価も全て自分に返ってくる責任感はものすごく感じていて。だからこそ妥協せず、かなり細かい部分までこだわって頑張ってはいますね。

―― 杏果さんはエゴサーチをよくなさるそうですが、ソロ活動に関してもやはり検索されるのでしょうか。

もちろん(笑)。なんか、ソロとしての実力も知名度もまだまだだなって、こないだの『宗像フェス』をやってみても痛感しました。グループとしても、みなさんにメンバー1人1人の名前が知れ渡っているかといったら、多分そうではないんですよね。私だったら「ももクロの緑」みたいな。有安杏果という名前は、きっとそんなに認識されてないでしょうし、ましてやソロでライブをしたり、こうしてアルバムを出すなんてことは全然だと思うんです。でも今回、自分の作品が全国のCDショップに置いてもらえるというのは初めてで、それは本当に嬉しいし、このアルバムをきっかけにちょっとでも多くの人に私の歌が届いていけば良いなって思っています。

―― その気持ちに加え、1stソロアルバム『ココロノオト』を作るにあたり、他にどのような思いがありましたか?

実は、このアルバムを出すために新しく作った曲は一曲もないんですよ。まず、アルバムが出せるということを聞いて、じゃあ今までの楽曲を全て入れたいと思いました。それで、どういう曲順で入れようかと考えたら、やっぱり私の成長の過程をみんなにも知ってもらいたいなって気持ちになって。だから収録曲は、曲が生まれた順に並んでいますね。最後の二曲の「色えんぴつ」と「ヒカリの声」が今年作った曲です。

―― ここからは、その収録曲の歌詞についてお伺いしていきます。まず杏果さんは、主人公を立てて物語風に…というより、ご自身の心境を描いている楽曲が多いのでしょうか。

そうですね。まず去年、横アリで初のソロライブをやらせてもらえることが決まったのがきっかけで、自分で曲を作り始めたんです。もともと中高生のくらいの頃から、いつか使えたらと思ってずっと言葉を書き溜めていたノートがあって、それをもとに歌詞を書いていって。それこそ今おっしゃられたように、ただ自分の心境をがむしゃらにバーッと曲にしていました。でも、それが曲順でいうと「遠吠え」までですね。

―― それ以降の曲たちは、作り方が異なってきたのですか?

その横アリっていう大きなライブを一人でやってみたあと、改めて「自分は一体これからどんな曲を何のためにソロで歌っていくんだろう」って考えてみたんです。そうしたらなんか、今まではただ自分の感情を押し付けているだけの自己満だったのかもしれないとも感じて。それよりも、やっぱり私が歌う意味って、誰かに明日も頑張ろうって思ってもらえたりとか、ちょっと背中を押せたりとか、そういうところにあるんじゃないかなって。そのときちょうど大分でライブをやらせてもらえるタイミングが重なったのもあり、そこで初めて“誰かのために”という思いを込めて「小さな勇気」という曲が生まれました。それ以降は、自分の心境をもとにしながらも、誰かのパワーになったらいいなと思いながら作った曲が並んでいます。

―― では、そのご自身の心境や誰かに伝えたい思いを、とくにちゃんと言葉で描くことができたと感じる楽曲、フレーズを教えてください。

歌いたい 歌いたい 握ったマイクもう離さない
あの夢はかなわない あの子にもかなわない
相手と過去は変わらない でも変えられる 自分と未来は
M-1「心の旋律

この歌詞は、私が喉を壊して全く声を出せなかった頃、筆談の生活をしていたときの気持ちを描いたものですね。声が出ないから、もう毎日とにかく書くしかなくて。ただひたすら「歌いたい 歌いたい」って何枚も何枚も紙に書いていたんです。その強い思いは全部ちゃんとこの曲に込められたと思います。

毎日歩いている 同じ道なんにも変わんない
今日もいいことないの そんなもんだね、人生って
毎日流れてる 朝の占い信じないよ
でも悪いことあると そのせいにして、都合いい
M-4「ペダル

「ペダル」には、私がいまだに毎日のように感じることを書いたなって思います。とくにAメロのこのフレーズとか、まさに今日の朝も考えたりしましたし(笑)。みんな日々おんなじサイクルでこうね…グルグルグルグル回っていて。ほとんどの人が、朝起きて、家を出て、仕事して、帰って、お風呂に入って、みたいな生活を送っていて、本当に歩いている道の景色って変わらないじゃないですか。そのなかで、ついつい朝の占いをチェックしちゃったり。そういう日常で生まれる何気ない風景とか気持ちとかを描くことができた歌詞ですね。

トンネルを抜けると 眩い光が射し
いつか見たままの景色よみがえる
M-14「ヒカリの声

一番最近書いたのは「ヒカリの声」なので、やっぱり今の心境に最も近いなのはこの曲ですかね。これは、去年の自分の初ソロライブを思い出して作りました。なんか普段、こうライブをする前とかはね、なかなか大変なことも多いんですよ。でも、ステージに立つとイヤなことも全て忘れられるし「あ、この光が待ってくれていた!」って思うと…。

―― <いつか見たままの景色>とは、杏果さんが見てきたその光景のことだったのですね。

はい。今、応援してくれているファンのみんながいる時に浴びるスポットライトが、本当に私にとっての<眩い光>で、それがあるから普段どんなに暗くても頑張ろうって思えるんです。だから逆に、みんなから光をもらってばかりじゃなくて、私もみんながしんどいときとかに、頑張ろうって思えるような希望の光を贈れたらいいなぁ、届けられたらいいなぁって。この曲のMVでは、そういう思いを鏡を使って表現してみたりもしました。

痛むのは生きてるから
転ぶのは前へ進むから
いつだって僕らは諦めずにきた
いくつものトンネルの中で
白い光だけめざして
M-14「ヒカリの声

―― この曲は“ひとつのトンネル”ではなく<いくつものトンネル>を抜けてきた強さを描いているからこそ、サビの<どんなに遠くても出口へと導いてくれる>というフレーズに説得力を感じました。ただ、抜けられるかどうかもわからない“最初のトンネル”は誰しもありますよね。杏果さんにとって、それはどんな出来事だったと思いますか?

一番最初のトンネルかぁ…。なんか物心ついた頃から、一応この業界にはいたので、そう考えると何回も「もう辞める?」みたいなタイミングはあったんですよ。でも、今こうやって自分が歌い続けられているっていう意味を考えると、小学6年生のとき、喉にポリープが見つかって、手術をしたことだと思います。お医者さんには「これからも普通に生活を送る分には、全然このままで大丈夫だよ。でも、もし歌を仕事にしたいのであれば、今のうちに切っておいた方がいいと思う」って言われて。正直な話、そのときは小学生だったので「絶対に歌で生きていく!」みたいな覚悟もなかったんです(笑)。だけど、やっぱり歌はもともと好きだったし、何故か「切る」って決意をしたんですよね。

―― 声に対する不安もあったでしょうし、そもそも手術自体が怖いですよね。

そうなんですよ。だから今でもその病院に行くと、手術の前日に入院していたときの怖さとか、「私、大丈夫?明日、声出るの?」みたいな気持ちを思い出しますね。でも、それまではポリープのせいで声がガラガラすぎて、ちょっとコンプレックスでもあったので、新しい自分の声になることへのワクワクみたいなものもあって。それから無事に手術は成功しましたし、もしもあの手術というトンネルを避けていたら、今こうやって『ココロノオト』を生み出すこともできていなかったのかもしれないなって、大げさかもしれないけれど、そんなことを思ったりもします。

―― ちなみに今は、トンネルの中と外、どちらにいらっしゃいますか?

えー!? どうかなぁ…。でも本当に日々、トンネルに入って、抜けて、入って、抜けて、の繰り返しですよ。まぁ今はまだ暗闇の途中かもしれないんですけど、その先にアルバム発売日だったり、仙台でのライブだったり、武道館のライブだったりが、私のトンネルの出口の光としてきっと待っていてくれる!って思って、頑張っていますね。早く抜け出したいです(笑)。

―― また、7曲目「Drive Drive」から10曲目「遠吠え」までは、いろんなアーティストからの提供楽曲が並んでおりますね!

[Alexandros] さん、小谷美紗子さん、風味堂さん、Official髭男dismさん、楽曲を提供していただいたアーティストさんの曲は、自分のiPodに入っていて、普段から聴いているんです。そんな方々の声で、デモが来るわけですよ!もう「あぁ!これは私だけのもの!」みたいな(笑)。世の中には私の声でリリースされるので、それぞれのアーティストさんが私のために書いてくれた曲を、ご自身の声で歌ってくれている音源って、超宝物だなぁと思いましたね。

―― なかには、誰かの言葉だからこそ歌えるフレーズもあったのではないでしょうか。

あ~、たしかにそうですね!それぞれみんな歌詞も曲のテイストも、絶対に自分には書けないだろうって作品なんですけど、とくに小谷美紗子さんの「裸」が来たときには、感動で鳥肌が立ちました。

声にできるのなら 裸のままで
誰かに 愛されたい 誰かを 愛してみたい
M-8「

この曲が出来上がる前に一度、小谷さんと打ち合わせをしたんです。そのときは初対面だし、自分のことをわかってもらうために、今の等身大の私の気持ちをバーッ!って歌詞にして、それを見てもらって。その上で「私が好きな小谷さんの楽曲は、今お渡しした歌詞で伝えたいことに似ています」ってお伝えしました。そうしたら「あー!これでなんか杏果ちゃんのことがわかってきた気がする」って言ってもらえて、この曲をいただいたんですよ。だから、小谷さんのスパイスが入りながらも、私が背伸びをして歌っている感じでもない曲だと思います。まさに“裸”の心の歌詞というか、すごい曲をいただいたなって感じますね。

―― では、杏果さんご自身が歌詞を書くときに、一番大切にしていることは何ですか?

自分が思わないこと、ファンタジーな世界は書かないことですかね。たとえば、神様は絶対いる…みたいな、そういうのって、もちろん夢見ることはあるけど、心のどこかで「いや、神様が本当にいるなら、なんでこんなに悪いことが続くの?」とか思っちゃうときもあるし。なんか、信じられない自分がいたりするんです。だから、それこそ日記に綴るような、みんなが「あ、これわかる」って少しでも共感してくれるような言葉を選ぶようにしています。

―― 最後に、歌ネットを見ている方にメッセージをお願いします。

有安杏果の好きなフレーズ

曲ってずっと生き残るじゃないですか。私がおばあちゃんになっても、それこそ歌ネットさんに歌詞は載ってくれていると思うと、改めて一曲一曲の命を今すごく大切に感じていて。しかも今回は、アルバムという形でCDとして残ってゆくということが、本当に夢みたいで、感謝でいっぱいです。是非、手に取ってもらって、この中のワンフレーズでもいいから、聴いてくれた人の心に刺さってくれたらいいなって思います。私も音楽にすごく助けられて今ここまでくることができたので、そんな歌を歌い続けていきたいです。