いきものがかり、メジャーデビュー10周年!

 2016年3月15日、いきものがかりがメジャーデビュー10周年を迎えました!そんなスペシャルイヤーを盛り上げようと、リーダーの水野良樹さんが個人のTwitterで2015年10月から書き始めた“いきものがたりシリーズ”、目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。これはいきものがかり結成から17年の物語を、水野さんがいちメンバーの視点から語っていくという連載。ついに2016年5月、全801ツイートをも費やして完遂しました!

 その『いきものがたり』が今年8月25日に、小学館からノンフィクション本として発売!450ページもの大作ですが、全てが水野さん本人の文章。すでに重版出来も決定した人気作となっております。そして今回の特集では、『いきものがたり』を元に、著者のいきものがかり・水野良樹さんにインタビューを敢行…!過去の物語から繋がる“今”と“これから”についてお伺いいたしました。
(取材・文 / 井出美緒)
photo_02です。

まずはデビュー10周年、そして「いきものがたり」の出版おめでとうございます!ファンの方のみならず、音楽の道を目指している方、これまで3人が出会ってきた方、アーティストの方など多くの方々から様々な感想が届いているのではないでしょうか。

曲を作った背景などをここまで細かく語ったことはなかったので「メンバー同士でこういう会話のやり取りがあったんだね」とか「ディレクターとこんなに言い合っていたんだね」とかエピソードひとつひとつにちゃんと触れてくれる感想が多くて嬉しかったです。そこに本を出すことの喜びを感じましたね。

メンバーの2人には出版前に原稿をチェックしてもらったんですけど、山下に最初に言われたのは「よくこんなに覚えてたなお前!」って言葉でした(笑)。2人からとくに感情的な感想はなかったんですけど、吉岡も山下も同じことを経験していても違うことを感じていたりもするので、複雑な想いを抱えながら読んでくれた部分もあると思います。ただ、尊重してくれていたからこそ、逆に何も言わないでいてくれているのかなぁと受け取っていますね。

「まえがき」に、『いきものがたり』ツイッター連載の動機はこれで<振り返ることを、終わりにしたい>という思いだったと綴られていましたね。しかし17年前まで記憶を遡って140字ずつ文字にしていくのはものすごく大変だったのではないですか?

いやー本当にまさかこんな大作業になるとは思っていなくて、ちょっと甘くみていましたね(笑)。最初は今年3月リリースのベストアルバム『超いきものばかり』を盛り上げるため自分にできることとして、Twitterで気軽に昔話を始めたんです。でも書き始めたらデビューに辿り着くだけでもすごく時間がかかってしまって。よく10周年インタビューの時に「あっと言う間でした!」とか簡単に言ってしまっていたんですけど、そのわりに自分の中にかなり記憶が溜まっていたんだなぁと改めて感じました。

では、ここからはその『いきものがたり』から気になるエピソードをピックアップしつつ
お話しをお伺いしていきたいと思います。

“すごく良い曲だった。驚いたし、焦った。” (第0回『旧いきものがかり』)
まず印象的だったのが、メンバーの山下穂尊さんが「地球(ほし)」を持ってきた時のエピソードでした。当時、水野さんはライバルが目の前にいたことの“幸せ”も感じたんですよね。そして競争は<今、この瞬間も続いている>と綴られています。その言葉の通り、今も水野さんと山下さんはそれぞれの楽曲に異なる魅力があると思いますが、とくに“歌詞”の面で、そのテイストの違いはなんだと思いますか?
山下の歌詞は、一つ一つの意味というより、歌詞全体に立ち上ってくる空気感であったり、世界観であったり、そういうものが僕よりもはっきりしていると思います。なんか風味のあるような歌詞なんですよね。僕はどちらかというと理屈っぽいというか、言葉の意味がなるべく伝わりやすいように書いているんです。でも彼の場合は、本当に流れるように歌詞を書いたりする場合もあるので、その辺りに個性の違いが現れているような気がしますね。
たしかに山下さんの場合、「恋跡」の<あたしは困っちゃって>や「マイサンシャインストーリー」の<正直になることしかできないもん>のように、喋り言葉も流れるように自然な語尾になっていることが多いですよね!
あ〜そうですね、前に彼は「言葉遊びを大切にしたい」と言っていたんです。やっぱり日本語って、意味は同じでも喋る人によって、女性だったら<〜してるもん>とかの方が可愛らしかったり、一人称も<わたし>があったり<あたし>があったり、漢字で書くのとカタカナで書くのと全然イメージが違ったり、柔軟性がありますよね。山下は「そういうふうに言葉って可能性が広がっているものだから、それを自由に上手く使いたいんだ」という想いが強いみたいです。だから語尾の使い方とかもすごく楽しんで書いているようなところもあるんじゃないですかね。
“「君たちは、僕らをどこへ連れて行ってくれるの?それが見えない」
ポエム的な表現に、返す言葉がなかった”  (第8回『路上ライブの第六感』)
デビュー前、ライブハウスでいきものがかりのステージを観たある店長さんから言われたという言葉も衝撃的ですね。でもそのセリフに違和感を覚えたからこそ、後に“YUKI”さんのライブで聞くことになった「わたしが、すごいところに、連れて行ってあげる」というMCが3人に刺さったのかな、とも感じました。今、ライブの規模も大きくなったいきものがかりのライブは、どんなものになっているのでしょうか。
まぁ今でも僕らのライブは、YUKIさんのようなカリスマ的方向にはなっていないですね(笑)。YUKIさんと吉岡を比較するのも失礼ですけど、まず吉岡はわりと「いきものがかりのボーカル」と呼ばれることが多いんです。聖恵ちゃんって呼んでくれるのは本当にコアなファンだけで。でもYUKIさんは誰にとってもYUKIさんじゃないですか。そこが一つの違いである気がします。ただ、その“カリスマではないこと”をネガティブに捉えているわけでもなくて、身近だからこそ曲が遠くに届いていくというところもあると思っているんです。

いきものがかりは曲の中で自分たちのことをなるべくしゃべらないようにしてきたグループでもあって。それは歌と、僕らが繋がりすぎてしまうと「これは聖恵ちゃんの経験した恋愛の話なのかな」とか「これは水野くんが考えていることなのかな」とか思わせてしまうことで、途端に歌が狭くなってしまうからなんです。その曲を“自分のもの”として捉えてもらうためには、歌の中に僕たちの存在はない方がいいこともあったりするなぁって。だからカリスマではないことが、実はいきものがかりの曲にとってプラスになってきた歴史があって、あえてそういう道を選んできたというところもあるんですよね。
“ああ、オレら、ダメだったんだなぁ。実に情けない気持ちだった。”
                    (第14回『大きなプラカードを手にして』)
「大きなプラカードを手にして」は、これからデビューを控える新人アーティストを関係者の人たちにお披露目するライブについてのエピソードが綴られております。自分たちのアーティスト名が書かれた“大きなプラカード”を持って、業界の方々がいる各テーブルを練り歩くという“ご挨拶タイム”のお話もシビアでした。たとえば現在、同じような状況にある若手アーティストに言ってあげたいこと、大切にしてほしいことはありますか?
ん〜どうですかねぇ…。そういう“新人のショーケースライブ”的なものに対して「こんなんやってられっか!」ってテーブルを蹴ることが前に進むことになるグループも中にはいたりするから。僕たちはそんな力もなく、歯を食いしばってついていってしまった結果、それが上手くいっただけなんです。だから何が正解かはわからないんですけど、よく思っているのは「欲しいものが10個あったとしたら、1個でも得られればいい方だな」ということですね。自分たちが大切にしていることの一つしか選べないって場面が必ずバンドとかグループにはいつか訪れると思うので、そのときにちゃんと思い切れるかということが大事なんじゃないですかね。何かを選んで、何かを捨てるという強さは持たないといけないのかなぁと、今の時点では思います。

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第1位 ブルーバード
第2位 ありがとう
第3位 YELL
第4位
きまぐれロマンティック
第5位 歩いていこう
第6位 笑顔
第7位 帰りたくなったよ
第8位 じょいふる
第9位 ハルウタ
第10位 SAKURA