いく時代かがありまして

いく時代かがありまして 茶色い戦争もありました
いく時代かがありまして 死んだ人もありました
いく時代かがすぎてゆき 忘れさることのかぎりを続け
淋しさはこのからだに 消えては灯るちらちら明かりのように
仮の世のたわむれに 酔うて唄って夜が明けた

酔うた心に身を任せ 人気のない街を歩く
大通りの曲り角に ほら赤い灯が見えるじゃないか
熱いうどんを一杯 湯気をあげてすすろうか
きょうは少し寒いね 焜炉の火鉢がうれしいね
酔い醒めの夜明けには 笑った顔がよく似合う

もういく度こんな風に 夜が明けるのを見たのだろうか
顔ぶれもさしてちがわず いない人がちらりほらり
いく時代かがすぎてゆき それでも同じことをくり返し
淋しさはこの体に 消えては灯るちらちら明かりのように
仮の世の静けさに 酔うて騒いで夜が明けた
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