淀君

親の仇の 情けに生きる
女哀しや 露の花
元は名もない 藤吉郎が
いまは敵なき 天下人(てんかびと)
茶々は 茶々は 死んだつもりで
憎いその手に 抱かれます

「母上様 憎き仇に肌身を許す女の哀しさ。
茶々は何よりも辛うございます。
なれど かくなる上は 豊臣の天下を
この手で握ってごらんに入れます。
それが茶々に出来る、女の仇討ちにございます。」

お腹(なか)痛めた わが子であれば
なんで憎かろ 鬼の子も
紅葉みたいな その手のひらに
取らせますとも この国を
茶々の 茶々の 刀持たない
これが女の 戦(いくさ)です

「小谷(おだに)城では父上を 北の庄では母上を
そしていま この大阪城ではわが子秀頼を失うとは。
ああ 天は何故 この茶々にはむごいのじゃ。
次の世は女に生まれとうはない…。」

天にそびえる 大阪城も
いまは炎の 天守閣
時の流れは 徳川方へ
味方するのか 夏の陣
茶々は 茶々は 生きて泣くより
死んで誇りを 守ります
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