虫くだしのララバイ

大好きなおじいちゃんが死んでしまった
約束だったからだから泣かなかったけど気持ちが
落ち着くまで三月かかって

今日はじめて彼の書斎の片付けをした
ひき出しの中からでて来た新品ののし袋
おめでとうと書かれた誕生祝いは来月の
僕宛に早く嫁をもらえとメッセージ
懐かしい文字抱きしめて僕は不覚にも
泣いてしまった約束破った

約束…約束…約束…そうだ約束で思い出した
ことがひとつ
それはまだ僕のおなかにさなだ虫が居た頃

プラモデルくれたら薬を飲むと約束をして

医者と薬が死ぬほど嫌いな僕はしかとして逃げたっけ
そしたらお前は男じゃないとひどくしかられた
それでも飲まないから彼はついに奥の手を出してきた
ほんとはこれを飲めば空が自由に飛べるのだ
わしの魔法のマントを貸してやるぞともちかけた
どっこい僕はませてたから鼻で笑いとばした
おじいちゃんは悲しそうな目をした

ナフタリンくさいタンスの中から兵隊マント
何気なく着てみたらいつの間に今の僕にぴったりだった
僕はあわてて家を飛び出し薬屋へ走る
そしてチョコレイト色懐かし薬ひとびん買って来た
それから水で一気に虫くだしを流し込み
今こそ約束を果たしたぞとマントをひるがえし
走り出した両手広げ近くの公園へ
そしてジャングル・ジムへ駆けのぼる

ジャングル・ジムへ駆けのぼる
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