少年とぼく

遠い遠い昔の話だな 忘れてても無理はないかな
けどとっても大事なこと 忘れてしまった気がするな
商店街を颯爽と 少年が一人駆け抜ける
ださい自転車はたぶん祖父か祖母の
しましまのTシャツ 色あせたリュックサック 見覚えのある後ろ姿
誰だったっけな 誰だったっけな あれはぼくだ
遠い遠い昔の話だな 忘れてても無理はないかな
けどとっても大事なこと 忘れてしまった気がするな
行き先は塾かな 誰もいない食卓かな
君もいろいろあったよな けどなんだか楽しそうだな
人混みに消えていった君の後ろ姿は
なんだかまぶしいんだな やたらとかっこいいんだな
君に合わせる顔がないよな これじゃ恥ずかしいよな
ぼくは電柱の陰にそっと隠れたんだ

商店街を颯爽と 少年のぼくが駆け抜ける
ださいあの自転車は確か祖母の
遠い遠い昔の話だな 忘れてても無理はないかな
けどとっても大事なこと 忘れてしまった気がするな
君の行く末はぼくだろ なんだか申し訳ないな
弱音とため息ばっかで 今なんか電柱の陰だぜ
いじめられたこともあったな 勉強できなかった
ニキビがいっぱいあったな 部活も補欠だったな
体が弱かったな 初恋もくだけちったな
それでも笑ってたっけな それでも笑ってたっけな

祖母の自転車 ださかったけど 大好きだったな

商店街は黄昏の中 電柱の陰で笑ってるぼく
こんなふうにさ こんなふうにさ 笑ってたっけな 笑ってたよな
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