あまぐも

雨雲がとんでゆくわと
女はつぶやいた
窓辺にもたれかかって
もう不幸じゃないと
言いたかったのさ
ふり向けない
できれば少しほほえんで
もっとよく あなたを見たかったのに
ふり向けない
あなたにだけは
見られたくない この涙を

男は引き寄せる
くちびるあわせたい
だけど そんな自分の
ずるさに気づき
おびえてしまった
立ちつくす
やさしい言葉のひとつも
かけるつもりでいたのに
立ちつくす
男はその胸に
言いようのない にがさだきしめて

女は愛にきずついた心
男は愛をきずつけた心
胸にだきしめ 悲しい雨雲は
風にちぎれて とんでゆく
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