海が泣いている

海が泣いている 生きもののように
黒馬のように走る波
潮風にしめる煙草を放ると
振り向くあなたのこわい顔
黙りこくった冬の浜辺を
黙りこくった時が横切る
あなたが言えない言葉が聞こえるわ
いいのよ そんなに苦しまないで
そんなに自分を責めないで プラトニック

風が荒れている 油絵のように
黒雲は空に渦を巻く
口先の愛で器用に遊べる
人ではないから苦しそう
そっぽ向いた腕の透き間を
そっぽ向いた小鳥が飛び立つ
あんまり真面目に悩んでいるから
わざと惨酷に いま知らん顔
いいのよ そんなに苦しまないで
そんなに自分を責めないで プラトニック

心それだけで 人は愛せるの?
たよりなく揺れる心でも
今そっと肩を抱きしめられたら
心は身体に溶けるのに
何事もなく海は静まり
何事もなく二人帰るの
自然の流れに小舟を浮かべて
きっといつの日か そうその日に
いいのよ そんなに苦しまないで
そんなに自分を責めないで プラトニック
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