中野グラフィティ

「カラージーンズで揃えようネ」って云ってたくせに
君だけサテンのパンツだったね
「あれ?そうだっけ?」なんて恍けて云ったっけ
俺達 わざわざ新宿まで買いにいったんだよ
サンプラザの楽屋は夢の宝庫だった
フレッシュサウンズコンテストの日
「それより、少しくらいメイクしたほうがいいよネ」って
君はノンキな事を云っていた
駅前からバスに乗り 江古田まで行かないかい
聞けばこの頃君は リハーサルに遅刻しなくなったそうじゃないか

覚えてるかいユウジ 俺の最初のフォークギター
中野の丸井 五万円の月賦
あの頃は洋服だってそうだったな
「中野で買った」って云ったらお洒落だった
サンプラザのステージは夢の世界だった
誰もがみんなまぶしかった
スージー・クアトロもジャクソン・ブラウンも
そしてTM Networkも!
駅前の居酒屋で 少しだけ呑まないかい
聞けばこの頃の君は夜明けまで呑まなくなったそうじゃないか

「ジュリーは、中野に住んでんのヨ」って マリチャン
あれは小学校四年の頃かな
「平凡」か「明星」で仕入れた話を
一人一人に云いふらす
サンプラザが影も形もなかった時代
そんな事でも自慢できた
「木根君、知ってる?ジュリーがね…」そこまで聞いたら待ち切れず
僕は答えた 「中野だろ」
せっかちな僕だから 待ってられる訳がない
固まったマリチャンの顔が「なぜ知ってんのヨ」って語ってた

たしかケンの実家は中野だった気がする そうだろ?
ブロードウェイを抜けたあたりだろ?
「家族全員がB型だから」なんて云ってた
「だから誰も人の話を聞いちゃいない」とか
サンプラザはいつだって夢の舞台だから
俺達と同じ夢 追いかける倅達も
きっといつかそこに立つ日が来るんだろう
駅前の路地裏の美味しいカレー屋はどこだい
聞けばこの頃の君はキャバクラも やっと卒業したそうじゃないか
×